成功経営者インタビュー

株式会社コパ・コーポレーション 代表取締役社長 吉村泰助氏 インタビュー

本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、吉村泰助氏(株式会社コパ・コーポレーション代表取締役社長)です。(2020年12月30日・2021年1月6日 配信)

今回は、株式会社コパ・コーポレーションの吉村泰助社長にお越しいただきました。テレビでおなじみレジェンド松下さんも在籍する、実演販売のプロフエッショナル集団を育成し世に送り出している会社の社長様です。日本発の実演販売専門店「デモカウ」や、長年の実演販売のノウハウをもとに、販促映像制作や、法人向けセミナー、商品企画開発などを提供しています。
吉村氏は、大学時代から役者を志され、実演販売の世界に飛び込みました。大学在学中に日本シール株式会社の宣伝販売員として所属し、店頭での実演販売やTV 通販番組に出演。1996年吉村泰助事務所を設立。1998年に有限会社コパ・コーポレーションを設立し、2006年には株式会社に組織変更を行い、2020年6月に東京証券取引所マザーズ市場に上場されました。「テキ屋殺すにゃ刃物は要らぬ、雨の三日も降ればいい」と言う寅さんの名言がありますが、現代の寅さんは一味違います!業界の社会的地位向上を掲げ、「清く正しく美しく」お客様へ感動を届け続ける吉村氏から経営のヒントが得られます。ぜひ、吉村泰助社長の経営者インタビューをお聞きください。

新谷哲:今回の経営者インタビューは、株式会社コパ・コーポレーションの吉村泰助社長です。まずは経歴のご紹介です。新潟県の新発田市ご出身。國學院大學ご卒業後、日本シール株式会社の宣伝販売員として所属されます。その後、吉村泰助事務所を設立。そして、有限会社コパ・コーポレーションを設立し、代表取締役に就任。2020年6月には、東京証券取引所マザーズ市場に上場をされています。本日はよろしくお願いします。

吉村泰助:よろしくお願いします。

新谷哲:最初の質問です。ご出身は新潟県とのことですが、小学校時代はどのようにお過ごしでしたか?

吉村泰助:新潟県の新発田市という堀部安兵衛生誕の地でもある、新発田藩の城下町がある地域で育ちました。そこで母方の実家が、和泉屋というごままんじゅう屋と喫茶を営んでいました。小学校・保育園が終わると母親がバタバタと忙しく働く厨房へ行き、「100円頂戴」と言っていました。当時の100円は今よりも高価だったので、よく怒られていたのを覚えています。

新谷哲:ご商売の血筋ですね。

吉村泰助:はい。まんじゅう屋だったのでお菓子が一杯あり、幼い頃は好き勝手に商品を食べていました。すると母に「これはお金を出さないと買えないものなのよ」と教わり、初めてお金という存在を知りました。以降「100円頂戴、100円頂戴!」と繰り返し言っていました(笑)

新谷哲:早くからご商売を理解されていたのですね!

吉村泰助:戦場のように忙しい厨房で働く母を見ながら育ったので、商売というのは「凄いな」と思っていました。母が、チョコレートパフェの容器を2m先の洗い桶に投げ、ポトンとちゃんと入る器用な姿が記憶に残っています。

新谷哲:中学校時代はどのようにお過ごしでしたか?

吉村泰助:中学は、第一中学校という学校に通いました。小学校まで野球をしていたのですが、坊主刈りをするのが嫌だったので、得意だった卓球部に入部を決めました。

新谷哲:卓球に力を入れていたのですか?

吉村泰助:はい。今は目が悪くてボールが見えないですが、当時は市の大会で3位まで行きました。

新谷哲:高校も新潟県ですか?

吉村泰助:新潟県の新発田高校という進学校に入学をしました。実家から徒歩5分の場所で、始業のチャイムが聞こえてから登校ができるほど近かったです。また当時、卓球部は暗いイメージがあると感じ、高校では硬式テニス部に入部をしました。理由は、モテるイメージがあったからです(笑)

新谷哲:その後、國學院大學に進学されましたが、こちらを選ばれた理由はございますか?

吉村泰助:大学受験では一浪をし、地元の新潟予備校に通いました。そこの現代文の荻原さんという講師が小説家でもあり、授業がとても面白く「作家になりたい」と思うようになりました。そのため文学部、国文学科を全部受け、國學院大學に受かり入学をしました。

新谷哲:大学時代はどのようにお過ごしでしたか?

吉村泰助:國學院大學は演劇の名門です。私は演劇研究会に所属し、授業そっちのけで活動をするほどハマっていました。当初、新潟の田舎から上京し友人もいなかったので、文芸部か映画研究会に入ろうと考えていました。しかし、模擬店に顔を出したのですがぱっとせず、その横にあった演劇研究会の模擬店を覗きました。最終的に、演劇研究会の会長の家に泊まることになるほど意気投合をし、「僕はここに入るしかない」と思い入会しました。屋上で発生練習として「アメンボ青いなあいうえお」と大きな声を出すのは気持ち悪いと思っていたのですが、入ってみると文化系でありながらとても体育系でした。ランニング5キロ、腹筋100回など過酷なメニューをこなしていました。

新谷哲:プロを目指していたのですか?

吉村泰助:20代ぐらいまでプロを目指していました。

新谷哲:もしかしたら役者として、ドラマやテレビに出ていたかもしれませんね!

吉村泰助:一緒に活動していた方達は、帝国劇場で出演するなどしています。極めればそこそこになりますが、芸能関係ではコネも必要だと感じました。

新谷哲:大学卒業後は、日本シール株式会社に宣伝販売員として所属されました。こちらを選ばれた理由はございますか?

吉村泰助:じつは、日本シール株式会社は入社ではなく、宣伝販売員という名称で歩合の外交員報酬を戴いていました。当時、秋葉原デパートの実演販売が、國學院大學演劇研究会の伝統的なアルバイトでした。私もアルバイトをしていたのですが、大学4年生のころ実演販売商品のメーカーで勤めている先輩に「プロでやらせてほしい」と頼み込み、歩合で働かせて頂くことになりました。バブルの影響もあってか、2週間一所懸命働けば、初任給くらいは戴いていました。

新谷哲:素晴らしいです。大学生の時から実演販売に携わっていたのですね。

吉村泰助:はい。私は1回も就職活動をやったことはありません。言ってしまえば、いきなり社長になったのです。

新谷哲:なるほど。その後、吉村泰助事務所を設立されました。こちらも宣伝販売の仕事ですか?

吉村泰助:はい。元は、日本シール株式会社の専属でしたが、専属を取りやめ個人事務所の立ち上げをしました。エチケットブラシはご存じですか?学生服のホコリを取るというクリーナーですが、これが流行りだした頃から実演販売が注目を浴びはじめました。当時、秋葉原デパートの店頭は「実演販売の甲子園」と呼ばれ、マスコミからも取り上げられていました。先輩にはカリスマと持ち上げられている方もおり、テレビ通販の出演が徐々に増えてきたのです。私もそれなりに良い男だったので(笑)テレビ通販に出演をするようになりました。次第に「色んな商品をやりたい」と感じるようになり、個人事務所を立ち上げました。

新谷哲:吉村泰助社長は今もダンディでカッコいいです。吉村泰助事務所では、様々な商品をテレビで実演販売していたのですか?

吉村泰助:はい。日本シール株式会社だけではなく、色々なメーカーの商品を扱っていました。また、商品を引かして頂いて、先輩の場所で実演販売をやったりしていました。

新谷哲:その2年後に、有限会社コパ・コーポレーションを設立されました。吉村泰助事務所とは違う業態ですか?

吉村泰助:結局は一緒の業態です。有限会社コパ・コーポレーションは、私が30歳の1998年10月に設立しました。その頃、自身の30年間を振り返り、作家になりたいという気持ちはありながらも、結局は演劇と実演販売しかやってこなかったと気づいたのです。ちょうど当時販売していたエアコン内部クリーナーという商品が非常に大ヒットし「これを条件に会社を作ったら面白そうだ」と思い、定款が半分演劇、半分実演販売&卸の会社を作りました。

新谷哲:演劇の道は諦めず続けていらっしゃったのですか?

吉村泰助:諦めていません。演劇仲間を食わせる為にも「実演販売をしながら芝居もやっていこう」というコンセプトの会社を作りました。

新谷哲:役者さんを応援する会社という側面もあったのですか!

吉村泰助:はい。しかし、最終的には実演販売と卸売業が中心になっていきました。演劇はとても楽しいのですが、時間もかかる上、儲けにはあまり繋がりませんでした。自社のプロデュース公演なども開催しましたが、利益を上げることは難しかったです。

新谷哲:2006年に、有限会社コパ・コーポレーションから株式会社コパ・コーポレーションへ組織変更をされました。変更された理由はございますか?

吉村泰助:コパ・コーポレーションは実演販売と卸売業というコンセプトでやっていましたが、請負が多く各小売店に口座を取るため邁進していました。特にテレビ通販会社の口座はなかなか下りず、攻防戦を繰り広げていたのです。2006年ごろ、やっと卸売業としての基礎工事が完了しました。そのタイミングで、社屋を中野坂上から恵比寿に移転したこともあり、「新たな気持ちで経営をしていこう」と株式会社に組織変更をしました。

新谷哲:組織変更する際に、上場を目指していましたか?

吉村泰助:弊社は創業当初から上場を目指しています。20代のころ、秋葉原デパートでは「実演販売の甲子園」とメディアからちやほやされていました。しかし、実演販売は傍から見ると単なるテキ屋でしかありません。売り場に屋根はなく、雨が降れば仕事ができなかったのです。男はつらいよの寅さんの名言に「テキ屋殺すにゃ刃物は要らぬ、雨の三日も降ればいい」とありますが、実演販売も同様でした。誰よりも一生懸命に現場で働いている人間が、与信力、社会的地位を得られないのは、とてももったいないと感じていました。士農工商のように、商業人が低く見られてしまう風潮が若干残っていたのです。2020年になってもなお、日本の体制は変わっていません。私は民主主義社会・資本主義社会は、売ることを通してでしか正当性を得られない社会だと解釈しています。実演販売は、売る人のプロです。ある種のヒエラルキーを越え冷静に考えると、ビジネス社会で一番競争力があるのは私たちではないでしょうか。この社会を豊かに過ごしたいならば、実演販売のスキルはとても重要です。そのため「清く、正しく、美しく、ブラッシュアップすることで、必ず実演販売は資本主義社会のヒーローになれる!」という信念を持っています。その証明をするためにも、上場達成に向け取り組んできました。

新谷哲:上場されるまでの苦労はございましたか?

吉村泰助:上場するまで色々なことがありすぎて、本当に大変でした。最初は、社員の意識改革に苦労をしました。「上場する必要あるのですか?」や「結局、社長が儲けたいだけでしょ!」と散々言われましたが、説明をし続けました。次第に社員の賛同も得られるようになり、一丸となり上場を目指すことで、数字がどんどん上がっていきました。ガバナンス体制を整えることで、ブランド力は上がるのだと気づき、とても面白いと感じていました。そんな矢先に、当時のCFOと経理部長が倒れてしまいました。過酷なことをさせているつもりはなかったのですが、プレッシャーに押しつぶされてしまったのかもしれません。その後の人選には一番苦労をし、何とか中間審査に入ることが出来ました。

新谷哲:お答えいただきありがとうございます。もしよろしければ、株式会社コパ・コーポレーションの事業内容をお教えいただけますか?

吉村泰助:弊社の事業内容は、実演販売のできる卸売業としてスタートしました。実演販売というと派遣業だと思われがちですが、当社の約95%が商品売上です。商品を小売店に卸し、当社で育成した実演販売者が販促活動などのサポートをしています。プラス3つの販売チャネルがあり、ベンダー販売(店頭販売)・テレビ通販・インターネット通販を展開しています。弊社では、実演販売の力を最大限に生かすため、「3Dマーケティング販売戦略」という独自の販売戦略を取り入れています。テレビ通販番組で商品の実演販売を行うことで需要の活性化を図り、粗利率の高いベンダー販売、インターネット販売など他の販売チャネルでの販売に繋げていくというものです。そのため、ヒット製品を生み出すのに特別な広告費は一切掛かっていません。また、役員を務めるレジェンド松下の知名度が高いですが、創業しホームページを作ったときからとても取材が多い会社でした。このように、多角的な戦略を講じることで、商品を0から仕掛けられることが当社の一番の強みです。最小の経費で最大の利益を上げることができ、競争力の源泉となっています。

新谷哲:ありがとうございます。ここからは違う質問をさせていただきます。好きなもの、好きなことお聞きして、「社員とその家族、硬式テニス、演劇、読書、数学」とお答えいただきました。「社員とその家族」に注目したのですが、社員さんが大好きなのですね!

吉村泰助:経営をしていて1番楽しみなことは、社員とその家族の幸せです。弊社は比較的フラットな社風で、上下関係もあまりなく、社員同士が子どもを連れてプールに行ったりもしています。「子どもが生まれた」と報告があればとても嬉しいし、すくすく育っていくのを見ているのはとても幸せです。売上を作るだけが会社ではありません。皆の幸せを守ることが、経営者の務めだと思っています。

新谷哲:共感している社長さんが多いと思います!座右の銘もお聞きして、「大きなことはできません、小さなことをコツコツと」とお答えいただきました。こちらを選ばれた理由はございますか?

吉村泰助:実はこれ、実演販売をしていた先輩の口癖なのです。その人は、実演販売員なのにパフォーマンスが苦手だったのですが、「こまし」という手法でコツコツ売ることを得意としていました。その方と一緒に現場を回っていて、その口癖がとても大切な心構えだと感じ座右の銘に選びました。結局、売上はいきなり取れるものではなく、目の前のお客さん1人ひとりと向き合うことが大切ということです。

新谷哲:すばらしいお話です。次が最後の質問です。全国の経営者、これから起業する方に向けて、経営者として成功する秘訣をお教えください。

吉村泰助:まだ成功しているとは思っていません。しかし、上場したことを成功と見るのであれば、成功する上で「抽象力」が重要だと考えています。弊社は実演販売をしている会社ですが、社員に対し「実演販売はマグロだ」と話しています。大トロ、中トロ、中落ちなど、マグロは切り方によって美味しさが変わります。実演販売も同様です。数学的に言うと、自分たちの強みを微分していくということです。何回も微分することで、次第にどうすれば良いかが見えてきます。そしたら後は、積分するだけです。それが、売上に繋がっていくのです。私の先輩の中でも、カリスマだと言われていた方もいたのですが、事業としては大きくなりませんでした。その違いは何かというと、実体のないものを理解したり、イメージしたりする力である、抽象力にあると思っています。

新谷哲:大変勉強になりました。吉村泰助社長、本日はありがとうございました。

吉村泰助:ありがとうございました。

編集後記

今回は吉村泰助社長でした。2020年6月に東証マザーズに上場されているので、新型コロナによる一回目の緊急事態宣言が明けてすぐに上場をされた社長です。この時期に上場できるのは素晴らしいことです!社員とその家族、微分・積分、抽象力など、考え方がとてもしっかりされていてギャップを感じ興奮してしまいました。非常に頭脳明晰であり、実演販売の現場から実績を積み上げ、上場まで持っていく能力の高さに感銘をうけました。最近上場している社長様のインタビューをしていると、理数系的な脳を持った方が多いのかもしれません。それと同様に、愛のある方が成功しているケースが多いようです。是非皆さんも参考にして成功社長を目指していきましょう。

吉村泰助氏
株式会社コパ・コーポレーション 代表取締役社長

1968年生まれ、新潟県新発田市出身。國學院大學文学部日本文学科に入学し、演劇研究会に所属されました。在学中から日本シール株式会社の宣伝販売員として所属し、店頭での実演販売やTV 通販番組に出演され全国で活躍されました。1996年には、吉村泰助事務所を設立。そして、1998年10月に有限会社コパ・コーポレーションを設立し代表取締役に就任し、“実演販売の出来る卸売業“として事業をスタート。2006年12月には株式会社に組織変更し、2020年6月東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たされました。現在、「売る」から「作る」へ、実演販売のできる卸売から実演販売のできる販売元に変貌を遂げ、明るく元気で前向きな笑顔社会実現のため万進されています。

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本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、○○株式会社の代表取締役、○○氏の経営者インタビューを取り上げました。

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