成功経営者インタビュー

経営者インタビュー 株式会社チームスピリット 代表取締役社長 荻島浩司氏

本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、荻島浩司氏(株式会社チームスピリット 代表取締役社長)です。(2019年11月27日  2019年12月 4日 配信)

デザインの専門学校を卒業後、デザイナー事務所に所属。その翌年、「コンピューターでデザインができたらもっと楽しいことができそうだ」と考えプログラマーに転職。1996年にチームスピリットの前身となる会社を起業し、2018年8年にマザーズに上場されました。成功する経営者の秘訣で語られた「光速で失敗して光速で立ち直る」を実践する荻島浩司社長のお話を、経営者インタビューでぜひお読みください。

新谷哲:今回の経営者インタビューは、株式会社チームスピリットの荻島浩司社長です。まずは経歴をご紹介させていただきます。1960年生まれ、埼玉県出身で、デザインの専門学校を卒業後、デザイナーとしてデザイン事務所に就職。コンピューターでデザインができたらもっと楽しいことができそうだと考え、翌年プログラマーとしてソフトウェアハウスに転職。その後、有限会社デジタルコーストを設立。今のチームスピリット様の前身となる会社でございます。その後、2018年8月にマザーズ上場をされた、上場企業の社長でいらっしゃいます。本日はよろしくお願い申し上げます。

荻島浩司:よろしくお願いいたします。

新谷哲:最初のご質問です。ご出身は埼玉ということですが、小学校・中学校時代はどのようにお過ごしになられましたか?

荻島浩司:特に目立つこともなく、勉強ができるとか活発とかいうことのない、非常に平凡な小学校・中学校時代でした。

新谷哲:上場企業の経営者としては珍しい小学校・中学校時代だと思いますが、平凡だったのですか?

荻島浩司:そうですね。あの頃は「何かをやりたい」と意識をして取り組んだという記憶は、あまりありませんでした。

新谷哲:そうですか。高校も埼玉ですか?

荻島浩司:そうです。

新谷哲:高校時代はどのようにお過ごしになられましたか?

荻島浩司:高校時代は帰宅部で、仲間と音楽活動をやっていました。音楽は中学時代からの趣味で、他の趣味としては絵を描いたりしています。

新谷哲:音楽活動というと、ロッカーのようなイメージですか?

荻島浩司:個人的にはロッカーだと思っています(笑)。

新谷哲:なるほど(笑)。今のお仕事に多少繋がるかもしれませんが、荻島浩司社長はアーティスト系なのですか?

荻島浩司:そうですね。高校卒業後はデザイナーになるという道を選んだので、その頃にはもう、感覚的にはアーティスト系だったと思います。

新谷哲:高校卒業後はデザインの専門学校に行かれていますが、選ばれた理由は、やはりデザインの仕事に憧れてという形でしょうか?

荻島浩司:はい。将来どんな職業に就きたいとか、何がしたいかを考えていない人でも、高校卒業の時期になれば、進路を決めなければなりません。私の仲間は経済学部とか経営学部に進学して「皆そんなに経営とか経済がやりたかったのかな」とびっくりしました。私も何か進路を選ばないといけない中で、趣味で絵を描いていたのでデザインの方向に進もうと思い、デザインの専門学校に進学しました。

新谷哲:なるほど。専門学校時代の思い出はございますか?

荻島浩司:強烈に覚えているのは、初日に先生から「あなた達はデザイナーになりたいということで学校に来ているんだろうけど、ほとんどの人はデザイナーにはなれません。デザイナーになれなくても、デザインを学べば良い消費者になると思います」と言われたことです。その時は「この野郎」と思いましたが、結果的にはその通りになりました。

新谷哲:専門学校卒業後は、デザイナーとしてデザイン会社にご就職されていますが、所属した時期は短いのですか?

荻島浩司:そうです。

新谷哲:なぜ、早くお辞めになられたのですか?

荻島浩司:デザインを仕事にするほどの才能がないと気付いたからです。プロフェッショナルになれるほどのデザインの力なかったので、早々に見切りをつけました。

新谷哲:その後、転職先としてコンピューター系のソフトハウスに入社されています。現在の事業にも繋がっていると思いますが、こちらを選ばれた理由はございますか?

荻島浩司:デザインには自信を持っていました。しかし、世の中に出て周りに比べたら「とてもじゃないけど歯が立たない」という挫折を味わいました。そういう状況で「今まで付き合ってきたものがゼロに変わったのならば、全く新しい道を選びたい」と思ったことが理由の1つです。もう1つの理由は、「コンピューターを使ってデザインをやりたい」と思ったことです。当時はちょうど、コンピューターグラフィックスが流行ってきて時代でした。例えばNHKのニュース番組に時計ありますよね。昔は本物の時計を使っていたのですが、それがコンピューターグラフィックスに変わったりした頃でした。そこで、IT系の企業を探して入社しました。

新谷哲:このときに入社された会社で取締役にまでなっていらっしゃいますが、会社での思い出などはございますか?

荻島浩司:そうですね。未経験のプログラマーとして採用されたので、かなり残業をしました。残業が183時間という記録もありましたが、それでも2番目でした。その後、プログラマーから営業に異動しました。それまでは受託をして開発をする会社だったのですが、ある時に自社製品を作りました。世の中ではダウンサイジングの流れがあり、その流れに乗って自社製品がそれなりに売れたので、自社商品を売る事業部が出来ました。

新谷哲:その自社商品は、パッケージソフトのようなイメージですか?

荻島浩司:そうですね。

新谷哲:では、早い時期からパッケージソフトの開発に取り組まれた企業だったのですね。

荻島浩司:そうですね。いわゆるスタートアップ企業でした。ITの中心がメインフレームだった時代でしたが、ダウンサイジングしたパソコンも出ていました。自社製品を販売するにはマーケティングが非常に重要になりますが、そこで今までやってきたデザインが活きてきました。

新谷哲:その企業は取締役の時にお辞めになられ、別の企業の社長に就かれていますが、お辞めになった理由をお教えいただけますか?

荻島浩司:辞めたというよりも、もともと独立することを決めていました。実家が美容院を経営していたので、基本的にサラリーマンになるつもりはありませんでした。デザイナーになったのもそのためです。プログラマーとして入社をしましたが、「30歳までには独立して経営者になる」と決めていました。結果的に延びて、36歳の時に独立して経営者になります。

新谷哲:なるほど。独立をして最初に起業したのは有限会社ネットウェイでよろしいでしょうか?

荻島浩司:はい。

新谷哲:事前にいただいているご経歴が合っていれば、有限会社ネットウェイは1ヶ月ほどで終わっているのですが、どのようなことが起こったのですか?

荻島浩司:経営大学院があると思いますが、その前身の「グロービス」という、ビジネススクールで知り合った4人の仲間と立ち上げました。1年近い準備期間があったのですが、経営方針が決まらずに起業をしました。皆の方向性がバラバラのままだったので、結果的に分解を、というよりは自分が出たという感じですね。4人の中の1人は、会社名は出せませんが立派な企業で相当のポジションにいますし、別の1人は上場したフィードフォースの塚田社長です。そんなメンバーが揃ったので、「それは普通、まとまらないだろう」という感じでした。

新谷哲:なるほど。優秀な方々が4人も集まったので、それぞれが独立独歩で別の道に進んで、という感じですね

荻島浩司:はい、そうですね。

新谷哲:その後、株式会社チームスピリットの前身にあたる、有限会社デジタルコーストを起業して経営者となられます。ここを起業する時は、「こんな事業を経営しよう!」という構想はお持ちでしたか?

荻島浩司:独立して経営者になった時は、インターネットを活用したマーケティングのビジネスが流行りだした頃でしたので、「インターネットを使ったマーケティングを事業の中心にして経営をしよう」と考えていました。ただ、そんな簡単にはいきません。お付き合いのあった東芝の方に協力してもらい、「自分で自分を東芝に派遣する」という形で、東芝の中でプロダクトを作るという仕事になりました。

新谷哲:では、エンジニア派遣やSE派遣という感じになったのですね。

荻島浩司:そうですね。いわゆるSEから入って、その次はコンサルティング、プレセールス、最終的にはマーケティング全般までやるようになりました。

新谷哲:今の株式会社チームスピリットの形が作られたのは、何年前ぐらいになるのですか?

荻島浩司: 2011年からだと思います。

新谷哲:では、その頃から事業の方向性を変えたということですか?

荻島浩司:そうですね。

新谷哲:それまではずっと、SE派遣をやっていたのですか?

荻島浩司:はい。東芝の中に入って、彼らの自社プロダクトを作ってマーケティング活動をするという事業でした。その中で自分の会社にもエンジニアを雇って、受託開発の事業の経営もしており、2009年の頃から自社製品を作る活動もしています。そして2011年には受託の仕事を一切止めて、プロダクトだけにシフトしています。

新谷哲:なるほど。そのプロダクトにシフトしていくのは、戦略上の理由があったからですか?

荻島浩司:2009年からプロダクトにシフトしていった1番大きな理由は、クラウドというものが出てきたからです。その頃まではASPと言って、インターネットでサービスを提供するには自分達のサーバーが必要で、それなりの初期投資も必要でした。しかし2009年ぐらいからクラウドという形が出てきて、レベニューシェアができるようなモデルに変わってきます。このタイミングで「自社プロダクトを作ってビジネスをしたい」と考えて、プロダクトにシフトしていきます。

新谷哲:なるほど。2018年8月は東証マザーズ上場されておりますが、上場は最初から狙っていたのですか?

荻島浩司:2011年3月、ちょうど震災のあったタイミングですが、チームスピリットのベータバージョンをリリースしています。その年の10月末にファイナンスをしてアメリカのセールスフォースという会社から「シリーズA」の出資を受け、そのタイミングでは、もう上場を目標にしていました。

新谷哲:そういたしますと、7年ぐらいでの上場ですね。大変順調に上場した企業だと思うのですが、上場の苦労はございましたか?

荻島浩司:上場自体の苦労というのは、それほどなかったと思います。多くの方は内部統制の問題や、売上がターゲットに到達するかという部分で苦労されると思います。我々はいわゆるサブスクリプションのモデルなので、売上とか利益はあまりブレません。利益が出るまでに時間がかかるモデルですが、積み重ね型なのでブレないという利点があります。内部統制という観点に関しては、我々のプロダクトが「勤怠管理で三六協定を守る」や「未払い残業をしない」とか、「ワークフローがあって決済権限が全部守れる」というもので、自分達がそれを使用していたので苦労することはありませんでした。

新谷哲:なるほど。そうしましたら、株式会社チームスピリットの事業内容についてお教えいただけますでしょうか

荻島浩司:今、申し上げたように、サブスクリプションのビジネスモデルです。簡単に言えば、インターネット上のシステムをサービスで提供をしています。サービスは「勤怠管理、就業管理、経費精算、工数管理、電子稟議、SNS、カレンダー」などを一体にしたようなサービスを提供しています。工数管理というのは、働いている時間の中で「どの作業を何時間やったか」を計算し、結果的には原価管理に繋げるものです。勤怠管理や経費精算の製品は多くありますが、これら1つにするという形でサービスを提供させていただいています。また今は、働き方改革という波があり、これから先、DX(デジタルトランスフォーメーション)レポートの「2025年の崖」というものがあります。つまり、基幹系システムを置き換える時期に、人材不足が起きています。その時に、我々の製品を標準製品として置き換えて、プラグインで使っていただけるようなサービスを展開しています。

新谷哲:ありがとうございます。ここからは違う質問をいたします。事前に「好きなもの・好きなこと」をお答えいただきましたが、私が大変注目したのが「マーケティング戦略を考えることが趣味」です。お仕事好きというか、マーケティング戦略がお好きということは、営業も結構好きと思います。なぜ、これらがお好きなのか、お教えいただけますか?

荻島浩司:最初の話に戻りますが、私は絵を描くとか、デザインが好きだと思っていました。しかしよく考えてみると、「絵やデザインが好きなのではなく、マーケティングが好きだ」ということに気がつきました。マーケティングというのは、別に絵を描くという話ではなくて、1つはコンセプトの将来を見て作るということ。もう1つは、それを具体化していくことです。製品で例えますが、マーケティングの公式に「単価×数量×購入回数」というのがあります。他の会社でも苦労されると思うのですが、高額製品だと1回しか売れないですし、値段を安くても何回も買ってもらえるかは分かりません。そのような商品を最適に販売できる方法はないかを考えて、今のサブスクリプションのモデルに行き着きました。要するに、大企業が使うシステムよりも優れているシステムを、「1人当たり何百円」という単位で売ることにしました。これによって何十万人という人が使ってくれて、月単位、年単位で継続して使ってもらえるというモデルです。このようなことを考えていくのが好きで、実際にハマった時に「これはやったな」と密かに考えるのが趣味です。

新谷哲:大変素晴らしい趣味です。やはり上場企業の経営者はちょっと違う、と感じました。次に座右の銘もお聞きして、「勇気、命の使い道」とお答えいただきました。これも大変お聞きしたいのですが、「命の使い道」を選ばれた理由や、どのような意味なのかをお教えいただけますか?

荻島浩司:経営者の方や、経営者を目指されている方には「当然のこと」と感じているかもしれませんが、やはり経営は簡単ではありません。色々なところで意思決定をしなければなりませんし、何よりも1人でリスクを背負わなければいけません。そのリスクが大きければ大きいほど、結果もそれに近づいていきますが、そのためには勇気を持って取り組まなければいけません。自分が生きているからには、命の使い道として「世の中のためにどれほど大きなことを貢献できるのか」を考えながら進めていきたいなというふうに思っています。

新谷哲:素晴らしいお話で、やはり上場企業の経営者は違う、と感じさせていただきました。次が最後の質問になります。全国の経営者、これから起業する方に向けて経営者として成功する秘訣をお教え下さい。

荻島浩司:我々の会社のコアバリューの中の1つでもありますが、「光速で失敗して光速で立ち直る」が成功の秘訣です。失敗するためには何か動かなければいけませんので、動いて失敗に気づいて成長することが、成功する一番の決め手だと思います。もう1つの成功の秘訣は、1つ目の秘訣を基本的には長くやり続けること。よく1万時間やる、と言われることがありますが、経営も同じです。やはり、それなりの期間、失敗を繰り返し成長することをしなければ、結果に繋がらないと考えています。

新谷哲:ありがとうございます。光速というお話を伺いまして、私も光速で失敗して、すぐに立ち直らないと駄目だ、と反省をしております。荻島浩司社長、本日はどうもありがとうございました。

荻島浩司:どうもありがとうございます。

編集後記

本日は、マザーズ上場企業、株式会社チームスピリットの荻島浩司社長でした。成功の秘訣の「光速で失敗して、光速で立ち直る」というのは、まさにその通りだと思います。私も「光速で立ち直らなければいけない」と反省しますし、もっと速く失敗して、速く成功しなければいけないと感じました。デザイナー出身でいらっしゃるのに、マーケティング戦略が自分には一番合っていた、と言う部分も大変面白いお話でした。ドラッカーも「全ての物事はマーケティングとイノベーション」と言っておりますので、「マーケティングが重要だ」ということを気付かせていただきました。皆様も是非、荻島浩司社長の真似して上場していただければと思います。

荻島 浩司 氏
株式会社チームスピリット 代表取締役社長

1996年、株式会社チームスピリット設立。株式会社東芝および東芝ソリューション株式会社で金融機関向けパッケージ開発や、オペレーショナル・リスクコンサルティングに従事、2009年よりセールスフォース・ドットコムを利用したクラウド事業に参入、「TeamSpirit」を企画・開発。

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本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、荻島浩司氏(株式会社チームスピリット 代表取締役社長)の経営者インタビューを取り上げました。

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