成功経営者インタビュー

株式会社CaSy 代表取締役CEO 加茂雄一氏 インタビュー

本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、加茂雄一氏(CaSy 代表取締役CEO)です。(2022年5月10日 2022年5月17日 配信)

今回は、株式会社CaSyの加茂雄一社長にお越し頂きました。

家事代行を中心とした「暮らしのマッチングプラットフォーム」を展開し、東証グロース市場に上場をした企業の社長様です。
加茂氏は、会計士として多くのベンチャー経営者と関わる中で「志」の重要性に気づかれます。自らの心に向き合い、信念に向かって突き進まれるエピソードから経営のヒントが得られます。ぜひ、インタビューをお読みください

新谷哲:今回の経営者インタビューは、株式会社CaSyの加茂雄一社長です。まずは経歴のご紹介です。早稲田大学商学部在籍中に公認会計士資格を取得し、2005年に中央青山監査法人へとご入所をされます。その後、太陽ASG有限責任監査法人を経て、2014年に株式会社CaSyを設立。2022年2月には、東証マザーズ(現・グロース)に上場をされています。本日はよろしくお願いいたします。

加茂雄一:よろしくお願いします。

新谷哲:最初の質問です。ご出身はどちらですか?

加茂雄一:生まれは岐阜県、育ちは埼玉県の川越市です。

新谷哲:小学校時代はどのような少年でしたか?

加茂雄一:わんぱくな子供でした。せっかちな性格だったこともあり、リーダーシップを発揮し遊びなども率先して決めていた記憶があります。

新谷哲:当時から社長気質を持ち合わせていたのですね!中学時代はどのようにお過ごしでしたか?

加茂雄一:中学に入ると「学ぶことのおもしろさ」に気付き始めます。小学校高学年の頃に、映画『インディ・ジョーンズ』を鑑賞したことで遺跡や歴史にロマンを抱くようになり将来の夢を「考古学者」に定めました。そのため、中学生の頃は世界史や日本史ばかり学んでいたオタクでしたね。

新谷哲:高校時代はどのようにお過ごしでしたか?

加茂雄一:高校時代に力を入れていたことは2つあります。1つ目は、柔道です。高校生の頃は体重が100キロ近くあり、今よりも二回りほど大きい体格をしていました。そのため、重量級寄りの選手として練習へ勤しんでいましたね。そして2つ目は、受験勉強です。早稲田大学の教育学部には、ピラミッドの研究で有名な吉村作治名誉教授が所属をしています。その方の講義を受けたい一心で、受験勉強に打ち込んでいました。

新谷哲:高校卒業後には、早稲田大学商学部へと進学をされました。教育学部ではなく商学部を選ばれた理由はございますか?

加茂雄一:一言で言うと、教育学部に落ちてしまったからです(笑)。また、「考古学だけでは食べていくことが難しい」という話も耳にしていたため、「若いうちはビジネスで蓄えを作り、老後になってから考古学に時間を使おう」と考えるようになりました。

新谷哲:大学時代はどのようにお過ごしでしたか?

加茂雄一:当初は、勉強もせずにサークルやバイトなど大学生活を謳歌していました。しかし、私は高齢出産で生まれた子供で、大学卒業と父親の定年退職が同じタイミングだったこともあり、卒業までに手に職をつけておきたいと考えるようになりました。そんな時、同じゼミの友達が公認会計士資格の取得に向け邁進しているところを目にし、私も興味を持ちました。さっそくどのような資格か調べたところ、収入は安定していて老後の蓄えができそうですし、内容もチャレンジングでとても魅力的でした。そのため、資格取得支援学校へと大学3年から通い、4年生の時に公認会計士資格を取得しました。霞が関の掲示板に張り出された合格発表の中に、自分の番号をやっと見つけることができたとき、喜びのあまり父と2人で崩れ落ちたのは懐かしい思い出です。

新谷哲:素敵なお父様でらっしゃいますね。大学卒業後は、監査法人の中でも最大手にあたる、中央青山監査法人へとご入所をされます。こちらを選ばれた理由はございますか?

加茂雄一:4大監査法人それぞれに良い所がありますが、中央青山監査法人が一番スタイリッシュに感じたからです。霞が関ビルの30数階という好立地に会社を構えていることもさることながら、リクルート活動を行っていた社員の方々がとてもかっこよく、「この人たちと仕事をしたい」と憧れ応募をしました。入所後は、日本で5本の指に入るような大企業を担当させて頂きました。とはいえ、企業全体ではなく一部を担当する形でしたので、1年~2年目の間は、会社の全体像を掴むことに苦労をしました。

新谷哲:その後、太陽ASG有限責任監査法人にご入所をされます。こちらへ移られた理由はございますか?

加茂雄一:会社全体を担当できるような、中堅の監査法人で働きたいと感じたからです。

新谷哲:当時の思い出はございますか?

加茂雄一:この頃、仕事に対する価値観が大きく変わったことが印象深いです。私は、将来の蓄えを作るために会計士となったので、正直なところ「仕事を通して世の中をどのように良くしていきたいのか?」という思いは持っていませんでした。しかし、太陽ASG有限責任監査法人に入所し、のべ100人近いベンチャー企業経営者とお話をする中で、「志」と言うものの存在に気づきます。私は、その社長様方と対等な関係を築いていくためにも、話しを理解していきたくて、志の醸成を大切にしているグロービス経営大学院へと入学を決めました。そこで学びを得たことで、私にも「志」という人生の使い方があるのだと知ることができ、大きな転機となりましたね。

新谷哲:グロービス経営大学院を卒業されてから、株式会社CaSyを起業されたのですか?

加茂雄一:実は、グロービス経営大学院は卒業していません。なぜ中退をしたかと言うと、MBA取得の最終段階に、3カ月でビジネスプランを作るという課題があり、たまたま同じテーブルに座っていた今の共同創業者と作ったものを元に株式会社CaSyを立ち上げたからです。

新谷哲:株式会社CaSyの元となったビジネスプランが生まれた経緯をお話し頂けますか?

加茂雄一:今までビジネスプランを作った経験も無かったので、当初は講師に100案ほどぶつけても、全く評価はしてもらえませんでした。その理由を尋ねると「このビジネスで誰を救いたいか」という「志」が見えないとお声を頂いたのです。そこから、「一番身近な家族である、妻を救えるサービスはなんだろう?」と考えるようになりました。ちょうどその頃、妻が妊娠をしました。それまでは、家事が苦手な私に代わり、共働きながら妻が家のことをやってくれていたのですが、身体が動かしづらくなったこともあり、私が多めに家事を分担すると決めました。しかし、それが逆に妻のストレスになってしまっているのではないかと感じ、家事代行サービスを利用することにしました。実際に使ってみると、単にお掃除、お料理をやってくれること以上に、家事が苦手な私に任せている妻の罪悪感みたいなものが払拭され、笑顔が増えていったのです。この経験から、家庭内のことであっても、苦手なことは得意な人にアウトソースすることを当たり前にしていくことができれば、もっと世の中の家庭が笑顔になり、仕事もはかどるようになり、日本社会に貢献できるのではないかと思うようになりました。

新谷哲:それは素晴らしいですね!

加茂雄一:しかし、当時の2014年頃は、それほど家事代行サービスは広がっていませんでした。私なりに感じた理由は2つあります。1つ目は、価格が高いことです。1時間4000円~5000円のサービス価格は、定期的に使うには少し高く、富裕層向けの印象がありました。2つ目は、家事代行の依頼に手間がかかることです。実際にサービスを利用するまでには、ビジネスアワーにしか繋がらないコールセンターに電話をかけ、コーディネーターが来る日程を調整し、家に来ていただいてインタビューを受けた後、マッチングするという流れです。もちろん平日は働いているので、インタビューのさいには土日を使う必要があり、サービスを利用できるまでには2週間ほどかかりました。そこで、価格と手間という2つの課題を解決し、Uber Eatsやメルカリのようにスマホで手軽に使えるようにすることができれば、家事代行サービスはもっと普及するのではないか?と考え、ビジネスプランを作成したのです。それを発表したところ、高評価をいただけ起業に至りました。

新谷哲:創業当初から上場をお考えでしたか?

加茂雄一:創業に近い時期から上場について考えるようになりました。家事代行サービスは家の中に入れていただくサービスなので、より会社として信頼していただく必要があります。私は、太陽ASG有限責任監査法人でIPOコンサルを多く担当させて頂いていたこともあり、上場することのメリット・デメリットを認識していたので、比較考慮した結果、信頼を得る手段として上場を選択することにしました。

新谷哲:上場に向けてのご苦労はございましたか?

加茂雄一:上場に至るまでの8年間、いろいろなことがありました。その中でも、印象深い出来事が3つあります。1つ目は、資金ショート寸前にまで陥ってしまったことです。会社を成長させたいという思いが先行し、計画的に資金繰りができていませんでした。これは、会計士としてCFOも兼任していた私の責任です。そこから、役員報酬を止めるなどの策を講じ苦しい時期を過ごしましたが、出資していただいた株主の方にも助けられ、なんとか乗り越えることができました。この経験から、管理体制の重要性を再認識しました。私がCEOに就くタイミングで、共同創業者である池田裕樹がCFOに就き、徹底した管理体制を構築していきました。彼はリスクを抑え1つひとつ積み上げながら課題を乗り越えていくことを得意としています。私だけでは、上場を達成することはできなかったですね。

2つ目は、社員の大量離職です。ベンチャー企業ではよくあることと言われますが、2年間で約3割の社員が続けて退職していった時期があります。皆にフラれているようで辛い思いをしました。このことをいろいろな方に相談をし、アドバイスを頂いたことにより、私の経営への考え方は次第に変わっていきました。社員の人生を預かっている立場だということを自覚し、愛をもって接していこうと心から感じたのです。そこから、意識的に社員とのコミュニケーションを取る時間を作るなどすることで、あらゆる面で好循環が生まれるようになりました。

3つ目は、リスク対応です。家事代行サービスでは、お客様の自宅に入れていただくため、特有のリスクが存在します。まず、お客様の個人情報漏洩や、家の中のものが無くなってしまうというリスクです。次に、働き手がお客様の家という密閉された空間で、性的被害などの事件・事故に巻き込まれてしまうというリスクです。これらは創業当初から認識していて、いろいろな取り組みを行ってきたのですが、2020年にそのリスクが顕在化してしまいました。それは、弊社のキャストがお客様宅にお伺いしたところ、全裸でアダルトビデオを見ていたというものです。この件を受け大いに反省し、リスク解消の取り組みを強化していきました。例えば、本人確認のみではなく、反社・犯罪歴のデータベースと照合することや、家事代行スタッフが利用する専用アプリ上に110番ボタンを設置するなどです。この様に、上場するまでにはスムーズにいくことばかりではありませんでしたが、リスクに対し真摯に向き合い改善していくことが、非常に大事だったと感じます。

新谷哲:ありがとうございます。もしよろしければ、株式会社CaSyの事業内容をお教えいただけますか?

加茂雄一:弊社は、「暮らしのプラットフォーム」構築に向け取り組んでいる企業です。将来的には、スマートフォンがあればAmazonで物を簡単に買えるように、家事代行・ベビーシッター・ペットシッター・介護など、家の中のサービスも簡単に頼めるような世界を作っていきたいと考えています。現在では、家事代行事業と、先週リリースをした家事代行会社様向けSaaSプロダクト「MoNiCa(モニカ)」を展開しています。それぞれの特徴についてお話させていただきます。まず、家事代行事業には2点の特徴がございます。1つ目は、シェアリングエコノミー型の家事代行サービスマッチングプラットフォームである点です。従来のように雇用するのではなく、業務委託のフリーランスとして登録し、空いている時間と家事スキルをシェアしていただきます。お客様はその情報を元に、サービスを選択していただけます。2つ目は、ITの活用です。従来の家事代行サービスでは、コーディネーターがマッチングの役割を担っていました。そこを弊社では、独自のマッチングアルゴリズムを活用しシステム的に行っています。このことにより人件費が抑えられ、お客様のご利用価格を抑えることはもちろん、マッチングに2週間かかっていたところを、最短当日の3時間後からお伺いできるようになり、課題であった価格と手間を解決しました。次に「MoNiCa(モニカ)」の事業についてです。こちらは、もっと日本全国の皆様が家事代行サービスを当たり前に使っていただけるようにするため、培ってきたシステムを全国の家事代行会社様にご提供をさせて頂いています。私たちの世代が「モニカ」と聞くと、吉川晃司の曲が思い浮かぶかもしれませんが…(笑)「MoNiCa(モニカ)」には「(Mo)もっと、(Ni)日本に、(Ca)家事代行を」という想いを込めています。今後は、サービスをさらに拡充していき「家の中のことだとしても、得意な人に任せる」という選択肢を当たり前にしていきたいと考えています。

新谷哲:ありがとうございます。ここからは違う質問をさせていただきます。先ほども触れましたが、好きなもの、好きなことをお聞きして「ロマンがあること(考古学、宇宙)、身体動かすこと(ランニング、ウェイトトレーニング)、人と会うこと」とお答えいただきました。宇宙もお好きなのですね!

加茂雄一:はい。考古学や遺跡もそうですが、未知のもの、ロマンがあることが好きなので、星を見ていたら1日無くなってしまうくらいです。海の底も好きで、子供の頃は大きな魚の図鑑とか、そういうものばかり見ていた気がします。仕事でも「世の中のためになるような、未知の世界を作っていきたい」という想いで取り組んでいます。

新谷哲:座右の銘もお聞きして「生きてるだけで丸儲け、実るほど首を垂れる稲穂かな、人の笑顔を自分の幸せに」と3つお答えいただきました。これらを選ばれた理由はございますか?

加茂雄一:1つ目の「生きてるだけで丸儲け」は昔から思っていて、よく周りの人には、一番の長所は前向きなところだと言われます。つらいことがあったとしても「この世に生を受けたことでありがたい」と思うようにしています。2つ目の「実るほど頭を垂れる稲穂かな」は、弊社の株主であるワタキューセイモア株式会社の代表取締役社長である、村田清和さんから学んだ姿勢です。病院・介護施設向けリネンサプライや宅配食事でNo.1シェアを誇り、150年以上の長い歴史を持つ企業の社長でありながら、上場して間もない私たちにとても謙虚に接してくださいました。私は、いろいろな方に助けられながらここまで来ることができました。社長だから偉いと調子に乗らないよう、自戒の意味も込めて大切にしています。3つ目の「人の笑顔を自分の幸せに」は、この様な考えで経営をしていきたく、挙げさせて頂きました。私は、会社経営に役立てるため、様々な本を読み、講演に参加をしてきました。その中でも、稲盛和夫さんの著書『心。』や、SHOWROOM株式会社の代表取締役社長である前田裕二さんの言葉から、志、利他の精神を持ち、自らが人のために行動していくことが大切だと学びました。弊社のビジョン・ミッションも、この培ってきた考えを元に作成しています。

新谷哲:ありがとうございます。次が最後のご質問です。全国の経営者、これから起業する方に向け、経営者として成功する秘訣をお教えください。

加茂雄一:難しいご質問ですが、苦しいときに前向きに頑張ることができるかどうかが、成功への分岐点になると思います。会社経営では多くの人を巻き込んでいく必要があるからこそ、大変なこともたくさん出てきます。私も心が潰されそうになり、自尊心が無くなってしまうような経験をしてきましたが、それは多くの経営者が経験していることです。どんなときにも、後ろ向きにならず、高い志を持ち進んでいきたいと思います。

新谷哲:大変参考になるお話でした!加茂雄一社長、本日はありがとうございました。

編集後記

今回は、加茂雄一社長でした。たいへん聡明な方でしたね。私が意図していなくても論理的にお答えいただいて、非常にスムーズなインタビューでございました。かつ、前向きに挑んでいらっしゃって、こういった経営者がITを駆使してシステム化を行い、素晴らしいビジネスモデルを作っていくのだなと感服いたしました。ぜひ皆様も参考に、共に成功社長を目指していきましょう!

加茂雄一氏
株式会社CaSy 代表取締役CEO

埼玉県出身。2005年早稲田大学商学部卒業後、中央青山監査法人を経て、2007年に太陽ASG有限責任監査法人へ入所。仕事のかたわらグロービス経営大学に通い多忙な生活を送る中、妻が妊娠し家事代行サービスに助けられた経験から世の中への必要性を実感し、同大学院同期らとビジネスプランをまとめ2014年に株式会社CaSyを設立し、代表取締役 CEOへとご就任をされます。テクノロジーの活用により、低価格でありながら質の高い家事代行サービスの提供を実現し、2019年には「家事代行サービスランキング(日経DUAL)」第1位を受賞される企業へと導かれました。さらに2022年には、東京証券取引所マザーズ(現・グロース)市場へ上場。誰もが安心して手軽に利用できる「暮らしのマッチングプラットフォーム」の構築に向け邁進されています。

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本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、加茂雄一氏(株式会社CaSy 代表取締役CEO)の経営者インタビューを取り上げました。

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