成功経営者インタビュー

株式会社ロゼッタ 代表取締役CEO 五石順一氏 インタビュー

本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、五石順一氏(株式会社ロゼッタ 代表取締役CEO)です。(2021年2月10日 2021年2月17日 配信)

五石氏は、京都大学法学部卒業後、株式会社NOVAにて経営企画室長として同社を上場に導いた後、社内ベンチャーとして翻訳・通訳事業を行う株式会社GLOVAを立ち上げられました。
そして、2004年にはエンジェルの支援を受けMBOで独立し、AI翻訳で日本を英語から解放するミッションを掲げる株式会社ロゼッタを創業し、代表取締役に就任されました。
現在、シン・ミッションである「グローバル・ユビキタス(人類を場所・時間・言語・物理的な制約から解放する)」の実現にむけ邁進されています。イノベーションを起こし続ける五石氏のエピソードから経営のヒントが得られますので、ぜひ経営者インタビューをお読みください。

新谷哲:今回の経営者インタビューは、株式会社ロゼッタの五石順一社長です。まずは経歴をご紹介します。京都大学法学部卒業後、株式会社NOVAにて経営企画室長として同社を上場に導いた後、社内ベンチャーとして翻訳・通訳事業を行う株式会社GLOVAを創業されました。2004年には、エンジェルの支援を受けMBO(マネジメント・バイアウト)で独立し、AI翻訳で日本を英語から解放するミッションを掲げる、株式会社ロゼッタを創業し代表取締役CEOに就任。そして、2015年11月に東証マザーズ上場をされています。本日はよろしくお願いします。

五石順一:よろしくお願いします。

新谷哲:最初の質問です。ご出身はどちらですか?

五石順一:広島県出身です。

新谷哲:小学校時代はどのようにお過ごしになりましたか?

五石順一:ろくでもない思い出ばかりです。断片的に、怒られた記憶がほとんどです。

新谷哲:ガキ大将だったのですか?

五石順一:単純に素行が悪かっただけだと思います。

新谷哲:中学校時代はどのようにお過ごしになりましたか?

五石順一:中学校時代もあまりいい思い出はありません。ほとんど引きこもりに近くプラモデルばかり作っていました。塗料にシンナーが入っていたので、ずっと頭が「ボーッ」としていました(笑)

新谷哲:頭脳明晰な五石順一社長にしては面白いお話ですが、あまり中学校は行っていなかったのですか?

五石順一:学校はちゃんと通っています。それ以外は、ほとんど家に籠っていました。

新谷哲:高校時代はどのようにお過ごしになりましたか?

五石順一:高校時代もあまりいい思い出はありません。私は、スポーツも、勉強も苦手で、言われても何も出来ない子供でした。音楽は好きで、ギターを弾きながらよく歌っていました。当時の曲を聞き返すと、「東大、京大行きたいけど、寝ているのがいいんだ~♪」という歌詞など、何もかも諦めた、ひねくれ者の子どもでした。

新谷哲:そうですか。歌手を目指されていたのですか?

五石順一:いえ、なんとなくやっていました。高い志もなく、何も出来ないことを言い訳している曲ばかり歌っていました。

新谷哲:と仰っても、高校卒業後に京都大学法学部に進学されています。こちらを選ばれたきっかけはございますか?

五石順一:そもそもダメダメな子供で、京都大学を目指せる成績ではありませんでした。大学受験が全滅し、浪人が確定した時に「プチッ」と何かがはじけたのです。不合格通知が届いたとき、その場で家族に電話をし「家にはもう帰らない」と伝え、一人暮らしを始めました。「自分はこんなにも駄目だ」と事実として突きつけられ、何かが変わったのです。そこから予備校に通い始め、めちゃくちゃ勉強をし、ようやく京都大学法学部に受かることが出来ました。浪人した1年間は人と一言も喋らず、寂しくて扇風機に話しかけるほど異常な生活をしていました(笑)

新谷哲:大学時代の思い出はございますか?

五石順一:大学時代は楽しかった思い出が沢山あります。しかし、大学4年間で2時間~3時間ほどしか授業には出ていませんでした。その為、体育と保健体育の3単位しかなく、当然留年をしてしまいました。そこから1年間、なんとかやり切り、卒業することが出来ました。実はその後も、卒業出来ないという悪夢を40歳まで繰り返し見ていたのです。試験に行くのを忘れるや、問題が何も解けず「また留年してしまう!」と苦しむのです。だんだん、夢と現実が分からなくなってきて「もしかして、勝手に卒業したと思い込んでいるだけなのではないか……」と不安になり、実家までいき卒業証書を再確認することで治まりました。

新谷哲:大学に通っていなかった4年間は何をされていたのですか?

五石順一:音楽と、京都の観光客向けガイドのボランティアばかりやっていました。

新谷哲:英語で外国人観光客向けにガイドをされていたのですか?

五石順一:はい。この頃から英語を喋れるようにと、勉強していました。

新谷哲:大学卒業後、株式会社NOVAにお勤めになります。京都大学法学部ですと、官僚や弁護士を目指される方が多いイメージですが、こちらを選ばれた理由はございますか?

五石順一:正直、就職先は「小さければ小さいほどいい」と考えていました。大学では国際法を専攻していたのですが、当時は「外交官や世界政府を作りたい」など大それたことを考えていました。勉強をしていくうちに「そもそも世界政府を作るのは無理だ!」と分かり諦めました。その為、通常通り大企業の面接も受けました。しかし、食堂アルバイトも一週間でクビになるほど、大組織の中で1つの部品としてまともに機能できる性格では無く「自分には向いていない」と気づいたのです。最終的には、リクルートの会社年鑑をランダムに開き、会社としてまだ何も出来ていない小さい会社を選んでいました。そこで当時、誰も知らない大阪の小さな英会話学校だった株式会社NOVAを見つけ入社を決めました。

新谷哲:当時、株式会社NOVAの従業員数はどのくらいでしたか?

五石順一:従業員数は数十名、スクールの拠点数は数校でした。

新谷哲:京都大学法学部の方が、数十名の会社に入社されることに皆さん驚かれたと思います。ご両親の反対はありませんでしたか?

五石順一:反対はされませんでした。両親は「あれしろ、これしろ」とは言いませんでした。就職先も「思うようにすればいい」と言っていたのですが、がっかりはしていたかもしれません。株式会社NOVAには、初めての新卒募集で第一期として就職しました。社員の方からは驚きを持たれていましたが、普通の就職ではないと自覚をしていました。それでも当時は、「自分でこの会社を大きくするのだ!」と意気込んでいました。

新谷哲:株式会社NOVAでは、経営企画室長として上場まで導かれたと伺っていますが、思い出はございますか?

五石順一:とても凄まじかった、でも、楽しかったです。創業者である当時の社長と、ほぼ泊まり込みで仕事をしていました。上場前は、会社の中に段ボールで家を作り住んでいたほどです(笑)当時考えた「NOVAうさぎ」のCMは大流行し、店舗も数百と増え、知らない人がいない規模に会社は成長しました。やってきたことが大きくなっていき、成し遂げた感が強かったです。

新谷哲:当時、上場に関して学ばれたのですか?

五石順一:はい。上場準備も私たちの部署で進めていました。しかし、上場直前は加わっておらず、上場セレモニーの鐘を鳴らすときには、関わった人は皆呼ばれませんでした。後日談として証券会社の方から、ミニスカートの綺麗な女性ばかり参加していて前代未聞で驚いたと伺いました。

新谷哲:その後、株式会社GLOVAを社内ベンチャーとして創業さました。こちらは、現在の株式会社ロゼッタの原型にあたるのですか?

五石順一:原型ではありますが、AI翻訳を展開する株式会社ロゼッタとは違い、人間の翻訳通訳者をメインとしていました。企業から委託を受け、翻訳であれば納品し、通訳であれば通訳者を現地派遣する仕事です。上場数年後の1998年に、社内ベンチャーとして始め、2000年に株式会社NOVAの子会社として、法人化し株式会社GLOVAを設立しました。

新谷哲:新しい事業を作ろうと、五石順一社長がご提案したのですか?

五石順一:はい。本社の仕事に携わる気が無くなってしまったので「別の事をやってもいいですか?」と提案し、承認頂き設立をしました。

新谷哲:その後、2004年に株式会社ロゼッタを創業されました。こちらは、完全な独立ですか?

五石順一:はい。MBOで株式会社NOVAから株式会社GLOVAを買い取り、株式会社ロゼッタを受け皿にして子会社化しました。

新谷哲: MBOすることになった経緯はありますか?

五石順一:ありえないような偶然から進展しました。ある時、知らないおじさんが目的もなく訪ねてきました。話も良く分からず、ハンティングだと思い「会社を辞めるつもりは無い」と追い返したのです。そのとき、女性の部下に「その人はもしかしたら意味があるかもしれない、独立の相談をしてみたらどうですか?」と言われました。電話をしてみたところ「その話やってみよう!」と話が進んだのです。お互い独立に向けて動くつもりは無かったのですが、不思議と形になっていきました。現在、その女性の部下は弊社の取締役、おじさんは社外取締役を務めています。

新谷哲:運命を感じますね!

五石順一:運命というものがあるのか分かりませんが、偶然、成り行きに身を任せ今があるので、小説のような不思議な始まりでした。

新谷哲:株式会社ロゼッタでは、設立当初より上場を目指されていましたか?

五石順一:当初から「上場したい」という思いを持っていました。なぜかというと、株式会社NOVAから独立した動機にも繋がります。当時、上場前の経営企画室は100人近い人数がいました。「上場をすれば報われる!」と皆泊まり込みで激務にあたっていました。しかし、上場を果たしても仲間に何も与えることが出来なかったのです。私はとてもショックを受けました。結局は資本の問題で、株を持っていなければどんなに努力をしても、何も報われないと分かったのです。その為、必ず創業メンバーには株を持たせ、会社の成功と共に個人が報われる形にしたいと強く感じました。しかし、社員に株を出すと億万長者になり目的を失い辞めるかもなど、様々な方からの反対もありました。それでも私は「報われるのであれば、いいじゃないか」と思ったのです。

新谷哲:ありがとうございます。上場されるまでの苦労はございましたか?

五石順一:苦労だらけでした。上場準備を始めた2008年頃、リーマンショックで世界大不況が到来しました。それに合わせ会社の業績も悪化し、上場を目指すどころか生き延びるだけで大変でした。3年間は、食欲が無く肉を食べることも出来ず、固かった髪の毛も、しんなり柔らか「ヒョロン、サラン」となってしまうほど追い詰められていました。

新谷哲:その苦境を抜け出せた要因はございますか?

五石順一:「何かをやったから」ではなく、「諦めずにやり続けた結果」です。気づいたら抜け出していました。世界不況が改善するまで、ひたすらもがき、細かいことを続けなんとか耐えました。

新谷哲:お答えいただきありがとうございます。もしよろしければ、株式会社ロゼッタの事業内容をお教えいただけますか?

五石順一:弊社は創業当初から、AI翻訳(機械翻訳)の実用化を目指してきました。「日本を言語的なハンディキャップの呪縛から解放する」をミッションに掲げ活動しています。

新谷哲:ありがとうございます。ここからは違う質問をさせていただきます。好きなもの、好きなことを事前にお聞きしておりまして、「映画、音楽」とお答えいただきました。映画鑑賞は良くされるのですか?

五石順一:今は忙しくてあまりですが、映画はバカみたいに観ます。ハリウッドの有名なものだけではなく「世界中のDVD映画を集めるのだ!」という勢いで買い漁っています。以前、Yahoo!映画のレビュー投稿にはまっていて、日本一のレビュアーとして表彰されたこともあります。覆面だったので誰も私だと気づきませんが、当時は誰もが知るレビュアーでした。

新谷哲:凄いです!五石順一社長は、集中すると素晴らしい威力を発揮するタイプですね!

五石順一:集中すると、寝食忘れて取り組むタイプです。気づいたら、何日もお風呂に入っていないこともよくある話です。浪人の時はまさにそういう異常な生活を送っていました。

新谷哲:だからこそ上場企業の社長になれるのだと感じます。座右の銘もお聞きして「バカであれ」とお答えいただきました。こちらを選ばれた理由はございますか?

五石順一:この「バカであれ」は、スティーブ・ジョブズが言っていた「”Stay hungry, Stay foolish.”(ハングリーであれ、バカであれ)」から引用したものです。バカというのは、解釈が難しい言葉です。世間的に不可能だと思われることを「いや、出来るのだ!」と思うのは、成功後は世の中から賞賛されますが、最初はクレイジー扱いされるのが常です。機械翻訳も同様で「何、馬鹿なこと言っているのだ」と皆からクレイジー扱いをされました。しかし、誰からも反対されないアイデアからは、イノベーションは起こらないと思います。全世界の人からバカにされ、批判され、「出来るわけない」と見放されても「やる!」という気概がないと、イノベーションは生まれないという意味合いです。

新谷哲:すばらしいお話です。次が最後の質問です。全国の経営者、これから起業する方に向けて、経営者として成功する秘訣をお教えください。

五石順一:私は、全然成功していないし、何かを成し遂げるのはこれからだと思っています。「上場おめでとう」は「誕生日おめでとう」くらいの意味合いではないでしょうか?ただ、今の状態まで来ることが出来たのは「失敗の捉え方」にあると思います。多くの人は、壁を乗り越えられず、諦めてしまう状態を失敗と捉えます。私はこの壁を、階段だと思っているのです。時に階段のステップが、高くて壁のように見えるかもしれませんが、これを乗り越えるとゴールがあります。松下幸之助の言葉で、「失敗した所で止めるから失敗になる。成功するところまで続ければ成功になる。成功する為に最も必要なのは、諦めず成功するまで続けることである。」というものがあります。創業者や社長業は、側から見ると派手に見えますが、実はとても辛く、苦しく、孤独で、悲しく、寂しく、耐えることばかりです。私は、このメンタルトレーニングに耐え続けられるのか。日々の孤独感、挫折感、をいかに乗り越え踏ん張るか、地味でしんどいですが、これが一番重要だと感じます。

新谷哲:ありがとうございます。私も創業者なので、心に沁みました!

五石順一:格闘技も経営も全く同じで、辛い時期を乗り越えることで次に目指すものがあります。トレーニングに耐える苦行です(笑)

新谷哲:とても共感です!五石順一社長、本日はありがとうございました。

五石順一:ありがとうございました。

編集後記

今回は、五石順一社長でした。素晴らしい社長様です。仰る通り、苦行・修行が経営です。最近では鬼滅の刃が流行っていて、「全集中、水の呼吸!」などとよく言われています。五石順一社長は、集中することで、京都大学法学部の入試に合格し、株式会社NOVA、株式会社ロゼッタを上場まで導かれました。お話を聞いていて、とても勉強になり、私も諦めずに頑張ろうと感じました。ぜひ皆様も参考に、共に成功社長を目指していきましょう!

五石順一氏
株式会社ロゼッタ 代表取締役CEO

京都大学法学部卒業。その後、株式会社NOVAにて経営企画室長として同社を上場に導いた後、社内ベンチャーとして翻訳・通訳事業を行う株式会社GLOVAを創業されました。2004年にはエンジェルの支援を受けMBOで独立し、株式会社ロゼッタを創業、代表取締役に就任されました。現在、シン・ミッションである「グローバル・ユビキタス(人類を場所・時間・言語・物理的な制約から解放する)」の実現を掲げ、本社機能をVRに移されるなど先進的な活動に注目を集めています。

※本インタビューへの出演をご希望の方はこちらよりご応募ください。

本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、五石順一氏(株式会社ロゼッタ 代表取締役CEO)の経営者インタビューを取り上げました。

『社長の孤独力』抜粋版(PDF29ページ)
無料プレゼント中!

『社長の孤独力』(新谷哲/著) の【抜粋版】を無料プレゼントしております!

71の課題の中から「資金・人材・売上・採用・後継者」の5つを抜粋いたしました。銀行からお金が借りれない社員がすぐに辞めてしまう売上を伸ばしたい、など、具体的なお悩みの解決策が掴めます。ぜひご覧ください。

無料プレゼントの詳細はこちら