成功経営者インタビュー

株式会社unerry 代表取締役CEO 内山 英俊氏 インタビュー 

本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、内山英俊氏(株式会社unerry 代表取締役CEO)です。(2022年9月28日 2022年10月 5日 配信)

今回は、株式会社unerryの内山英俊社長にお越し頂きました。
リアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」を運営する、東証グロース市場上場企業の社長様です。ミシガン大学大学院でコンピューターサイエンスを学ばれ、インターネット黎明期の裏舞台を目の当たりにされてきた内山氏。そんな彼の考える「事業戦略を練る上で一番重要なこと」とは?経営のヒントが得られますので、ぜひ、インタビューをお読みください。

新谷哲:今回の経営者インタビューは、株式会社unerryの内山英俊社長です。まずは経歴のご紹介です。ミシガン大学院でコンピューターサイエンスを学ぶ傍ら、研究所でAIエンジニアとしてご勤務されます。そして修士課程修了後、外資系コンサルティング会社であるプライスウォーターハウスクーパース、A.T.カーニーにて事業戦略・企業再生などを手掛けられます。その後、株式会社サイバードのビジネスマネージャーを経て、同社の仲間と2008年に株式会社ANALOGTWELVEを共同創業し、モバイルマーケティング事業を展開。そして、2015年に株式会社unerryを創業し代表取締役CEOにご就任されました。2022年7月には、東証グロース市場へ上場をされています。本日はよろしくお願いします。

内山英俊:よろしくお願いいたします。

新谷哲:最初の質問です。ご出身はどちらですか?

内山英俊:生まれは愛知県名古屋市で、育ちは知多半島の大府市です。

新谷哲:小学校時代はどのようにお過ごしでしたか?

内山英俊:ろくに勉強もせず毎日友人と山で遊んでいて、よく骨折をしていました(笑)。学校の成績はあまりよい方ではなかったですね。

新谷哲:中学校時代はどのようにお過ごしでしたか?

内山英俊:中学校から心を入れ替え、勉強の他にも、学級委員や生徒会活動など積極的に頑張るようになりました。なぜ、そこまで変わることが出来たのかというと、両親がプレッシャーの強いタイプで、うまく尻を叩いてくれたからだと感じています(笑)。

新谷哲:高校時代はどのようにお過ごしでしたか?

内山英俊:愛知県にある、公立の進学校へと入学をしました。自由闊達な校風で居心地も良く、部活など青春を謳歌していました。今でも年に1回は集まるような親友を作ることが出来た、人生最良の時代だったと思います。

新谷哲:高校卒業後は、名古屋大学に進学をされました。こちらを選ばれたきっかけはございますか?

内山英俊:正直、当時は「地元から離れて愛知県以外の世界を見てみたい」という思いが強く、別の大学を目指していました。しかし、高校時代はあまり勉強をしていなかったので、学年の中で下から2番目と最低クラスの成績にまで落ちていました。高校2年生の頃に「このままではいけない!」と気づき、頑張って勉強を開始しました。結果、県外受験はうまくいかなかったのですが、なんとか名古屋大学に進学することが出来ました。

新谷哲:名古屋大学ではどのようにお過ごしでしたか?

内山英俊:名古屋大学は、教授も学生も素晴らしい方ばかりでとても立派な大学でした。しかし、ほとんど学校には行っておらず、キラキラした大学生活とは程遠いですね。特に2年の頃までは日中は部屋にこもり、夜になると海に行くという生活を過ごしていました。一人で物事を考える時間が必要だったのだと感じます。

新谷哲:それでも卒業することが出来るとは、素晴らしいですね!

内山英俊:昔から、人生の大事な局面において「なんとかする」という力だけはありまして。この時も、持ち前の力を発揮し切り抜けました(笑)。

新谷哲:名古屋大学卒業後は、ミシガン大学大学院に進まれました。なぜ、こちらを選ばれたのですか?

内山英俊:私は、情報工学(コンピュータサイエンス)の分野でデータベースを扱う仕事をしたいという思いがありました。ミシガン大学は、世の中で一般的に使われているデータベースの基礎が作られたところなので、その分野の優秀な方々が集まっています。その中に、大学時代に読んでいた本に出てきた教授もいらっしゃると知り「この先生のところに行こう」と決めました。そこから、文部省(現・文科省)の推薦を頂き、ミシガン大学大学院へ進学することとなりました。

新谷哲:ミシガン大学大学院ではどのようにお過ごしでしたか?

内山英俊:ミシガン大学大学院にいた2年間で、私の人生の基礎となる多くのことを得ることができました。Googleの創業者であるラリー・ペイジさんが大学OBとして顔を出していたり、北京大学の首席の方が同窓生にいたりと、本当に優秀な方々ばかりでした。一方で私は、学力やコンピュータースキルが高かった訳ではありませんし、英語も喋ることができませんでした。当初は、自分と周りとの差に衝撃を受け、人として恥ずかしいような気持ちになりました。ただ、その思いが今の仕事の原動力や起点となっています。

新谷哲:大学院で学ばれながら、研究所でAIエンジニアとしても勤務されていたとの事ですが、どのようなお仕事をされていたのですか?

内山英俊:大学付属の研究所で働いていました。アメリカでは日本と違って、大学の研究室で教授のために研究をするということはなく、教授が研究テーマを持っている場合に学生をアルバイトとして雇うことが多いです。その上のステータスで、大学院博士後期課程の大学院生の中から研究補助者として生徒を数名ほど選びプロジェクト等に参画させる、リサーチアシスタントという制度があります。私はそれに応募し、教授にスポンサーとして授業料とお給料を出して頂きながら、1年半ほどAIエンジニアとして勤務しました。

新谷哲:当時の思い出はございますか?

内山英俊:「今日自分が作ったものが、明日世の中を変えるかもしれない」そんな気持ちで取り組んでいました。当時はいわゆるITバブル、ドットコムバブル全盛期で、さまざまなサービスがぼこぼこと立ち上がっていました。ラリー・ペイジさんもこの頃に、Googleというサービスを開発し「すごいだろ?」と言っていましたね。正直私は「窓が一個だけのwebページがうまくいく訳ない」と思っていたのですが、これが世の中に波及し、社会を変えていく過程を目の当たりにしてきました。これは、ラリー・ペイジさんに限られたことではなく、どの学生もIT技術を用いて世の中を変革していこうと主体的に活動していたので、学生初任給もどんどんと上がっていました。また、大学の有名な教授がMicrosoftに引き抜かれ突然授業が無くなるというようなことも、日常茶飯事で起きていましたね。日本とアメリカでは、研究室やエンジニアの行動原理が全く違っていて「このようなダイナミズムな世界で生きることが自分には合っている」と感じていました。

新谷哲:修士課程修了後は、外資系コンサルティング会社に進まれました。こちらを選ばれたきっかけはございますか?

内山英俊:エンジニア技術だけではなく、ビジネスサイドも学んでいきたいと感じたからです。実は、研究員をやっていた時に、当時の仲間たちと携帯デバイスを用いて会社のメールやスケジュールを外でも確認できる今でいうスマートフォンのようなサービスを立ち上げました。しかし、自分自身が研究者であるがゆえに、サービスを客観的に見ることができず、事業は全くうまくいきませんでした。当時は、緻密に考えて作り上げたサービスが可愛くてしょうがないのにも関わらず、世の中に受け入れられないことへのギャップにとても悩みましたね。その経験から、ミシガン大学はMBA、ビジネススクールも有名ということもあり、授業を受けてみることにしたのです。すると、エンジニアリングとは全く違う世界が広がっていました。例えば、ポジショニングいう概念を、アサヒビールとキリンビールの事例で学びました。正直、商品のポジショニングを二軸で評価してマーケティング戦略を立ててしまうなんて「なんて稚拙な分析なのだ…」というのが最初の感想です。しかし学んでいくにつれ、経営者やお客様が意思決定をするには何を考えればよいのかを理解することができ、自らの事業が上手く行かなかった理由に気づきました。さらなる経営視点を身に付けていきたいと、一度、コンサルティングの世界に飛び込んでみることを決めました。

新谷哲:外資系コンサルティング会社での思い出はございますか?

内山英俊:プライスウォーターハウスクーパースで2年、A.T.カーニーで3年と、2つの会社で併せて5年間所属しました。特にA.T.カーニーという戦略系のコンサルティング会社では、価値観の違いについて学べたことが思い出深いです。というのも、私はエンジニアとして働いていたので「知っている、できる」ということを重要視していました。しかし、コンサルティングの世界ではあまり意味を成さないことに気付かされました。当時エンジニアの月額請求単価が80万円~100万円で、私の単価は800万円と、10倍もの差がありました。この金額に見合うレベルの仕事と言うのは「誰もが気付かない切り口を見つけ、瞬時に課題解決へのご提案ができることだ」という大切な価値観を学びました。また、今でもお世話になるような人脈を多く築くことができ、貴重な体験をさせて頂けたと感じています。

新谷哲:その後、株式会社サイバードへ移られます。こちらでは、どのようなお仕事をされましたか?

内山英俊:株式会社サイバードは、当時主流だったガラケーの着メロ・着うた等のiモード公式サイトの第一人者である堀主知ロバート氏が創業し、上場をしていたモバイルベンチャー企業です。ここでは、1年強ほどビジネスマネージャーを務めさせて頂きました。

新谷哲:その後、株式会社ANALOG TWELVEを創業されます。創業のきっかけはございますか?

内山英俊:株式会社ANALOG TWELVEを創業した2008年は、スマートフォンが日本にやってきた年です。10年前に、似たようなサービスを作り大失敗したことを思い出し「これは、もう1回チャレンジをせよという神の思し召しだ!」と感じ、サイバードの仲間たちと共に会社を創業することを決意しました。私は、スマートフォンには以前開発したサービスよりももっと大きな可能性が秘められていることを確信していて、世界観に合うサービスを模索していきました。そして、お互いのGPSの情報をリアルタイムで共有しながら待ち合わせをする「待ちぴったん」というアプリを作成します。これは、多くのキャリアや端末メーカー様からの引き合いがあり、非常にヒットしました。すると、企業側から「スマートフォンを使ったマーケティングをしたい」とお声がけを頂くことが増えていき、現在の事業にも繋がる、位置情報を使用したサービスや、アプリ・webサイト作成・広告配信事業などを展開する、総合的なモバイルマーケティング企業へと変化していきました。

新谷哲:そこから、株式会社unerryを創業されたきっかけはございますか?

内山英俊:革新的な技術であっても、取り組みの規模が小さければ成功しないと気づいたからです。総合的なモバイルマーケティングを求めているお客様は、ほとんどがリアル店舗で「モバイルアプリを用いて店頭に送客したい」というのがテーマでした。そのため、当時の言葉でいうOtoOやオムニチャネルなどのあらゆるマーケティング施策を実施していきました。しかし、そのほとんどがうまくいかなかったのです。例えば、あるデパートではBeacon(ビーコン)というBluetoothセンサーを用いて、スマートフォンを持っている人が入口に近づくとプッシュ通知が送られるという仕組みを導入しました。しかし、このような世界中の人が実験を重ね発明した仕組みを取り入れても、うまくは行きません。そこから私なりに、なぜそうなってしまうのか考えた結果「規模の小さい取り組みを個々にしているからうまくいかないのだ」という結論にたどり着きました。ならば、皆が集まる大きなプラットフォームを構築すれば、お客様へのご要望に応えていけるだろうと考え、株式会社unerryを創業しました。

新谷哲:2022年7月28日に、東京証券取引所グロース市場へ上場をされています。当初より上場をお考えでしたか?

内山英俊:はい。取り組みの規模を大きくするということは、多くの企業様とお付き合いをして行く必要があります。当然、資本提携も視野に入れていたので、上場してお返しすることは義務であります。加えて、上場により社会的信用を決定づけることが、プラットフォームの普及促進になるだろうと考えていました。

新谷哲:上場に向けてのご苦労はございますか?

内山英俊:特に苦労したことは2つあります。1つ目は、監査法人を見つける事です。現在では“監査法人難民”や“証券難民”という言葉が出てくるほど、上場希望企業との間に需要のミスマッチが生まれているようです。弊社の場合は、監査法人を見つける事が非常にネックでしたが、他社では証券会社を見つけることも極めて厳しい状況であったと聞いています。2つ目は、予実管理です。業績を下振れさせることは当然として、上振れしすぎることもいけません。コロナウイルスの蔓延や円安など、急激な外部環境の変化にも対応し、着実に予実を合わせていくことにはとても苦労しました。上場ギリギリまで不安でしょうがなかったです。

新谷哲:ありがとうございます。もしよろしければ、株式会社unerryの事業内容をお教えいただけますか?

内山英俊:弊社は、人流データを取り扱っている会社です。「コロナ禍で○○の人通りが増えている・減っている」というニュースをよく見かけると思います。まさに、このデータの大元をご提供しているのですが、これは皆さんがよく使われている約120のスマートフォンアプリと連携し取得する、約1.1億IDに及ぶ人流ビッグデータをAI分析し導き出しています。この技術を活用し提供するサービスは、主に3つあります。1つ目は、人流データの分析・可視化サービスです。2つ目は、広告配信サービスです。こちらは、人流データ分析により可視化された課題を解決するための送客手段としてご活用いただけます。3つ目は、システムソリューションサービスです。こちらは、位置情報技術を用いたデータベースやアプリを作りたいなど、高度な用途を検討されているお客様に対しご提供させて頂いています。

新谷哲:ありがとうございます。ここからは違う質問をさせていただきます。好きなもの、好きなことをお聞きして「飛行機、書道、孫子・孔子」とお答え頂きました。書道は小さい頃からやっていらっしゃったのですか?

内山英俊:書道は小・中学校の頃にやっていて、大人になってからまた始めました。少しマニアックな話になるのですが、人の名前を書く時は、その人のことをイメージしながらいろいろな書体で書き進めていきます。すると、相手との向き合い方が見えてきたりするので「君の一字はこれ」などと言って、作品を社員にプレゼントすることもあります。

新谷哲:それは素晴らしいですね!座右の銘もお聞きして「非戦・非攻・非久」とお答えいただきました。これらを選ばれた理由はございますか?

内山英俊:「非戦・非攻・非久」は、孫子の兵法の基本戦略とされた有名な言葉です。孫子が兵法書を記した紀元前500年ごろは、戦争というものは相手の国に攻め入り、最前線で斬り合うことが常識でした。そんな中、「非戦:戦わずして勝つ 非攻:力技で仕掛けない 非久:争いは長引かせない」という概念を掲げ、結果を出したのは、まさにイノベーションです。そして、それが2000年以上経った今でも言われ続けているということは、現代にも通ずる素晴らしい考え方であるということです。例えば、会社対会社のコンペがあるとします。そこで重要なことは、身を切って価格をギリギリまで攻め合うことではなく、いかにお客様に選んで頂ける状態を作り上げていくかということです。そもそも「戦略」は、戦いを略すると書くように、一番重要なことはいかに戦わずして有利な立場に立つかだと考えています。そのため私は「unerryを選ぶに決まっている!」と皆が思うような状態を作っていこうとしています。上場というのも、その中の重要なプロセスです。こうすることで、結果的に業界の中で無駄な戦いも起きず、社員も疲弊せず、全員が幸せになると思っています。

新谷哲:ありがとうございます。次が最後のご質問です。全国の経営者、これから起業する方に向け、経営者として成功する秘訣をお教えください。

内山英俊:私は、まだまだ成功していませんが「なんとかする力」が重要だと思っています。戦略やコンサルティングなどと申しましたが、実際は綺麗な姿というのはほとんどなく、失敗だらけで99%はうまくいかないことが常でした。しかし、経営者が失敗一つひとつでめげていては、社員の皆さんも前を向いて仕事をすることができません。辛いときにも何とか耐え抜き、前に一歩を踏み出すことで、成功に近づけるのではないかと思い、頑張っています。

新谷哲:大変参考になるお話でした!内山英俊社長、本日はありがとうございました。

内山英俊:ありがとうございました。

編集後記

今回は、内山英俊社長でした。本当に頭がよく、多才で素晴らしい方でした。なにより、「何とかする力」で多くの困難やご苦労を乗り越えていらっしゃり、大変根性がおありなのだと感じました。ぜひ皆様も参考に、共に成功社長を目指していきましょう!

内山英俊氏
株式会社unerry 代表取締役CEO

愛知県出身。ミシガン大学大学院にてコンピューターサイエンスを学ぶ傍ら、研究所でAIエンジニアとして勤務。修士課程修了後は、外資系コンサルティング会社であるプライスウォーターハウスクーパース、A.T.カーニーにて事業戦略・企業再生などを手掛けられます。その後、モバイル事業を展開する株式会社サイバードのビジネスマネージャーを経て、同社の仲間と2008年に株式会社ANALOGTWELVEを共同創業し、モバイルマーケティング事業を展開。そして、2015年に株式会社unerryを創業し代表取締役CEOにご就任。人流データサービスを展開し、2022年7月28日に東京証券取引所グロース市場に上場を果たされました。また、業界団体LBMA Japanの理事を務めるなど、位置情報業界の発展に務められています。

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本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、内山 英俊氏(株式会社unerry 代表取締役CEO)の経営者インタビューを取り上げました。

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