本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、稲生奈穂子氏(株式会社巴工務店 代表取締役)です。(2019年8月 7日 2019年8月14日 配信)
今回は、株式会社巴工務店の稲生奈穂子社長にお越しいただきました。短大卒業後、東京電力に就職。入社式で「歯車の1つになって働いてください」という言葉に反発し、退職。輸入雑貨、アロマ店を経験し、工務店の経営者となられるという経歴をお持ちの経営者です。座右の銘で「一期一会」と掲げるように、人の縁を大切にしているお話しは、多くの経営者様に大変参考になるかと存じます。ぜひお読みください!
新谷哲:今回の経営者インタビューは、株式会社巴工務店の稲生奈穂子社長です。まずは経歴をご紹介します。東京都ご出身ですが、お父様が転勤族だったので、高松、福岡、東京、仙台等々、転々と過ごされました。高校は都立の駒場高校に進学。その後大学に進学し、東京電力に就職。東京電力を退職後は、輸入雑貨の会社にご入社。その後ご結婚をされ、アロマのお店を開き、株式会社巴工務店の代表取締役に就任するという、大変、変わった経歴をお持ちの経営者です。稲生奈穂子社長、よろしくお願いいたします。
稲生奈穂子:よろしくお願いいたします。
新谷哲:最初のご質問なのです。転勤族だったということですが、小学校・中学校時代はどのようにお過ごしになりましたか?
稲生奈穂子:高松の小学校に入学し、小学3年生の1学期まで高松の小学校に通いました。その次は福岡の小学校に転校し、小学5年生の1学期まで過ごします。小学5年生の2学期から東京に戻ってきましたので、小学校を3回変わっています。転勤で大変だったのは方言です。方言が分かるようになるまで1週間ぐらいかかるので、分かるまではじーっとして大人しくしています。クラスで方言を喋ると一員として受け入れてもらえました。しかし家で方言を喋るのは恥ずかしいので、家では標準語、学校の中では方言を使い分けるバイリンガルでした(笑)。
新谷哲:中学時代も転勤を繰り返したのですか?
稲生奈穂子:転勤はありましたが、高校受験があるので父だけが単身で行きました。
新谷哲:では、中学校は東京のほうで過ごされたのですね。中学時代はどんなお嬢様でしたか?
稲生奈穂子:お嬢様ですか(笑)。中学時代は、そんなに大人しくもなく、でも目立つ訳でもなく、普通だったと思います。
新谷哲:その後、都立の駒場高校に進学をされますが、選ばれた理由はございますか?
稲生奈穂子:駒場高校を選んだ理由は、都立の中で唯一セーラー服だったからです。セーラー服を着たいと思い、駒場高校を選びました。
新谷哲:高校時代はどのように過ごされたのですか?
稲生奈穂子:高校時代はちょっと挫折を味わいました。駒場高校は偏差値が高く、頭良いのです。私が入学できたのは、真面目だったので内申点が取れたという理由なので、本当に頭が良いわけではなかったのです。周りは頭が良いので、私が分からないところもパパッと理解していくので、どんどん勉強が大嫌いになりました。ただ3年間クラス変えがなかったので、クラスメイトとの仲はすごく良くなりました。
新谷哲:高校卒業後、短大に進学をされますがどのようにお過ごしになりましたか?
稲生奈穂子:高校で勉強が嫌いになってしまったので、軟式テニス部に入って、半分遊んでいるような感じで楽しく過ごしていました。私の時代は女子大生ブームだったので、どこに行っても優遇されました。ディスコにもタダで入れたりして、本当に楽しい学生生活を送っていました。
新谷哲:短大卒業後、東京電力に就職されますが、選ばれた理由はございますか?
稲生奈穂子:父の知り合いで東京ガスに勤めている方がおり、その方から「東京ガスを受けてみない?」と勧められたことがきっかけです。東京ガスに入ろうとしたのですが、その年に採用がありませんでした。そこで「東京ガスがないなら、東京電力を受けよう。仕事は電通みたいなことをするのかな?」と選びました(笑)。当時は本当に考えていなかったです(笑)。
新谷哲:今のお話聞いていると、「それでも社長できるんだ」と若い方が勇気を持てたかもしれませんね(笑)。事前のご質問で、東京電力に入社した初日に退職を決意した、とお答えいただきましたが、何があったのですか?
稲生奈穂子:入社初日に、社長から新入社員に向けてお話しがあり「どうか皆さん、今日から東京電力の社員として、歯車の1つになってしっかり働いてください」と言われたのです。皆、うんと頷いていたんですが、私はそれを聞いた瞬間に「歯車の1つなんて冗談じゃない、嫌だ。この会社を辞めよう」と思いました。
新谷哲:そこが社長の素質なのかもしれませんね。東京電力には2年半お勤めになったということですが、すぐに退職しなかった理由はございますか?
稲生奈穂子:やはり入った手前もありますし、40人ほどいた同期との仲がすごい良くて楽しかったことも理由です。また女性をすごく大事にしてくれました。残業があるときは「今日残業してもらってもいいかな?」という感じで指示されたり、銀座の高級料亭や銀座のクラブのような普通だったら入れない場所に連れて行っていただきました。そのように居心地が良い会社だったので、2年半勤めました。
新谷哲:辞めるきっかけはございますか?
稲生奈穂子:辞めるきっかけは、ちょっと……はい、ありましたね……。
新谷哲:なるほど。ちょっと聞かないほうがよろしいみたいな感じですよね(笑)。
稲生奈穂子:そうですね(笑)。
新谷哲:東京電力を退職後、輸入雑貨を扱っている会社にバイトに入られていますが、こちらを選ばれた理由をお教えいただけますか?
稲生奈穂子:輸入雑貨の会社に入る前に、プロモーションビデオとか撮るアルバイトをしていました。そこで知り合った社長から「うちの会社にアルバイトで来てよ」と、誘われたことがきっかけです。
新谷哲:どのようなお仕事をされたのですか?
稲生奈穂子:営業です。未経験だったので何をやるか分からなかったのですが、社長に西武デパートのバイヤーのところに連れて行かれて、「うちの営業で、営業のプロだから」と紹介されました(笑)。私が営業のプロだと思ったバイヤーからは「こういう商品構成でこういうのを展開したらどうでしょうか?」と意見を求められました。営業のことは全く分からないのですが、自分が良いと思うものを「これは良いと思います。これはあまり良くないと思います」という感じで、偉そうに言っていました(笑)。
新谷哲:なるほど(笑)。その後ご結婚され、お子様ができてからはしばらく専業主婦をされたのですか?
稲生奈穂子:そうです。
新谷哲:専業主婦は、何年ぐらい続けられましたか?
稲生奈穂子:専業主婦が12年ぐらいです。
新谷哲:その後、スポーツアロマセラピストの資格を取得され、愛知県の半田でアロマセラピーの自宅サロンを開かれますが、なぜアロマサロンを経営しようと思ったのですか?
稲生奈穂子:ここが私の人生の転機でした。夫は「愛知県に戻りたい」とずっと言い、私は「愛知県には行きたくない」と言っていました。理由として、私は子供の頃、転勤続きだったので自分の地元というのがなかったので、子ども達には地元というものを作ってあげたいと思っていたからです。一度は「離婚しようかな?」と思ったのですが、娘が「バラバラに住んだら家族じゃなくなる」と言われて納得したので、愛知県に移住します。その時に「愛知県に行くのなら何かしよう」と思い、「2002年のワールドカップに向けてスポーツアロマセラピストを養成します」という新聞記事が目に入ったのでアロマセラピストの勉強を始めました。
新谷哲:勉強をして資格を取られたのは良いのですが、自宅でサロンまで開くのは普通ではないと思います。経営することに怖さは感じなかったのですか?
稲生奈穂子:そうですね。経営せずにどこか勤めても、アロマセラピーはエステと一緒にされてしまうことがある時代でした。私がやりたかったものもケアで、いわゆるエステサロンではないと思っていました。また下の子が小学校2年生だったので、経営すれば私が勤めに出なくてもいいなという思いもあって、自宅で経営しました。
新谷哲:結構、儲かったものなのですか?
稲生奈穂子:そうですね、主婦が1カ月パートで稼ぐぐらいは1週間ぐらいで稼げていました。
新谷哲:それは儲かっていますね(笑)。その後、東京に戻って、鍼灸の先生と一緒に鍼とアロマを融合した治療に専念されますが、こちらは事業として経営したのですか?
稲生奈穂子:事業経営でしたが、採算が取れなかったのでほとんど趣味でした。
新谷哲:その後、現在の巴工務店の経営者だったおば様より「経理のアルバイトをしてくれない?」と声がかかってアルバイトで入社されますが、それは二足の草鞋ですか?
稲生奈穂子:そうです。東京のアロマサロンは週に2日減らして、巴工務店を週に3日でしたので、完全に二足の草鞋です。
新谷哲:入社から約2年で、巴工務店の代表取締役を引き継ぎ経営者となりますが、何かあったのですか?
稲生奈穂子:これは経営者だったおばの陰謀です(笑)。二足の草鞋を履いていたのですが、アロマで結果が出せなくなっていました。自分の中で「中途半端な気持ちでお客様に向き合うのは良くない」と思っていました。また巴工務店の方では、私なりに「これもっとこうしたほうが良いよね?ああしたほうが良いよね?」と、会社を経営する楽しくなってきていました。初めは、5:5だったの配分が6:4になって、7:3になっていきます。「アロマではお客様からお金を頂くことはできない」と思っていたところで、おばから「社長になって」と話をされました。断ったら、「分かった。あなたが社長やらないなら会社潰すわよ」と言われました。会社を潰されたら生きていけないという状況でしたので、「私が社長を引き継ぎます。経営者になります」と返事をしました。
新谷哲:株式会社巴工務店では現在、どのような事業を経営しているのかお教えいただけますか?
稲生奈穂子:工務店ですので、家を作る、直す、壊すという全てやっております。65年間経営をしていますので、昔からのお客様もいらっしゃいます。だいたい企業様が7割、個人のお客様が3割で、今は新築というよりもリフォームが中心となります。うちが得意とするものは古い戸建ての家の改修です。私は古い建物が好きなので、壊して立て替えて新築にするよりは、使えるものは長く使っていきたいと考えているのもあり、住宅の部分でお客様の夢や希望を形にするお手伝いをしています。
新谷哲:ここからは、違う質問をいたします。事前に「好きなもの・好きなこと」をお聞きしましたら、いっぱいお答えいただきました(笑)。全部は読みませんが、その中で注目したのは「インコ・文鳥」。インコ・文鳥が好きというのは、何か理由があられるのですか?
稲生奈穂子:ペットで犬や猫を飼っている方は多いと思うのですが、鳥もすごい自分を主張します。会話ができますし、こちらの気持ちをものすごく理解します。インコの動画とかいっぱいあり、本当にインコはすごいです。
新谷哲:それでお好きになったのですか?
稲生奈穂子:子どもの時、動物好きだったのですが、転勤族だったので犬や猫は飼ってもらえませんでした。でも鳥は持って歩けるので飼ってもらいました。小学校1年生の時からずっと飼っていたことも理由だと思います。
新谷哲:初めて聞くお話しなので、ちょっと精神的に動揺しています(笑)。座右の銘もお聞きして、「一期一会」「死ぬこと以外はかすり傷」とお答えいただきました。どちらも大変素晴らしい座右の銘ですが、選ばれた理由はございますか?
稲生奈穂子:「一期一会」を選んだ理由は、株式会社巴工務店がものすごく人のご縁に恵まれている会社だと感じているからです。「巴工務店さんは、本当に困った時、ピンチの時に助けてくれる人が出てくる不思議な会社ですよね」とよく言われます。それと私自身も「本当に人に恵まれている。人のご縁がすごく大事だ」と常日頃から思っているので、「一期一会」を選びました。
新谷哲:大変素晴らしいお答えで、本当にありがとうございます。次が最後のご質問になります。全国の経営者様、これから起業する方に向けて、経営者として成功する秘訣をお教え下さい。
稲生奈穂子:経営者として成功する秘訣は、やっぱり諦めないことです。社長がマイナス思考になって、「やっぱり駄目かな?」と思うことはいっぱいありますが、それを出さずに諦めないこと大切です。また「起きたことの全ては自分に責任がある」と思うことも成功する秘訣だと思います。極端な話ですが、私は尊敬している人から「戦争がどこかで起きたことも自分が悪いと思いなさい」と言われたことがあります。その理由は、他人の所為にすると負の連鎖が続くからです。例え、朝に夫婦喧嘩をして会社に行った夫がいるとします。会社で妻が悪いとイライラを当たり散らすと、当たられた人はまた誰かに当たって、となります。だから責任は全部自分。悪いことが起きたら自分が悪い、自分の力が足りないと思うことにしています。実際そう思わない時もいっぱいありますけどね(笑)。
新谷哲:諦めないことと自己責任、素晴らしいお話でございました。私も真似したいと思っております。稲生奈穂子社長、本日はどうもありがとうございました。
稲生奈穂子:ありがとうございました。
編集後記
稲生奈穂子社長とは仲が良いのですが、知らないことがいっぱい出てきました。決断のほぼ全てを感覚でされ上手くいっている、センスのある経営者です。特に最後の「責任は全て我にあり」、その通りだと思います。経営者としての姿勢という意味でも、尊敬できる経営者です。
稲生奈穂子氏
株式会社巴工務店 代表取締役
大学卒業後、東京電力に就職。その後、輸入雑貨、アロマサロンを経て、株式会社巴工務店の代表取締役に就任。
本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、稲生奈穂子氏(株式会社巴工務店 代表取締役)の経営者インタビューを取り上げました。
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本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、稲生奈穂子氏(株式会社巴工務店 代表取締役)の経営者インタビューを取り上げました。
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