成功経営者インタビュー

MRT株式会社 代表取締役社長 小川智也氏 インタビュー

本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、小川智也氏(MRT株式会社 代表取締役社長)です。(2021年11月3日 2021年11月 10日 配信)

今回は、MRT株式会社の小川智也社長にお越し頂きました。

医療人材プラットフォームを展開し、単発非常勤医師紹介では日本最大級のシェアを誇り、国内初の遠隔診療(オンライン診療)サービスを開始されたマザーズ上場企業の経営者です。

小川氏は、各救命救急センターにて救急科専門医としてご活躍される中で、関西と関東での医療システムの違いに疑問を持たれます。そして、システムや規制を改善することで「もっと多くの命が救えるのではないか」と考え、MRT株式会社へと入社し、事業を牽引されてきました。現在では、コロナ禍によりワクチン接種を行う医療従事者が不足している中、各自治体と協力し人材支援に奔走して下さっています。経営のヒントが得られますので、ぜひインタビューをお読みください。

新谷哲:今回の経営者インタビューは、MRT株式会社の小川智也社長です。まずは経歴のご紹介です。山田赤十字病院、大阪府立千里救命救急センター、国立病院機構大阪医療センター救命救急センターを経て、MRT株式会社に入社し、取締役執行役員経営戦略室長へとご就任されます。その後、英国国立ウェールズ大学経営大学院にてMBA取得。取締役副社長を務めた後、代表取締役社長へとご就任をされました。2014年には、東証マザーズに上場をされています。本日はよろしくお願いします。

小川智也:よろしくお願いいたします。

新谷哲:最初の質問です。ご出身はどちらですか?

小川智也:三重県鈴鹿市です。都会と違い、いい意味で田舎の風が吹いている地域でした。

新谷哲:小学校、中学校時代はどのようにお過ごしでしたか?

小川智也:バスケットボールのクラブ活動や、ボーイスカウトに勤しんでいました。医学部と言うと、小学生の頃から塾通いをしていたと思われがちですが、全く逆で活動的な生活を送っていました。

新谷哲:高校時代はどのようにお過ごしでしたか?

小川智也:仲の良いメンバーと、いろいろな所に出かけたり、夜な夜な集まったりして楽しい高校生活を送っていました。

新谷哲:医学部に進学する方は、ご両親がお医者様などで熱心な教育を受けられているケースが多く感じます。あまり勉強はなさらなかったのですか?

小川智也:していませんでした(笑)。母親は看護師ですが、もともと医師家系ではないので「医者になろう」とは全く考えてもいませんでした。実は、高校を卒業したら大学へは行かずに就職をしようとしていたのです。そんな時、高校3年生の夏休みにボーイスカウトの世界大会でアメリカに行く機会がありました。私は、この時出会ったホームステイ先のご夫婦がきっかけで、医療の道を志すようになりました。そのご夫婦は、旦那様がドクター、奥様がナースでした。さまざまなお話をする中で「これからどのような人生を歩むべきか」と大変考えさせられ、帰国後に「医学部を目指そう!」と決意しました。

新谷哲:医学部受験でのご苦労はございますか?

小川智也:勉強する習慣がないところから、突然、高校3年生の夏休み明けから受験勉強をスタートしました。そもそも私は文系の専攻だったので、先生は「何を言っているの?」という感じで、何から始めれば良いのかさえも分かりませんでした(笑)。そこから生活を改め勉強に励みましたが、浪人をしてしまい予備校に通い始めます。成績が悪すぎて医学部進学コースは断られたのですが、断固としで譲りませんでした。一番ビリでのコース選択を許可してもらったので、成績優秀な方々についてくのは苦労をしました。

新谷哲:医学部に受かった秘訣はありますか?

小川智也:両親の想いが心強く、乗り切る力になったと感じています。私の同世代はベビーブームで受験人数が多く、1点に笑い1点に泣くという世界でした。ですが、両親は「本当に医学部へ行くと決めたのなら、頑張りなさい」と何も言わずに応援をしてくれました。勉強熱心なタイプではありませんが、「達成するまで頑張ろう!」と気持ちを割り切ることで、大分大学の医学部に進学することができました。

新谷哲:大学時代はどのようにお過ごしでしたか?

小川智也:なんとか医学部に入れて嬉しい反面、「気を抜いてしまうと置いて行かれる」という不安もありました。そのため真剣に勉強を頑張りました。

新谷哲:大学卒業後は各救命救急センターにて救急科専門医としてご活躍されました。 救命救急を選ばれたきっかけはございますか?

小川智也:救命救急を選んだ理由は2つあります。1つ目は、広く医学を学びたいと感じたからです。臨床研修医として、大学病院で当直をしている先生の下で学ぶ機会がありました。その時、腹痛を訴える患者様が運ばれてきました。しかし先生は「自分の専門ではないので厳しい」とお断りをしたのです。その姿を見て、「専門ではなくても、とりあえずの処置をできるのが医者として当たり前なのではないか?」と疑問を感じました。そのため、より広くの医学を活かせる救命救急に興味を持ちました。2つ目は、自分に合っていると思ったからです。優秀な方は内科や、じっくり論理立てて考える診断学の道に進まれることが多いです。私は、勉強をしてこなかったことへの劣等感もあったのか、成績の優劣ではなく、1分1秒で判断し結論を得る救命救急が自分に合うと感じました。こうして「より多くの苦しんでいる方を助けるには?」と考えたところ、救命救急だと確信し、極めることにしました。

新谷哲:お医者様時代の思い出はございますか?

小川智也:三重県の病院で臨床研修医として、内科・外科・小児科・脳外科など、さまざまな科を2年間学んだ後、大阪府立千里救命救急センターへ入職しました。「西の大阪千里救命」と称されるほど救命救急が盛んで、ドクターカー出動件数日本一のアクティブな病院でした。三重県の病院とはレベルが違う救命救急の世界を目の当たりにし、毎日のごとく揉まれました。そして、千里救命の先生からステップアップとして、国立病院機構大阪医療センター救命救急センターをご紹介して頂き入職しました。こちらは、DMAT(災害派遣医療チーム)などを積極的に取り組む病院で、救急医療、集中医療、災害医療に関して学ばせて頂きました。大変ではありましたが、今の経営に非常に役立っています。

新谷哲:現在も救命救急医を続けていらっしゃったら、コロナウイルスへの対応で活躍されていたでしょうね。

小川智也:はい。第一線で奔走くださっている先生方には頭が上がりません。

新谷哲:その後、2011年にMRT株式会社へ取締役執行役員経営戦略室長としてご入社されました。民間の企業に移られた理由はございますか?

小川智也:関西と関東で医療システムがずいぶん違うのに疑問を感じたからです。救急科専門医として患者様に最善を尽くしても、助けられない命がたくさんありました。「そのような方々の命をなんとか助けることに繋げられないか?」と考え、真逆の予防医学を東京で学ぶことにしました。そうして、東京の救命救急にも携わったところ、医療システムの違いに気づきました。この時「医療現場ではなくシステム改善をすることで、効率的に医療を提供でるのではないか」と感じ、事業に興味を持つようになりました。

新谷哲:ここ数年はお医者様が事業を立ち上げ経営者になられることが増えましたが、当時は珍しかったのでは?

小川智也:はい。会社の経営に関しては素人なので、第一線の方々と対等に話せるように、英国国立ウェールズ大学経営大学院にてMBAを取得しました。

新谷哲:医療現場から離れ、民間の企業に移ることに対して葛藤はございませんでしたか?

小川智也:当時は、何が正解かわからず非常に悩みました。「医療現場の課題を改善する事業をする」と説明したところ「何をしたいのか意味がわからない」と反対され、医療に携わる同僚から理解を得られないこともありました。通常であれば、医学部卒業後は大学病院で勤めた後、教授から采配を受け働く病院を決めます。しかし私は、後ろ盾も無く自分で病院を選んで入職をしたり、東京へ出向いたりしていました。常日ごろ不安はありましたが、なんとかやれてしまうなとも感じていました(笑)。

新谷哲: 2014年にMRT株式会社は東証マザーズに上場をされました。ご苦労はございましたか?

小川智也:弊社は大学病院の若手医師が集まり、互助組織的に拡大してきました。そのため、現場に即した独自の風習があり、上場に向けての縛りにはやりづらさを感じることもありました。「本来ならこうあるべき」という思いはありましたが、着実にクリアできるよう従いました。

新谷哲:その後、取締役副社長を経て代表取締役社長へと就任されました。トップになる不安はありませんでしたか?

小川智也:ありませんでした。役職が変わっても、私が目標にしていることには変わりはありません。また、弊社の視点は医療現場に向いているので、課題の解決にがむしゃらで、事業のことしか考えていませんでした。どんな時も先生方に対する信頼があったからこそ乗り越えられたのだと感じています。

新谷哲:医者と経営者はどちらが楽しいですか?

小川智也:医者と経営者ではアプローチこそ違いますが、どちらも「患者様の命を助ける」という同じ使命に向かって取り組んでいます。以前は、医者の自分と経営者の自分で葛藤をすることもありましたが、現在では使命を再確認し納得しているので、どちらとも言いづらいですね(笑)。

新谷哲:ありがとうございます。もしよろしければ、MRT株式会社様の事業内容をお教えいただけますか?

小川智也:弊社は、医師・看護師を中心とした人材紹介事業を展開しています。現在のようなコロナ環境下では、ワクチン接種を行うために多くの医療従事者が求められています。一方で、現場医師や、産業医など、日頃から数多くの患者様を守るさまざまなカテゴリーがございます。医療従事者を追加で必要とする医療機関は多く、非常に高いニーズがあります。この限られたリソースをいかに医療現場へ効率的に配分できるかに着目し、マッチングを行っています。具体的には、土曜日がお休みでしたり、3時間だけ時間が空いていたりする医療従事者にご協力を頂き、医師不足や患者様が多くて困っている医療現場へご紹介するなどをメインの取り組みとしています。

新谷哲:ありがとうございます。ここからは違う質問をさせていただきます。好きなもの、好きなことをお聞きして「コーヒー、シュークリーム、ドライブ、革靴、絵画」とお答えいただきました。どのような絵がお好きですか?

小川智也:西洋の絵画を見るのが好きです。父親が世界を飛び回る仕事をしていたので、帰国時にはよく海外のお土産を買ってきてくれました。子供の頃はそれに刺激を受け、とてもワクワクしていました。今でも、海外のアンティーク絵画や、靴職人が作った革靴、古い建築物、などに惹かれます。

新谷哲:座右の銘もお聞きして「孤掌難鳴、医想全咲(いそうはるさき)、ファースト・イン・ラスト・アウト、平静の心(ウイリアムオスラーの言葉)」とお答えいただきました。医想全咲とは、どのような意味ですか?

小川智也:弊社のミッションは「医療を想い、社会に貢献する」です。医療への想い「医想」が全世界に広がっていくことで、やがて美しい花が咲く「全咲」。そんなことを願い事業を展開していこうと、医想全咲(いそうはるさき)という造語を作りました。

新谷哲:ありがとうございます。次が最後のご質問です。全国の経営者、これから起業する方に向け、経営者として成功する秘訣をお教えください。

小川智也:まだまだ成功しているとは思っていませんが、私の考える成功の秘訣は「やると決めたらやる」です。過去にとらわれず、やろうと思ったことを一瞬で決断することさえできれば、いかにして実現するかに意識が向きます。これからも、やると決めたことを愚直に続けていきたいと考えております。

新谷哲:大変参考になるお話でした!小川智也社長、本日はありがとうございました。

小川智也:ありがとうございました。

編集後記

今回は、小川智也社長でした。医者と経営者、どちらもこなしてしまうとは素晴らしい才能です。ご謙遜されていましたが、相当な努力をされているのだと思います。「やると決めたらやる」その愚直な姿勢こそが、何かを成し遂げるためには大変重要だと再確認しました。ぜひ皆様も参考に、共に成功社長を目指していきましょう!

小川智也氏
MRT株式会社 代表取締役社長

三重県鈴鹿市出身。大学卒業後、20024年に山田赤十字病院へ入職。その後、 大阪府立千里救命救急センター、国立病院機構大阪医療センター救命救急センターにて、救急医療現場の第一線でご活躍をされます。そして、2011年に医療情報のプラットフォームを展開するMRT株式会社へ入社し、取締役執行役員経営戦略室長にご就任されます。翌年には、英国国立ウェールズ大学経営大学院にてMBA取得。2018年には、グループ会社の株式会社CBキャリア(現・株式会社日本メディカルキャリア)の取締役、2019年には、MRT株式会社の代表取締役社長へとご就任をされました。さらに、2020年には、Vantage株式会社を子会社として設立し、代表取締役に就任されています。また、一般社団法人新経済連盟、一般社団法人日本人材紹介事業協会所属、一般社団法人日本医療ベンチャー協会では理事を務められています。医療課題が山積みの日本で、新たな医療サービスの創造により日本全国どこへいても医療が均等に享受できる環境を目指し、邁進されています。

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本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、小川智也氏(MRT株式会社 代表取締役社長)の経営者インタビューを取り上げました。

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