経営者インタビュー 松井忠三氏(株式会社良品計画 名誉顧問) Vol.4|経営ノート

経営者インタビュー 松井忠三氏(株式会社良品計画 名誉顧問) Vol.4|経営ノート

「社長に聞く!」経営者インタビュー 〜活躍する現役社長に、経営者としての半生をお聞きしました!

本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、松井忠三氏(株式会社良品計画 名誉顧問)です。「無印良品」を展開する良品計画の名誉顧問である松井忠三氏にお越しいただきました。松井忠三氏は、一時38億円の赤字を抱えるまでに低迷していた2001年に社長に就任。そこから業務を見える化する企業改革を断行することで、わずか1年で業績をV字回復させた功績は、多くのメディアなどでも取り上げられています。

(2017年7月配信)


前回に続き、松井忠三氏(株式会社良品計画 名誉顧問)の経営者インタビューをお届けします。(Vol.3はこちら

新谷哲:違う質問をさせて頂きたいと思うのですが、好きなことが「料理」ということですが、料理をされるのですか?

松井忠三:食べるのが好きなので、必然的に料理もせざるを得ない。我が家では、料理は全部、私が作るのです。

新谷哲:毎食ですか!?

松井忠三:ええ。だから女房は冷蔵庫に何が入っているかよく知らないと思います(笑)。

新谷哲:今風の旦那様でいらっしゃいますね(笑)。

松井忠三:いや、食べたり呑んだりするのが好きだから、やっていただけです。

新谷哲:得意な料理は何かございますか?

松井忠三:僕、居酒屋料理は大抵できます。食べに行ったら、居酒屋料理はほぼ確実に再現できますね。ただ、ミシュランの星がついているところのような料理は無理です(笑)。

新谷哲:松井忠三氏のお話を聞いていると、運動神経も良くて、経営もできて、そして料理もできる。20代の女性からすると一番結婚したい男性像だと思います。

松井忠三:そんなことはないと思います(笑)。

新谷哲:もう一つ、好きなものが「優れた経営者の言動に触れるということ」で、これは経営者になってからそう思うようになったのですか?

松井忠三:なる前からも思っていたのですが、経営者になってから痛切に感じました。1年間、経営者やってみて「自分の器以上に会社が大きくなることはない」と、痛切に感じたのです。したがって、そこを補わなければいけない。そうすると経営者としてメンター(指導者、助言者)がいるって思ったのです。その時に選ぶ経営者は畏敬の経営者です。例えば私が2km先まで見えるとする。でも、5km先が見える経営者がいるのですよ。5km先が見える人がいたら、5km先が見える人から聞いたほうが早い。そういうことで、今で言うガバナンスじゃなくて、メンターとして、社外取締役を招聘したのです。アクセル役をやっていただき、非常に勉強になりましたね。

 

新谷哲:経営者にとって一番良いお話で、経営者インタビューをお聞きの皆様も、勉強になったのではないかと思います。座右の銘は「右か左かの岐路に立ったら、難しいほうを選択する。そちらのほうが真理が隠されていることが多い」。どうしてこれを座右の銘にされたのか、お教え頂けますか?

松井忠三:経営者になった時、アウトレットというのを当時7店舗運営していました。アウトレットというのは無印良品の衣料品で、我々のようなSPA企業(製造小売業)というのは在庫コントロールが命になる。例えば、原価で10億円の不良品の在庫があった。これを捨てられると、経営としては一番良い状態。だけど「これ勿体ない、アウトレットへ行って売ろう」となる。例えば売上が4億円あったとすると、捨てるのが6億円で済むので、経営的には助かる。それでアウトレットがどんどん増えていったのです。

でも私は、そのアウトレットを0にしました。なぜそんなことをしたかというと、世界で戦う優良企業は、アウトレットを持ってないのです。つまり、アウトレットなしで処分する。それだけ、生産をする仕組みとか、販売をする仕組みとか、出店をする仕組みというのが優れているんですね。例えば夏物とか春物は沖縄から売り出す、逆に冬物、秋物は北海道。日本の気候差というのは丁度1カ月、世界の気候差は2カ月あるので、秋物はヨーロッパとアメリカから売り出す。それから、移動する仕組みをつくる。

3週間経つと、売上が全部分かるのです。売れない商品は、世界中どこも売れませんから、瞬時に処分する。売れる商品はアクセルを踏んで増産をする。でも、増産も納品が3カ月じゃ無理なので瞬時に作って持ってこなきゃいけない。そうするとEDI(電子データ交換)で、全工場を結ばないといけない。そういうことをずっとやる訳ですね。この営々とする努力が、結局本当の経営力になるのです。遠い道を選んで苦労したほうが、明らかに経営力があがる。したがって僕は迷った時に、最短距離に正解はないと思うので、必ず遠い道を選んできましたね。

新谷哲:深いお話で、本質というのが大変大切だということですね。真似するのは難しいと思います。

松井忠三:ええ、ですから1回できた仕組みは真似がほぼできない。つまり会社の風土とか、社員の価値観とかと一緒なのです。簡単に真似できると、みんなトヨタさんになれる。だけども1社たりともトヨタさんにはなれない。社風ってやつが真似できない最大のポイントです。結論から申し上げると、社風を築き上げれば、相当長い間成長する企業が作れるということです。

新谷哲:前半のお話と一緒ですが、セゾングループの社風に問題がある、という話と通ずる部分があって、私自身の反省が始まります。最後に、これから起業したいと思っている方が、経営者の方に、成功の秘訣をお教えいただけたらと思います。

松井忠三:世界で元気な企業に流れている本質は何か、アメリカでもう研究されていて、そこに出てくる答えは、「オーナーズアイ」つまり、創業者精神です。創業者で大変なのはお客様の対応です。うまく出来ない限り生きていけない。したがって商品でもサービスでも、本気で本質をやるのです。創業オーナーは自分では限界がありますから、人を使って仕事をしなければいけない。優秀な人も初めは入りませんから、人を育てなきゃいけない。そうすると、人材育成も本質的なことを追求していく。だから創業して間もない企業で考えている人材育成っていうのは、大手企業の人事部がやっているものとは違うレベルの人材育成なのですね。つまり、個人も企業も、上手に経営をやっていくための変わらぬポイントは、創業者マインドだと思います。これを持っている人は、サラリーマンにもたくさんいるのですよ。彼らをうまく見つけ出して、配置をしてポストアップしていくと、良い企業になりますね。

新谷哲:創業者精神、本当に勉強になるお話をありがとうございます。松井忠三氏の本はいくつも出ていまして、私もいくつか読みましたけれども、大変勉強になるので、皆さまもぜひ一度お読み頂いたら良いのではと思います。本日はどうもありがとうございました。

松井忠三:どうも、ありがとうございました。

 


 
編集後記(聞き手・新谷 哲 談)

本当に素晴らしいお話でした。特に最後の「経営者はオーナーシップを持つべき」「社員の中にもオーナーシップを持った人を上に上げるべし」、という創業者精神のお話は、大切だと感じております。私の会社でも、社員達に創業者精神を植え付けたいと思います。

 

[プロフィール]松井 忠三 氏
株式会社松井オフィス 代表取締役社長
株式会社良品計画 名誉顧問
ほか社外取締役多数

西友時代は主に人事畑を歩み、各種制度の構築、幹部社員の意識改革研修等を担当する。良品計画に移ってからは、人事・営業・物流・インターネットビジネスを担当。 2001年、急激な業績不振の責任を取って退任した前社長のあとを受け、急きょ社長に就任。38億円の赤字を経て大掛かりな経営改革を断行。一時は撤退したアジアにも再出店。 創業以来11年続いた海外の赤字も2002年には黒字に転換させ、現在25の国と地域に300店舗を展開する礎を築く。

 

本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。

今回は、松井忠三氏(株式会社良品計画 名誉顧問)の経営者インタビューを取り上げました。

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