成功経営者インタビュー

株式会社ランドネット 代表取締役 榮章博氏 インタビュー

本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、榮章博氏(株式会社ランドネット 代表取締役)です。(2022年10月12日 2022年10月19日 配信)

今回は、株式会社ランドネットの榮章博社長にお越しいただきました。
独自のシステムをご自身で築き、創業から順風満帆な経営をされていた榮氏。しかし、事業が成長するにつれ「人と仕事をすることの難しさ」という壁に突き当たり、社員の大量離職による内部崩壊の危機を迎えます。そこから、ある取り組みをされたことで、翌年には年率30%の業績向上をされたのだとか!経営のヒントが得られますので、ぜひ、インタビューをお読みください。

新谷哲:今回の経営者インタビューは、株式会社ランドネットの榮章博社長です。まずは経歴のご紹介です。中央大学法学部卒業後、株式会社大京住宅流通にご入社されます。その後1999年に株式会社ランドネットを設立されました。2021年には、東京証券取引所JASDAQ(現・東京証券取引所スタンダード)市場に上場されています。本日はよろしくお願いします。

榮章博:よろしくお願いします。

新谷哲:最初の質問です。ご出身はどちらですか?

榮章博:大阪府です。新大阪駅の開発地となった敷地に住んでいました。

新谷哲:小学校時代はどのようにお過ごしでしたか?

榮章博:体が弱く、劣等感を抱く事が多々ありましたが「努力をすれば、自分にもできる」と感じることのできた2つの成功体験があります。1つ目は、勉強です。私は、成績最下位の生徒でしたが、小学校3年生のときの先生がとても親身にご指導をして下さったので、その期待に応えるために勉強をがんばったところ、トップクラスの成績にまで上り詰めることができました。2つ目は、運動です。足が速い男子は女子にモテるので、いつも羨ましそうに眺めていました。しかし、小学校6年生の時に長距離マラソン大会が開催されるということで、挽回を図ろうと試みた結果、学年5位になることができました。短距離では負けてしまったとしても、持久力を発揮し粘り強く努力していくことが大切だと学びました。この気づきは、その後の成長にも大きく繋がります。

新谷哲:中学校時代はどのようにお過ごしでしたか?

榮章博:中学校時代は、部活もいつの間にか辞めあまりパッとしない生活を送っていました。しかし、進学校である大阪府立北野高等学校にどうしても入りたかったので、小学生時代の成功体験を思い出し挑戦することを決めました。担任の先生からは心配の声もありましたが、なんとか希望の通りの結果を残すことができました。

新谷哲:高校時代はどのようにお過ごしでしたか?

榮章博:高校時代は、進学校でありながら勉強そっちのけで部活動に熱中していました。水泳部に入ったのですが、私は高校からのスタートだったので、以前から水泳をされていた方に比べ泳ぐのが早い方ではありませんでした。しかし、この時も小学生時代の成功体験を思い出し、苦しいだけで誰もやりたがらない長距離競泳の選手として立候補をしたところ、毎回試合に出させて頂けるようになりました。毎日、真っ黒こげになるまでたくさん泳ぎ、非常に楽しかったですね。そのおかげか、高校では身長が20センチも伸びました(笑)。

新谷哲:その後、中央大学法学部に進学をされていますね。

榮章博:実は、高校時代に勉強を全くしてこなかったので、中央大学に入るまでには2浪をしています。もともと理系だったのですが、文系の法律分野の方が社会に出てすぐに役立つだろうと、中央大学法学部を志望校として定め浪人生活をスタートさせました。しかし、どこか逃げていたところがあるのか、浪人中も勉強はせず、ありとあらゆる本を読み耽っていました。新潮文庫、ハヤカワ文庫 SF、司馬遼太郎の著書や、マンガにおいては男性物・女性物問わず読みました。その中でも特に印象深いのは、風と共に去りぬ(Gone with the Wind)で、寝る間も惜しみ泣きながら完徹し、その後は感極まり淀川沿いをフラフラになるまで激走していました(笑)。一見、無駄な時間を過ごしていると感じられる方が多いでしょうが、この感動をする本たちに出合えたことは、後に繋がる貴重な体験だったと感じます。

新谷哲:私も本が好きですので、たいへん共感いたします!大学時代はどのようにお過ごしでしたか?

榮章博:私は、世間知らずの自覚がありましたし、2年間の浪人で鬱屈していたので「もっと社会を覗きたい」と、大学3年生まではバイトばかりしていました。そして、大学4年生から司法試験の勉強を始めます。合否は択一と論文の合計得点で決まるのですが、択一は受かっても論文に太刀打ちできず、最終的には27歳で諦めてしまいました。ただ、思いっきり勉強したので、これも後の仕事でとても活きています。

新谷哲:旧司法試験は合格率が1%~2%台ですので、択一に受かること自体すごいことですね。その後、株式会社大京住宅流通に入社をされています。こちらを選ばれたきっかけはございますか?

榮章博:中央大学法学部の先輩から、「入らないか?」と誘われたことがきっかけです。話を聞いたところ、株式会社大京の新宿支店を事業本部制にし、法人化させ上場を狙うプロジェクトを始めるタイミングだということで、「こんな面白い話は他にない!」と感じ、すぐに入社を決めました。

新谷哲:当時の思い出はございますか?

榮章博:宅地建物取引業免許の取得、会社・組織作りや上場ノウハウなど、多くのことを学ばせて頂きました。また、ここで妻と出会い結婚しているので、本当に感謝しかありません。

新谷哲:その後、1999年に株式会社ランドネットを創業されています。経緯をお話頂けますか?

榮章博:創業のきっかけは2つあります。1つ目は、販売できるレベルのシステムを、自分でも作れると思ったからです。私は、株式会社大京住宅流通で業務フローを作り、システム部でそれをマニュアル化する仕組みを作り、社内で運用できるようにするということをやっていました。ちょうどその時、従来品に比べ革新的だったWindows 95が会社で導入され、「このデスクトップパソコン1台で、携わってきたシステムができてしまうのではないか?」と気づいたのです。当時のホストコンピュータは高価だったので、どうしても小規模企業は大企業に比べ情報を処理する能力が劣ってしまうのですが、今までのノウハウを活かし、効率化を実現するサービスを展開していけば、きっと需要があるだろうと起業を考えるようになりました。2つ目は、母が大病を患ってしまったことです。母を東京に引き取りたかったのですが、当時はその余裕がなく「もっとお金を稼がなければ…」と焦っていました。アイデアはあっても勇気が無かったものですから、この件が無ければ独立はしていなかったかもしれません。「ダメだったらすぐにどこかの会社に入るから」と妻に約束し、恐々と会社を立ち上げました。

新谷哲:設立当初は、システム事業をメインにしていたのですか?

榮章博:不動産会社として、システム提供を開始しました。まず、自分で1か月掛けシステム開発を行いました。なかなか思うように動かなかったので、毎日朝9時から深夜12時まで試行錯誤し、やっとシステムが出来上がったときは本当に嬉しかったです。その後、営業活動を始めたところ数字が上がりだしたので、売買契約書の作成や、住宅設備の仕組みなども1人でこなしていきました。業務効率を上げられる仕組みを自社で活用するだけではなく、他社に提供することで売上まで作れるのですから、もう、毎日がワクワクで楽しくて仕方ありませんでした。全部1人で取り組んでいたので、お酒を飲みながら仕事に没頭するなんてこともありましたし、もともとプラモデルや機械系が好きだったからこそできたのでしょうね。

新谷哲:とてもお仕事を楽しまれていますね。あまり創業のご苦労はなかったのでしょうか?

榮章博:はい。最初から数字も黒字で、素人でもお金を稼げる仕組みが出来ていたので、順調に社員数約30名の規模にまで会社は成長していきました。しかし、創業から10年ほど経ったときに、営業社員10名が辞めてしまい、大変な思いをしました。原因は、私自身が未熟で「人と一緒に仕事をする」ということの意味を真に理解できていなかったことにあります。「自分ができることは相手もできる」という先入観から、できない社員に対して怒れてしまい、戦力になるまで丹精を込めて育てるということが出来ていませんでした。そのことを大いに反省し、徳を積み社員から信頼されるような経営者になろうと心に誓います。そこでさっそく、ある研修に申し込み丸3日間学んだのですが…。なんと言いましょう、少し洗脳じみた部分があり、社員からの賛同も得られなかったため頓挫してしまいました。しかしその翌年、稲盛和夫さんが日本航空(現・日本航空株式会社)の会長に就任されるという記事を読み、盛和塾の存在を知ったところから転機が訪れます。私は、稲盛和夫さんのことをそれまで存じ上げなかったのですが、すごい方なのだろうとすぐに盛和塾へ電話をかけ体験入塾に参加しました。そこで、「なんとか会社の体制を立て直したいのでここに来ました!」と宣言し、私が50歳になる前日の2010年2月18日に入塾することを決めました。

新谷哲:稲盛和夫さんは、京セラや第二電電(現・KDDI株式会社)を創業された素晴らしい実業家ですね。盛和塾では、どのような学びがございましたか?

榮章博:盛和塾は、私に対する教育として効果テキメンでした。その中でも、特に為になった事が2つあります。1つ目は、「感性的な悩みをしない」ということです。私は、会社経営をしていて毎日何らかの不安を抱えていました。それは、問題がある時だけではなく、天気が悪いなどのふとしたことであっても頭をよぎることがあります。自分の気の小ささに嫌気がさすこともありましたが、稲盛和夫さんのような偉大な経営者であっても、感性的な悩みをすることがあるのだと知ったとき、心が軽くなったのです。そこからは、くよくよ悩むのを辞め、理性的な思考を身に付けていけるようになりました。2つ目は、「会社としての目的や行動指針を確立する」ということです。そうして、求人の段階から「こういう会社です」と打ち出し、賛同して頂ける人たちと仕事をすることにしました。会社の目的や目標を共有したうえで集まってくれた社員と言うのは、それに向かい一生懸命に仕事をしてくれます。弊社では毎朝、稲盛和夫さんの著書の輪読会と日経新聞の読み合わせを行うのですが、同じ旗のもと前向きな意見交換ができていると感じます。こうして、盛和塾に入り一生懸命勉強したことを実践していくことで、弊社の離職率は大幅に改善をしました。また、私は今まで経営のアクセルを踏むことを怖がっていたのですが、学びから自信が付き勢いが増したことで、入塾の翌年には業績が年率30%ずつ伸び始めたのです。2022年8月24日に稲盛和夫さんが亡くなられ言葉も出ないほど悲しいですが、教えて頂いたたくさんのことを胸に、更なる前進をして行きたいと感じています。

新谷哲:私も、稲盛和夫さんがお亡くなりになられ大変な衝撃を受けました。「生き方」や「アメーバ経営」など、素晴らしいベストセラー本を多く執筆されているので、ぜひ皆さんにも読んでいただきたいと感じます。その後、株式会社ランドネットは2021年に東京証券取引所JASDAQ(現・東京証券取引所スタンダード)市場に上場をされました。上場を目指されたきっかけはございますか?

榮章博:業績が上がったことで、お付き合いしている銀行から「上場した方がいいのではないか」とアドバイスを頂いたことがきっかけです。前職の株式会社大京住宅流通での上場プロジェクトでは、バブル崩壊により達成ができずとても悔しい思いをしました。そのため、立ち上げた時から「いつかは会社を上場させたい」という思いがあったので、さっそく動き出すことにしました。

新谷哲:上場に向けてのご苦労はございましたか?

榮章博:フラット35(住宅ローン)の不正利用や、かぼちゃの馬車事件といって、不動産仲介会社がサブリース契約で不動産を販売したのにもかかわらず、後に経営破綻をしてオーナーに賃料支払いがなされなかった不正融資疑惑があったことで、不動産業界に逆風が吹きました。そこの対策が少し大変でしたね。とはいえシステムもあり、商品の回転率も2か月を切り業績も同水準で伸び続けていたので、あまり大きな苦労は有りませんでした。

新谷哲:ありがとうございます。もしよろしければ、株式会社ランドネットの事業内容をお教えいただけますか?

榮章博:弊社は、不動産事業を展開しているのですが、特徴としては主に2つあります。1つ目は、不動産に関わる全てのビジネスにお答えできるということです。まず、北海道から沖縄まで、日本全国の不動産を扱っています。また不動産には、売却・購入・投資・賃貸管理・リフォーム(リノベーション)と5つの分野があります。通常であれば、それぞれ異なる知識・情報が必要なため、特化した企業へ個別で相談に行かなければなりませんが、ランドネットでは1つの拠点(支店)に、各プロフェッショナルが集結しているので、ワンストップで対応が可能です。その中でも現在は、買い取った不動産をリフォームし保証をつけ売却する、区分マンションの売買がメインとなっていますが、最近では子育てから離れ広いお家が必要なくなった方々や、空き家なども増えていますので、不動産投資による資産形成のアドバイスや、解体の分野にも注力していこうとしています。2つ目は、最新のテクノロジーを用いた不動産クラウドプラットフォームの構築です。それにより、個人や企業のお客様に対しそれぞれお役立ていただけるサービスを展開しています。また、全国の膨大な不動産情報を手に入れ所有者様にアプローチを掛けさせて頂くことで、売却を検討される方には高値で早期売却を実現し、購入を検討される方にはいい物件を安くご提供させて頂けています。また、クラウドファンディングを用いることにより、誰でも1万円から不動産投資ができるような仕組みを作ったりもしています。今後も、弊社の特徴を生かした事業戦略により不動産テック(不動産業界のIT化)を牽引し、業界を変えるような新たな価値を創出してまいります。

新谷哲:ありがとうございます。ここからは違う質問をさせていただきます。好きなもの、好きなことをお聞きして、「読書、歴史、キックボクシング、ジム、映画鑑賞」とお答えいただきました。水泳の他に、キックボクシングもされているのですね!

榮章博:はい。水泳の他にも、モダンダンス、ランニング、ジムなどいろいろな運動をしてきましたが、年と共にどんどん太りだしてしまったので、流行に乗って2年前からキックボクシングをはじめてみることにしました。週6日でジムに通うほどハマっていて、知人もたくさんできたのでとても楽しいです。プライベートレッスンも受けていて、マススパーリングでの本気の打ち合いはちょっと痛いですが、おかげさまで体重は最高の91キロから75キロまで絞ることが出来ました。私は62歳を超えているので、ここからも70歳、80歳と現役で戦っていけるよう、体力と闘争本能を鍛えていきたいなと思っております。

新谷哲:座右の銘もお聞きして「知行合一、Boys, be ambitious」と2つお答えいただきました。こちらを選ばれた理由はございますか?

榮章博:「知行合一」は、当社の社訓第9条にある「仕事を楽しみ、仕事から学び、即断・即行できる人であれ」に繋がる大切な考えだと思い、上げさせて頂きました。学べることが楽しい。楽しいから学べる。この仕事を楽しむ習慣と、行動力があるからこそ、弊社では考えたことをすぐ形にして、現在のビジネスモデルを確立することが出来たのです。「Boys, be ambitious(少年よ、大志を抱け)」は、もうオッサンですが、大きな夢をもって仕事をしたいとの思いから心に留めている言葉です。海外には、ジェフ・ベゾスやイーロン・マスクなど本当に偉大な方が大勢います。しかし、日本にもソニーやパナソニックやホンダなど日本の高度成長を支えた、素晴らしい企業がたくさんあります。私の事業活動は地道ではありますが、日本の良き時代を思い起こし、ホラではなく日本人として本気で偉大なことをして行きたいといつも思っています。

新谷哲:ありがとうございます。次が最後のご質問です。全国の経営者、これから起業する方に向け、経営者として成功する秘訣をお教えください。

榮章博:私の思う成功の秘訣は「小さく産んで大きく育てる」です。当社では、いきなり大きいことを観念的にやるよりは、できることを小さく始めて、それを改善していくやり方をとっています。だからイーロン・マスクやジェフ・ベゾスになれないのかもしれませんが、ホンダも最初は小さな町工場で自転車用補助エンジンの製造からスタートしていますよね。何も無いところから事業計画書を作り銀行からお金を借りようとするよりも、とりあえず思いついたことやってみて、お金を稼げることを確認しながら広げていけば、ハードルは高くありませんし、大きな失敗も防ぐことが出来ます。

新谷哲:大変参考になるお話でした!榮章博社長、本日はありがとうございました。

編集後記

今回は、株式会社ランドネットの榮章博社長でした。バイタリティに満ち溢れていて、システム構築、盛和塾、キックボクシングなど、なんでも学んでいこうとする姿勢が素晴らしいです。だからこそ、それを活かし高い業績を上げていけるのでしょう。ぜひ皆様も参考に、共に成功社長を目指していきましょう!

榮章博氏
株式会社ランドネット 代表取締役

大阪府出身。1984年中央大学法学部卒業。1987年に株式会社大京流通へと入社し、経営企画、中古マンション営業に従事しながら、業務効率化のためのシステムを独学で開発。そして、1999年に株市会社ランドネットを創業し代表取締役へと就任。不動産とテクノロジーを融合させ、物件の仕入れから、不動産の売買、賃貸管理、リフォーム・リノベーションまでワンストップで行う独自性のある「不動産テック企業」を展開。事業を成長させ、2021年7月に東京証券取引所スタンダード市場上場を果たされました。世界中の不動産を、世界中の人々が自由に売買できる “不動産流通業革新”の実現に向け邁進されています。

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本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、榮章博氏(株式会社ランドネット 代表取締役)の経営者インタビューを取り上げました。

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