本田宗一郎にとって、顧客とはどういう存在だったのか。彼の言葉から見ていきましょう。
■本田宗一郎の言葉
ホンダの創始者である本田宗一郎の有名な言葉としては
「いちばん長いこと付き合わなきゃならねえ人のことを考えろ、いちばん長いのはお客さんだろ、その次は売った店の修理工だろ、その次が、ウチの工場の人間だ」
というようなものがあります。
また、テストの段階で部品が故障するトラブルが発生したときのこと。
本田宗一郎の出す解決策が、コストに響くと考えた部下は、この部品の故障率は0.01%だから対策しなくても大丈夫です。と反論すると、本田宗一郎は、
「その一個を買ったお客さんにとっては100%の確率じゃないか、何を考えているのだ」
と言って部下にカミナリを落としました。
物事の本質をこのような言葉は的確に語っています。
サービスや商品をお客さんに提供する立場であれば、クリエイターに自分自身がなるべきで、仕事としては新しい価値をお客さんに提供することです。
このような本田宗一郎のエピソードが、本田宗一郎に関する書籍にはいろいろ紹介されています。サービスや商品を提供する人にとって、このようによく分かるように顧客中心主義の本質を簡潔に説明している言葉は非常に大切でしょう。
■顧客中心主義とはどのようなものか
車に限定されたことではありませんが、競争に生き抜くためには、企業としては徹底的に顧客中心主義になることが必要です。
顧客中心主義と言いましても、精神論のような「お客さまは神様」といったものではありません。
スローガンとして、常にお客さま第一で弊社は取り組んでいます、というようなものを掲げるといいということでもありません。
基本的な顧客中心主義の考え方としては、ある戦術や戦略を導入する意思を決める基準を企業が顧客に置くことです。
どのような戦術や戦略でも、顧客がサポートしてくれなければ、いつかは間違いなく破綻します。
「こうすると必ず儲かるだろう」と企業が考えた場合に、 「このようにすると、これだけの顧客がこのような理由によってサポートしてくれるため、長期的にみても儲かるだろう」というように、顧客に具体的な理由を求める、ということが顧客中心主義です。
つまり、顧客中心主義というのは、正しく顧客を理解して、この理解をベースにして、「行うべきこと」と「行わなくてもいいこと」を企業として決定するというような、実際の戦術論であり、具体的な施策にこれを落とし込んでいくものです。
そして「正しく顧客を理解する」ために必要なスキルが、「マーケティング」なのです。