本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、鵜飼裕司氏(株式会社FFRI 代表取締役社長)です。(2019年4月 3日 2019年4月10日 配信)
今回は、日本発のサイバーセキュリティをリードする専門家集団、株式会社FFRIの鵜飼裕司社長にお越しいただきました。1973年徳島県生まれ、小学5年生の頃からコンピューターに没頭する、自称オタク少年だったとのこと。徳島大学大学院では情報工学を熱心に学ばれました。卒業後はKodak研究開発センターを経て、2003年に渡米しカリフォルニア州の企業にて研究開発に従事。帰国後、2007年に株式会社FFRIを起業し経営者となりました。コンピューターセキュリティという、現代において不可欠な課題に取り組むことをミッションとし、会社経営に挑む経営者の素晴らしいお話を伺うことができました。座右の銘・経営者として成功する秘訣も、すべての方にご参考にしていただけます。
新谷哲:今回の経営者インタビューは、株式会社FFRIの鵜飼裕司社長です。まずは経歴をご紹介します。1973年徳島県生まれ、Kodak研究開発センターにてデジタルイメージングデバイス研究開発に従事した後、2003年に渡米。eEye Digital Security社に入社。その後、2007年7月にFFRIを起業し経営者となります。2014年9月にはマザーズに上場されています。上場企業の経営者ということで、大変楽しみにしております。本日はよろしくお願いいたします。
鵜飼裕司:よろしくお願いします。
新谷哲:最初のご質問です。ご出身は徳島県ということですが、小学校・中学生時代はどのようにお過ごしになりましたか?
鵜飼裕司:小学校5年生からパソコンを触り始めていましたので、オタク少年みたいな感じです。
新谷哲:当時のパソコンだと、98シリーズを触っていたのですか?
鵜飼裕司:そんなに高級なものでなくMSXというパソコンです。98は夢に見るようなパソコンでした。
新谷哲:当時の日本でパソコンを買ったということは、裕福な家庭だったのですか?
鵜飼裕司:いわゆる普通の家庭です。親がたまたま電気屋で電化製品の修理をしていました。それで親もパソコンに興味が買ってくれたのだと思います。
新谷哲:その後、高校にお進みになっていますが、徳島県の高校ですか?
鵜飼裕司:普通の高等学校ではなくて、香川県の高等専門学校に通いました。徳島県でなく香川県に行った理由は、情報工学科というコンピューター専門学科が徳島県になかったからです。
新谷哲:では小学5年生の頃から、現在の株式会社FFRIが経営する情報系に進むことを決めていたのですか?
鵜飼裕司:そうですね。中学1年ぐらいの時には漠然とですが、「コンピューターに関わる情報系の仕事がしたい」と思っていました。
新谷哲:でも高等専門学校に進まれたということは、勉強もできたのですか?
鵜飼裕司:文系が全然駄目だったので、苦労しました。
新谷哲:高等専門学校の後は、大学にお進みになられたのですか?
鵜飼裕司:そうですね、はい。
新谷哲:大学はどちらのほうでいらっしゃったのですか?
鵜飼裕司:徳島大学です。知能情報工学科という学科で、大学3年生として編入しました。
新谷哲:大学3年生で編入できたのは、高等専門学校を卒業したからですか?
鵜飼裕司:そうです。高等専門学校に5年間行き、編入試験を受かれば大学3年生に編入できます。
新谷哲:大学時代はどのようにお過ごしになりましたか?
鵜飼裕司:大学時代は、小学校・中学校時代と違って真面目に勉強をしました。アルバイトもプログラミングの仕事で、情報系の専門教育を受けながら、情報系の仕事もしていた大学時代です。
新谷哲:卒業後は、Kodak研究開発センターにご就職されていますが、こちらを選ばれた理由はございますか?
鵜飼裕司:大学院に進んで、サイバーセキュリティーに興味を持ったのですが、「研究開発をやりたい」とも思っていました。日本にもサイバーセキュリティーの会社はあるのですが、研究開発をやっている訳ではなかったのです。それで、デジタルイメージングの研究開発をしているKodak研究開発センターに入りました。
新谷哲:Kodak研究開発センターには、何年ほどお勤めになったのですか?
鵜飼裕司:約3年ぐらいですね。
新谷哲:3年で辞められた理由はございますか?
鵜飼裕司:研究開発の会社に勤めましたが、「やっぱりセキュリティーの会社に勤めたい」という思いが強かったのです。サイバーセキュリティービジネスの業界は、Kodak研究開発センターに就職したころから急速に大きくなり始めていました。その関係で、いくつかの海外のベンチャー企業から「うちに来ないか?」とオファーを貰っていたのです。しかし、入ったばかりだったこと、海外の会社なので言葉が不安だったこともあり、3年ぐらい悩みました。最後には「サイバーセキュリティーの分野に行きたい」と思ったので、オファーのあったアメリカのベンチャー企業に就職しました。
新谷哲:アメリカの会社に勤められてから、経営者として勉強になったこと、どのようにお過ごしになったかなどをお教えいただけますか?
鵜飼裕司:一番は、念願のサイバーセキュリティーの研究開発ができたことです。2003年には渡米したのですが、日本にはサイバーセキュリティーの研究開発をしている会社がありませんでした。また就職した会社では、世界中から優秀なサイバーセキュリティーエンジニア、いわゆるホワイトハッカーと呼ばれる人がたくさん集まっていました。まさに本当にトップレベルのエンジニアがたくさんいる環境で、切磋琢磨しながら仕事ができたこと。この環境がとても刺激的で、非常に勉強になりました。
新谷哲:2007年に起業して経営者となられますが、経営者になろうと思われたきっかけはございますか?
鵜飼裕司:アメリカの企業は、エンジニアとしては刺激的で、ものすごく良い環境でした。一方で、アメリカから日本を見ていると、アメリカのサイバーセキュリティー技術を輸入して使う現状は変わっていませんでした。「この現状を放っておくのは良くない」と思ったことが、起業して経営者になったきっかけです。サイバーセキュリティー技術の源流を作るアメリカ、それを使う諸外国、という立ち位置が続いているのでアメリカの会社は非常に強いです。ビジネスの観点で見ると、0を1にした人達は大きな利益を得られますので、「サイバーセキュリティー技術を作る工程のない日本は、産業的な意味合いでも良くない。日本でサイバーセキュリティー技術を作る環境にしたい」また、サイバーセキュリティー業界の話として、「日本に研究開発能力がない状態で、サイバーセキュリティー上の大きな問題が起きたら独自に解決できない」という危機感もありました。
新谷哲:なるほど。7年後にはマザーズに上場していますが、起業当初から、上場を視野に入れて経営をしていたのですか?
鵜飼裕司:上場を目指して経営していました。サイバーセキュリティーの技術を研究開発していくことも大事ですが、信頼される会社にもならなければいけません。信頼される強い会社になり、事業を大きく伸ばしていくためには、上場すべきだと起業当初から思い経営をしていました。
新谷哲:上場の苦労などはあったのですか?
鵜飼裕司:上場の苦労というよりも、事業を伸ばしていく経営をすることが大変でした。良いものを研究開発するだけでは、事業経営は伸びていきません。最初は、「何をすれば事業が伸びていく経営ができるのか?」が分からないことが多く大変でした。経営パートナーやお客様に支えられたから上場を果たしたと思います。
新谷哲:なるほど。よろしければ、現在の株式会社FFRIが経営されている事業をお教えいただけますか?
鵜飼裕司:弊社はサイバーセキュリティーの研究開発に特化して経営している企業です。日本のテクノロジーの多くは、海外に依存しています。海外で作られた基礎技術や製品を日本に輸入して、日本の中で展開しています。弊社は、その輸入されている技術の源流を作ることに特化をして経営している企業です。現在の主力は、サイバーセキュリティーの中でも深刻な問題になっている、標的型サイバー攻撃などからコンピューターを守る製品を販売する事業になります。
新谷哲:ここから全く違うご質問をいたします。好きなもの・好きなことをお聞きしましたら「バンド活動」とお答えいただきました。バンド活動は、公演をされているということでしょうか?
鵜飼裕司:たまにライブをやったりしますが、最近は時間がなかなか取れないので1人で演奏していることが多いです。
新谷哲:座右の銘もお聞きして、「In the middle of difficulty,lies opportunity」とお答えいただきました。これはどういった意味でしょうか?
鵜飼裕司:「ものすごく苦労する大変な状況の中で、初めて新しい機会が見つかる」という意味です。何事もそうだと思いますが、「非常に困難な状況でどう判断するのか?」が、ビジネスだけでなく人生にとても大事です。常にこの座右の銘を胸に秘めて、「困難な状況の中にチャンスがある」と自分を奮い立たせています。
新谷哲:この言葉を選ばれた理由はございますか?
鵜飼裕司:事業でも人生でも、生きていく上でいろんな困難があります。困難に遭遇しても、倒れずに上を向いて進みたいと思い、座右の銘に選びました。
新谷哲:素晴らしいですね。次が最後のご質問です。全国の経営者、これから起業する方に向けて、経営者として成功する秘訣・方法をお教え下さい。
鵜飼裕司:経営者として成功する秘訣・方法は「誠実であること」です。嘘をついたり、人を騙すことをすれば、必ず自分達に跳ね返ってきますので、誠実であることが重要です。また先程の座右の銘じゃないですが、困難に陥るということは、上手く行き続ける訳がないということです。困難に陥った時にいかに前を向いていけるかも、非常に重要だと思います。
新谷哲:大変勉強になるお話をいただきありがとうございます。鵜飼裕司社長、本日はどうもありがとうございました。
鵜飼裕司:どうもありがとうございました。
編集後記
新谷哲:鵜飼裕司社長、頭脳明晰で理路整然とされて「私も鵜飼裕司社長のようになりたかった」と感じました。経営者として成功する秘訣では誠実とおっしゃっていましたが、それを体現されている経営者です。本当に「鵜飼裕司社長のようになりたい」と感じるくらい、素晴らしい経営者でした。私も誠実に生きたいと思います。
鵜飼裕司氏
株式会社FFRI 代表取締役社長
1973年2月、徳島県生まれ。1993年3月、詫間電波工業高等専門学校卒業後、徳島大学工学部知能情報工学科に編入、2000年3月、同大大学院工学研究科博士課程修了。博士(工学)。Kodak研究開発センターにてデジタルイメージングデバイスの研究開発に従事した後、03年に渡米。eEye Digital Security社に入社。セキュリティー脆弱性分析や脆弱性診断技術、組み込みシステムのセキュリティー脅威分析等に関する研究開発に従事。2007年7月、セキュリティーコア技術に関する研究、コンサルティングサービス、セキュリティー関連プロダクトの開発・販売を主事業とする株式会社FFRIを設立する。独立行政法人情報処理推進機構非常勤研究員のほか、多数の政府関係プロジェクトの委員、オブザーバーを歴任。第13回「情報セキュリティ文化賞」受賞。米国BlackHat Conferenceの審査員も務める。
※本インタビューへの出演をご希望の方はこちらよりご応募ください。
本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、鵜飼裕司氏(株式会社FFRI 代表取締役社長)の経営者インタビューを取り上げました。
『社長の孤独力』抜粋版(PDF29ページ)
無料プレゼント中!
『社長の孤独力』(新谷哲/著) の【抜粋版】を無料プレゼントしております!
71の課題の中から「資金・人材・売上・採用・後継者」の5つを抜粋いたしました。銀行からお金が借りれない、社員がすぐに辞めてしまう、売上を伸ばしたい、など、具体的なお悩みの解決策が掴めます。ぜひご覧ください。
無料プレゼントの詳細はこちら