数学者・アルキメデスと教育者・福沢諭吉。彼らのなした偉業の根底には、彼ら自身の気概と独立自尊の精神があった。
「地球をも動かしてみせる」との気概
古代ギリシャの数学者・アルキメデスは、「てこ」の法則を発見し、証明したことで有名である。「てこ」とはいうまでもなく、小さな力を利用して大きな物体を動かす方法だが、その発見のさい、アルキメデスはこのように宣言したという。
「私に立つべき場所を与えてくれるならば、私は地球をも動かしてみせる」
つまり、「てこ」の法則を利用すれば、どんなに重いものでも自由にうごかすことができる。もし宇宙空間に足場があるなら、私ひとりの力で地球さえも動かしてみせようではないか、というのである。これが数学者として名をはせたアルキメデスの確信であり、気概であった。
慶応義塾大学の創立者として、さらには1万円札の肖像で有名な福沢諭吉にも、同様の逸話がある。幕末より教育者として独立していた諭吉には、明治政府が盛んに官職につくようにと誘っていたという。しかし諭吉は、断固としてこれを固持しきった。
その理由はさまざまにいわれているが、彼に政治や出世への野心がなかったことだけはたしかである。そのうえで知人が諭吉に仕官を勧め、諭吉自身の功労を政府がたたえなければならないといったときのことだ。
諭吉はあくまでも学者として、あたりまえのことをしてきただけだといい、そのうえでこういって断わったという。
「車屋は車を挽き豆腐屋は豆腐をこしらえて、書生は書を読むというのは人間あたりまえの仕事をしているのだ。その仕事をしているのを政府が誉めるというのなら、まず隣の豆腐屋から誉めてもらわなければならない」と。
学者だからといって、特別扱いするのはおかしいではないかというのである。こうした言葉の根底には、彼の「独立自尊」の精神があった。
独立自尊で信念をつらぬく
人生の場においてはもちろんのこと、ビジネスにおいてもアルキメデスの気概、福沢諭吉の独立自尊の精神は必要ではないだろうか。「地球をも動かしてみせる」との気概で、プロジェクトや事業に取り組む。他者からのさまざまなあつれきや誘惑があろうとも、「独立自尊」の精神をもち己の信念をつらぬく。
たとえその場、そのときにおいてはつらく、苦しい思いをするかもしれないが、そこで生まれた結果の正当性は時が証明してくれるに違いない。つらつらと頭をめぐらすに、世で偉人といわれるその人たちは、気概をもち、結果を生み、時を経て評価されている場合が多い。