本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、上岳史氏(デコボコベース株式会社 代表取締役)です。(2021年9月22日 2021年9月29日 配信)
今回は、デコボコベース株式会社(旧・ハッピーテラス株式会社)代表取締役の上岳史様にお越し頂きました。
同社は発達障害の特性に応じたプログラムを提供する、放課後等デイサービス「ハッピーテラス」や、就労移行支援「ディーキャリア」のフランチャイズ展開を行っている企業です。
その創業社長である上氏は、もともと大学時代に現・アルファグループを創業し、32歳という若さでJASDAQ上場へと導かれました。その華々しい経歴の一方、幼少期はADHDのような多動傾向があり、その落ち着きのなさから、周囲となじむことに苦労をされた経験があるそうです。自らが生き生きと活躍できる場所を探し求め、努力を重ねられてきた上氏が目指す「凸凹が活きる社会」とは?経営のヒントを得られると思いますので、ぜひインタビューをお聞きください。
新谷哲:今回の経営者インタビューは、デコボコベース株式会社(旧・ハッピーテラス株式会社)の上岳史社長です。まずは経歴のご紹介です。1971年、教育者のご両親の元にお生まれになりました。高校2年生時、奨学金でアメリカへ留学した後、上智大学文学部教育学科へ進学をされます。大学在学中に創業し、アルファグループ株式会社を代表取締役社長としてJASDAQ上場へと導かれました。また、多摩大学大学院でMBA、星槎大学大学院では教育学修士を取得されています。さらに、ハッピーテラス株式会社 (現・デコボコベース株式会社)を2014年に創業し、代表取締役にご就任されていらっしゃいます。本日はよろしくお願いします。
上岳史:よろしくお願いいたします。
新谷哲:最初の質問です。ご出身はどちらですか?
上岳史:小学校まで、千葉県船橋市に住んでいました。
新谷哲:小学校時代はどのようにお過ごしでしたか?
上岳史:きかん坊で落ち着きがなかったです。今でもあまり落ち着きはありませんが (笑)。私は、発達障害を持っている方たちの支援をしています。その中に、ADHD(注意欠陥/注意欠如多動性障害)というものがあります。私はこの傾向がみられる子供だったので、同じところに座っていられず教室を抜け出してしまったり、前の女の子にちょっかいを出したり、隣の友達とケンカを始めてしまい、先生の横に特別席を作られていました。そんなこともあり、いじめの対象になることもありましたが、その要因もよく分からずにいました。
新谷哲:中学校時代はどのようにお過ごしでしたか?
上岳史:この頃、自分の中で大きな変化がありました。中学に入るとき、東京の江戸川区に引っ越すことになり転校をしました。小学校時代は「勉強もできない、太っちょ」というイメージを同級生から持たれていて、いじめを受けたこともあり自己肯定感が低い子供でした。しかし、この機会に「過去をリセットし、一から再スタートを切ろう」と決意をしました。小学3年生からの勉強を全てやり直し、体重も10kg以上落とし、中学に進学をしました。さらに、痩せたことで運動ができるようになり、最初の試験では努力の甲斐あり良い点数を取ることができました。新たな自分に生まれ変わり、いい思い出が多いです。
新谷哲:ご両親の教育方針により、中学進学の前にそれだけの努力をされたのですか?
上岳史:両親の影響ではありません。「いじめられていた」というコンプレックスを背負って生きるよりも「この波に乗ろう!」と、小学生なりに転換期を察知したのだと思います。
新谷哲:自立したお子様だったのですね!
上岳史:意志は強かったと思います。努力をしたことで「本気でやれば成果が出る」という成功体験を初めて得ることができました。この経験を元に、成功体験を積み重ねる人生を送っていくことになります。
新谷哲:高校時代はどのようにお過ごしでしたか?
上岳史:私立の進学校に入学をしました。その高校は昔、軍隊の養成所だったそうで、頭髪や服装にとても厳しい校則がありました。私は母親の仕事の関係や従兄弟へ会いに、子どもの頃から海外に行くことが多くあったのですが、海外では髪や肌の色が皆違うのが当たり前です。今でこそダイバーシティなどと言われ、個性を尊重されるようになりましたが、高校での個性を消すような規則に違和感を覚えたのです。そのため、高校1年の終わりに「辞めよう」と決意をしました。「今いる環境をコンフォタブルと感じることができず違和感を覚えたらならば、その場所にいたらいけない。新しい世界にチャレンジをすることで、また違った世界が見える。」と、小学校時代の経験から感じたからです。そうして、アメリカのカリフォルニアにある公立高校に留学をしたのですが、場所が違えばルールは全く違いました。その学校では、授業中にガムを噛んだり、帽子をかぶっていたり、遅刻をする方や、嫌だったら教室から出ていってしまう方も多くいました。その代わり「全ては自己責任」。私には、その考えが非常に肌に合いました。日本の高校には、1年2か月通い、アメリカでは1年間スキップしたので、約2年で高校を卒業することができました。
新谷哲:アメリカでの思い出はございますか?
上岳史:私は、みんなが右に行ったら左に行きたがるような人で、やんちゃでは無いのですが、高校時代に髪の毛を赤く染めていました。アメリカにその髪の毛で行くと「なぜ日本人なのに髪が赤いの?」と聞かれました。赤だと逆に目立たなく、黒に戻したところ「真っ黒でいいなあ!」と注目を浴びました (笑)また、当時日本で流行っていた渋カジ(渋谷カジュアル)系の服を着て行ったのですが、向こうではダサいのです。その時、「流行りはコミュニティごとに正解があり、場所が変わると全く違うカルチャーがある」と気づきました。この経験から、常に自分がイキイキとコンフォタブルに生きられる場所を探すようになり、とても勉強になったと感じています。
新谷哲:アメリカの高校を卒業後、なぜ日本に戻られたのですか?
上岳史:アメリカで戦っても、こてんぱんにやられてしまうと思い、日本に逃げ帰ったというのが正直なところです(笑)。勉強をしても、もっと頭のいい人はいっぱいいるし、背は私の方が小さく、スポーツをすれば、高校生でスラムダンクをできてしまうわけです。卒業旅行でニューヨークに行ったとき、この国で何をやっても通用しないと痛感をしました。その人の持つ能力も大事ですが、今までの経験から「どこで戦うか」が大事だと感じ、言葉のハンデがない日本の大学に進学をし、もう一回勝負をしようと思ったのです。
新谷哲:その後、上智大学文学部教育学科に進学をされました。こちらを選ばれた理由はございますか?
上岳史:上智大学と言うと、「いい大学に入ったね」と言われますが、その裏では、たくさんの大学に落ちています。分析し、受かりやすいところを選んだところ、英語の点数が良いという理由で、たまたま合格を頂くことができました。経歴では受かったところしか名前が出ないので、いいですよね (笑)。
新谷哲:大学生時代はどのようにお過ごしでしたか?
上岳史:当時は、テニスサークルに入るのが充実している大学生だという風潮があり、私も入ることにしました。しかし、最初のコンパで先輩から「飲め!」と強要され、上からものを言われるのが嫌で反抗したところ、いられなくなってしまいました。生意気だったのかもしれませんね (笑)。私は「この人たちより、楽しくていい集まりが作れる」と感じ、自らサークルを立ち上げました。上智大学の学生は、保守的な方が非常に多かったので、サークルでは外の人たちとも交流を持てるよう、人を集めてイベントをやったり、旅行に行ったり、いろいろなことをしました。そのうち「この仕組みを使うと商売ができる」と気づき、起業を志すようになりました。大学4年生までには起業資金を貯めようと思い、ほとんど学校にも行かず、サークルやバイトに励んでいましたね。
新谷哲:学生時代にアルファグループを創業されていますね。
上岳史:はい。大学2年から「在学中に起業する」と決めていました。インターンシップのような形で、PR会社の立ち上げに出入りをさせて頂く機会があり、そこのNo.2と一緒に独立をしたという経緯です。
新谷哲:独立するにあたり、ご両親からの反対はありませんでしたか?
上岳史:ありました。父親は非常に真面目な人で、彼からすると、私は規格外のようです。小学校の頃から先生によく呼び出されていたし「高校を辞めてアメリカに行こうと思う」や「就職しないで起業をしようと思う」と言われた時はとてもびっくりしたとよく友人に話しています。最後は「好きにやれ、ただし、お金や人脈に関して俺のことは頼るなよ」と言われました。
新谷哲:その後、アルファグループは上場を果たされます。創業当初から上場を目指していたのですか?
上岳史:考えていませんでした。今思えば本当に稚拙ですが、当時は「お金持ちになることで幸せになれる」という成功パターンしか見出すことができずにいました。「お金持ちになりたい」という一心で懸命に働きました。そして、運が良かったこともあり、年齢にしては身に余るようなお金を手にしました。背伸びをした時計や車を身に着けたり、夜の街に繰り出して、味もわからないのに高いお金を払ってお酒を飲んでみたり……。それこそが成功の証だと思っていて、もっと上、もっと上となっている自分がいました。しかし、同時に虚しさが残り、違和感を覚えるようになりました。そんな時に「上場」というものがあると耳にしたのです。当時は、株式会社パソナグループの南部靖之さんや、株式会社エイチ・アイ・エスの澤田秀雄さん、株式会社光通信の重田康光さん、ソフトバンクグループ株式会社の孫 正義さんなどが、すごいチャレンジをされていました。上場を目指すことで「今とは違う世界があるではないか」と感じ、毎月1,000万円の営業利益が出始めた26歳頃から意識をしはじめ、起業から10年で会社を上場させました。
新谷哲:上場する前と後では、どのような変化がございましたか?
上岳史:全てが変わりました。当時は現実を消化しきれずにいたと思います。身に余るほどのお金が手に入り、テレビで見ているような人たちや、いい人、悪い人、モテるわけでもないのに綺麗な人などが寄ってきて……。よくわからなかったですね(笑)
新谷哲:なるほど。この頃、多摩大学大学院でMBA、さらにその後、星槎大学大学院で教育学修士を取得されています。社会人から大学院に進まれた理由はございますか?
上岳史: まず、多摩大学大学院に進んだ理由は、経営学をきちんと学んでいないことにコンプレックスがあったからです。大学4年生の23歳で会社を創業し、そこから徒手空拳で働き32歳で上場をしました。しかし、「コンサルティング」「外資系」「ファイナンス」などの言葉や、横文字が出てきた瞬間、よくわからなくてドキッとしてしまう自分がいました。多摩大学には、田坂広志教授による田坂塾があります。2年間夜間で通い、34歳にして、ひととおりのビジネスフレームワークを勉強しました。そこには、経営者はほとんどおらず、超大手の経営企画室などで働いているような頭の良い方たちと共に学ばせて頂きました。当時の私の周りはほぼ経営者で、人間的に偏りがあったと感じます。非常に優秀だけれども、違った道を選んでいる人たちと知り合うことで、幅が広まり学ぶ事がとても多かったです。そして、3年前には星槎大学大学院で教育学修士を取得しました。現在私は、発達障害を持っている人たちのサポートをする、障害者福祉の分野で事業を展開しています。しかし、この分野を専門的に勉強したことがあるわけではありません。福祉の方々と話をすると、初めて耳にする言葉が飛び交い、また言っていることがよくわからなかったのです。「これは本気で勉強しなければいけない」と感じ、通信の大学を探し進学を決めました。
新谷哲:お話を聞いていて、非常に勉強熱心で、とことん追求するタイプでいらっしゃるとお見受けしました。
上岳史:大学院を2つ出ているのは、勉強が好きなわけではありません。本を要領よくパパっと読める人っていますよね?そうゆう方を見ると、うらやましいなと思います。私は、1ページ目から最後のページまで、じっくり読まないと理解ができません。しかし、これも私の個性です。小学校時代、自分はバカだと思っていたけれど「やると決心し、頑張ればそれなりに成果が出る」という方程式を持ちました。なので、必要だと思ったときには自分が納得するまで頑張ると決めているのです。
新谷哲:その後、ハッピーテラス株式会社 (現・デコボコベース株式会社)を創業されました。きっかけはございますか?
上岳史:いろいろなきっかけがありましたが、一番の理由は、当時の事業に疑問を抱くようになったからです。私は盛和塾で学んだことで、自分の言っていることと、やっていることが違うことに気づきました。そして「今やっていることは、本当に喜んでもらえているのだろうか?」「この仕事を頑張り続けて本当に幸せなのだろうか?」と感じるようになりました。フランチャイズで例えると「本部が儲かり、パートナーやメンバーが、そのぶんの犠牲を払い、疲弊してしまっているのではないか?」具体的には「残業時間のコントロールが利益になっているのではないか?」などです。このような疑念を抱えている中、下方修正を出してしまい、鬱で入院をしました。そんなときに、ハッピーテラスと知り合ったのです。この事業を気に入っている点は、「喜んでもらえる仕事」ということです。誰しも心の中で、人の役に立ちたい、喜んでもらいたいという気持ちを持っていると思います。生き辛さを抱えている人たちの自立サポートをすることは、相手の人生を変えることに繋がり、とてもやりがいを感じました。しかし、アルファグループでは赤字部門で、上場に向かないということもあり、存続が危うくなってしまいました。このような経緯から、事業を買い取り、20年間勤めた会社をやめ、ハッピーテラスをスタートしたのです。上場会社の事業でなければ、株主配当や、事業を継続するため以上のお金は必要ありません。以前は、運転手を付けて見栄を張っていましが、今は小さい事務所に自転車で通勤をしています。それでも、本当に人の役に立つことを考えていける仕事をできることが、嬉しく思います。
新谷哲:ありがとうございます。もしよろしければ、デコボコベース株式会社(旧・ハッピーテラス株式会社)の事業内容をお教えいただけますか?
上岳史:弊社では、発達障害を抱える方々のサポートをする福祉事業を、フランチャイズで全国展開しています。障害は、身体障害・知的障害・精神障害の3つに分かれています。その中でも、精神障害に分類される、発達障害をお持ちの方、またそのご両親のサポートを主にしています。精神障害は目で見ただけでは気づくことができません。1歳になる小さなお子様の場合では、ご両親が状況を受け入れ、正しいアプローチができるようにしていきます。小学生・中学生・高校生になると、いじめや引きこもりという問題が生じてきます。社会との接点を減らしてしまわぬよう、取り組みをしていきます。また、大人の方には、就職し自立するまでのサポートをさせて頂いています。
新谷哲:ありがとうございます。ご興味のある方は、加盟されてみてはいかがでしょうか?ここからは違う質問をさせていただきます。好きなもの、好きなことをお聞きして「家族とのごはんと無駄な時間」とお答えいただきました。無駄な時間を選ばれた理由はございますか?
上岳史:私、「ちぃばす」が好きなのです(笑)
新谷哲:100円で乗れる東京都港区の地域バスですね!私も六本木ヒルズに行くときは、ちぃばすを活用しています (笑)。
上岳史:ちぃばすは、タクシーなら10分で着くところを、30分かけて無駄にいろいろなところに行きます。普段ならば通ることの無いような脇道に入るとそこには、また違ったお店やコミュニティがあります。それを「ぼーっ」と見ている時、すごく豊かな時間だなと感じます。私は、人生にはゆるみや間も大事であり「無駄」にはとても価値があると思っています。前職では、常に最短を意識し走っていました。一周回って、この価値に気づくことができたのかもしれません。
新谷哲:運転手付きだった社長がちぃばす好きとは!感銘を受けました。座右の銘もお聞きして「実るほど頭を垂れる稲穂かな」とお答えいただきました。こちらを選ばれた理由はございますか?
上岳史:私が20代後半で「上場するぞ!」といきがっている頃に、尊敬する方からいただいた言葉です。その方に「大親分と呼ばれる人は本当に謙虚で、レストランでは誰にも気づかれない。ワアワア騒いでいるチンピラになるのと、身分をわきまえ迷惑をかけず生きるのではどちらがかっこいいと思う?」という話をされたことがあります。そのときは実っていませんから、どうしてもつっぱってしまうわけです。早く実り、自然と頭を垂れられる、稲穂みたいな人生が送れるといいなと思い座右の銘にしています。
新谷哲:次が最後のご質問です。全国の経営者、これから起業する方に向け、経営者として成功する秘訣をお教えください。
上岳史:難しい質問ですが、私の思う成功の条件は「ベストを尽くす」です。これは自分にとってのベストであって、人との比較ではありません。自分で頑張っていると思ったらそれでいいのではないでしょうか。ですから、本当に成功したいのであれば、それなりに頑張っていくことですね。
新谷哲:大変勉強になるお話でした。上岳史社長、本日はありがとうございました。
上岳史:ありがとうございました。
編集後記
今回は、上岳史社長でした。会社を上場させ運転手付きになっているのに、それを捨てて福祉事業に入っていかれました。ちぃばす好きというのも好感を持てます。謙虚であり、実に素晴らしい社長様でした。ぜひ皆様も参考に、共に成功社長を目指していきましょう!
高い社会貢献性と堅実な収益性を備えた新業態にご興味のある方は、ぜひ下記リンクをご覧ください。
放課後等デイサービス「ハッピーテラス」
https://wizbiz.jp/seminar/1493/
就労移行支援「ディーキャリア」
https://wizbiz.jp/seminar/1502/
上岳史氏
デコボコベース株式会社 代表取締役社長
1971年、教育者の両親の元に生まれる。高校2年生時、奨学金でアメリカへ留学。上智大学文学部教育学科卒業。多摩大学大学院(夜間)でMBAを、星槎大学大学院(通信)で教育学修士を取得。上智大学在学中に創業し、アルファグループ株式会社を代表取締役社長としてJASDAQ上場(証券コード:3322)へ導く。2014年、現事業をMBOし、ハッピーテラス株式会社(現デコボコベース株式会社)を起業し、代表取締役社長に就任。2016年より、株式会社オロ(証券コード:3938)の社外取締役を務める。
※本インタビューへの出演をご希望の方はこちらよりご応募ください。
本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、上岳史氏(デコボコベース株式会社 代表取締役)の経営者インタビューを取り上げました。
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