成功経営者インタビュー

株式会社レアジョブ 代表取締役社長 中村岳氏 インタビュー

本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、中村岳氏(株式会社レアジョブ 代表取締役社長)です。(2022年7月6日 2022年7月13日 配信)

今回は、東証プライム市場へ上場する株式会社レアジョブの中村岳社長にお越し頂きました。

フィリピン人講師を登用することで、利用しやすい価格でありながら高い学習効果の得られるオンライン英会話「レアジョブ英会話」をはじめ、AIビジネス英語スピーキングテスト「PROGOS®」などアセスメントを軸に事業を展開されています。フィリピンで活躍する日本人経営者としても広く知られる中村氏の、愚直で行動力溢れるエピソードから、経営のヒントが得られます。ぜひ、インタビューをお読みください。

新谷哲:今回の経営者インタビューは、株式会社レアジョブの中村岳社長です。まずは経歴のご紹介です。1980年生まれ、東京都出身。開成中学校・高等学校を卒業後、東京大学 工学部電子情報工学科・東京大学大学院 情報理工学系研究科へと進学をされます。その後、株式会社NTTドコモに入社。そして、2007年に株式会社レアジョブを共同創業し、2015年に代表取締役社長にご就任。2014年には東証マザーズに上場し、2020年に東証一部上場(現・東証プライム市場)に市場変更をされています。本日はよろしくお願いします。

中村岳:よろしくお願いいたします。

新谷哲:最初の質問です。ご出身はどちらですか?

中村岳:生まれは三重県ですが、静岡県を経て、4歳の頃に東京の佃に引っ越してきました。父の転勤で6歳から2年ほどエジプトに住んだこともありましたが、また戻ってきたので一番東京で過ごしている期間が長いですね。

新谷哲:私も佃に住んでいたことがあるので、お会いしていた可能性もありますね!小学校時代はどのようにお過ごしでしたか?

中村岳:ものづくりが好きでした。例えば、小学校4年生の時に「全日本学生児童発明くふう展」に応募をし、自動ハエ叩きを発表し佳作を頂いたことがあります。当時、たまたま祖父母の家に行ったときにハエがいて「ハエ叩きが自動でできたら面白いな」と思いつき、近くにあった竹にゴムをつけてハエを打ち落とすものを作ったのです。本当にくだらないものですが、大人が思いつかないような新しいことを考え形にしていくのを楽しんでいました。

新谷哲:発想力が豊かなお子様だったのですね。その後、開成中学校・高等学校へ入学されます。国内トップクラスの進学校に合格をされるとは、とても成績優秀だったのですね!

中村岳:小学校4年生頃から塾に通い始めたおかげか、ある程度良い成績は取れていました。特に算数が好きで、算数オリンピックに出場し上位入賞することもありましたね。国語や社会はそこまで得意ではなかったのですが、算数が得意だと受験が有利になるので、中学受験の候補は比較的自由に選べました。その中でも同校を選んだきっかけは「一番面白そうだ」と直感したからです(笑)。

新谷哲:当時の思い出はございますか?

中村岳:小学校の頃から少年野球に所属していたので、中学でも野球部に入り頑張っていました。とはいえスポーツ校ではないので、他の時間は勉強や友達との時間に費やしていましたね。

新谷哲:その後、東京大学 工学部電子情報工学科に進学されます。こちらを選ばれた理由はございますか?

中村岳:私は「将来ものづくりの道に進みたい」と考えていたため、得意分野でもある理系に焦点を絞り、志望校を選びました。その中でも、東京大学が一番いろいろな経験ができるので望ましいだろうと、受験をすることに決めました。当時は、海外の大学に行くという考えが頭に無かったので、今だったらまた違う選択をしていたかもしれません。

新谷哲:大学時代はどのようにお過ごしでしたか?

中村岳:学業に励みながらも、サークル活動、飲み会、麻雀、競馬などを楽しんでいました。しかし、大学4年生からは研究室に入ったことにより、泊まり掛けで研究に没頭するようなハードな生活を送ることとなります。そこでは「ツライことがいい!」を合言葉に、だいぶ鍛えられましたね…(笑)。

新谷哲:その後、東京大学大学院 情報理工学系研究科へと進学をされます。大学院に行こうと思われたきっかけはございますか?

中村岳:研究をしていて、分からないことがまだまだたくさんあると気づいたので、理解を深めるためにも進学を決めました。

新谷哲:当時の思い出はございますか?

中村岳:研究に多くの時間を費やす中で「自分はそこまで研究職には向いてない」ということが見えてきました。そのため、ドクター(博士号)まで取得するのではなく、就職をしようとインターンに参加をしたりしていました。

新谷哲:大学院卒業後は、株式会社NTTドコモにご入社されました。こちらを選ばれた理由はございますか?

中村岳:大学でネットワーク系の分野を研究していたので、国内企業最大のインフラを持つ株式会社NTTドコモに就職を決めました。当時は、主流だったフィーチャーフォン(ガラケー)から、Wi-Fi搭載のスマートフォンへと進化していく予想が既にされていました。そのため私は、同社の携帯電話サービス開発へと従事し、世の中を変えるようなイノベーティブなもの・サービスを作っていきたいと考えていました。

新谷哲:当時の思い出はございますか?

中村岳:入社から半年間はドコモショップで研修をしました。私が働いた店舗には外国の方がよくいらしたので、対応をしていて「英語でコミュニケーションを取ることが楽しい!」と感じた思い出があります。しかし研修後は、横須賀の山奥にある研究所に配属をされ、大変な思いをしました…。当時は、配属部署への希望が叶わず今後についていろいろと考えましたね。

新谷哲:2007年には、株式会社レアジョブを加藤智久様と共同創業されています。株式会社NTTドコモをお辞めになる際、周囲からの引き止めはございませんでしたか?

中村岳:ありませんでした。会社設立を決めたタイミングで退社を伝えたので、おそらく上司は「腹が決まっているから何を言っても無理だろう」と思っていたのではないでしょうか。また、もともと両親は安定志向のNTTドコモに入社したことを「意外と攻めていないな」と感じていたようなので、心配はあったでしょうが反対されることはありませんでした。

新谷哲:起業されたきっかけはございますか?

中村岳:中学校・高校の同級生であり、レアジョブの共同創業者である加藤から刺激を受けたのがきっかけです。彼は、学生時代から「起業をしたい」と考えていたタイプでした。そのための準備として、大学の頃に1年間休学をしてベンチャー企業で働いたり、卒業後には独立する前提で外資系コンサルティングファームに就職をしたりと、いろいろな取り組みをしていました。そんな話を聞き「面白そうなことをやっているな」と感じ、私も共に夜の自由な時間を使い勉強会への参加や、サービス開発を行うようになっていきました。私は彼とは違い「起業は、モノ・サービスを広げるための手段」と考えていて解釈に違いこそありましたが、そんな2人が一緒になり試行錯誤したことで、起業に繋がる良いサービスを作り上げていけたのだと感じます。

新谷哲:当初は、どのようなサービスを展開されていたのですか?

中村岳: Webの人材採用サービスです。そこでたまたま、英語・日本語・中国語を話すことができる中国人求職者と知り合ったので、その人を活用しオンラインで中国語を提供するサービスを開始しました。しかし、サービスを広めるため「無料でいいので使ってください」と生徒を募っても、中国語の知識や使う場面の無い日本人にとっては「勉強をしても面白くない」と継続していだくことができませんでした。そんな中「英語だったらやる」というご意見を頂き、需要にお応えするためオンラインで英語を提供するサービスにシフトしていきました。この時、私たちはどの国の方へ講師の依頼をするのが最適か調査をしたのですが、その結果、フィリピンへの可能性に着目し、起業へと一歩ずつ踏み出していったという経緯です。

新谷哲:創業後のご苦労はありましたか?

中村岳:いろいろありましたが、大きく言えば3つの苦労がありました。まず1つ目は、フィリピンへの概念を変えていくことです。弊社は、2007年にフィリピン人講師を登用し英語学習サービスをスタートしました。当時の日本では「英語は欧米系の方から学ぶもの」というのが一般的な考えで、アジアの方から学ぶという発想はありませんでした。ですから、フィリピン人講師から英語を学ぶと打ち出すと、発音や文法は大丈夫なのかなど心配の声が多くあがりました。この様な懸念は、フィリピンのことをよく知らないことに起因していて、実際にサービスを利用していただくことで「フィリピン人って英語が上手ですね!」と皆さんが驚かれ、反応はがらりと変わっていきました。

2つ目は、マネジメントです。日本とフィリピンでは文化が違う為、講師の考え方を日本にアジャストさせていく必要がありました。例えば、時間についてです。日本人の場合は、1分の遅刻でも「なぜ?」となる人が多いですが、フィリピン人はそこまで時間にシビアではありません。講師向けパーティーを4時から開催すると告知しても、実際に人が集まり始められるのは5時だったりするのです。レッスン開始の時間を厳守していけるよう、しっかりと認識の差を伝えていきました。

3つ目は、不安定なインフラへの対策です。サービスはオンラインで提供する為、フィリピンのインフラが非常に弱かったことには頭を悩ませました。出張で1週間滞在すれば、一度は停電に出くわし、台風が来れば確実にインターネットは使えません。ネットの品質も今とは違い、様々な要因で回線が遅くなります。例えば、雨が降ると家の中やインターネットカフェで過ごす人が増え回線が足りなくなったり、ケーブルが外に出ていてネズミにかじられていたりと、問題が山積みでした。そのため、自社オフィスに2つのプロバイダ回線を引き1個が落ちたら切り替えたり、悪天候になりそうな際にはバックアップ体制を整え上手く生徒さんにご案内したりと、インフラを安定させるため様々な工夫をしていました。

新谷哲:とても地道に取り組まれていたのですね。

中村岳:はい。オンラインレッスンをスムーズにご利用いただくため、アナログかつマンパワーをかけ改善していました。それに伴い、少しずつ生徒数が増加していったので、効率的に回していけるよう自動化する仕組みを構築していきます。例えば、レッスンができなくなり代わりの講師を手配する作業などは、この段階から自動化を進めました。地道に、インフラ・システム・オペレーション等、一つひとつハードルをクリアしていったことが功を奏したと感じています。

新谷哲:2014年には東証マザーズに上場をされています。会社設立当初から上場をお考えでしたか?

中村岳:一つの通過点として捉えていました。当初より「会社を大きく成長させたい」と考えていたので、2007年10月に会社を立ち上げ、2008年4月にはグローバル・ブレイン株式会社というVC(ベンチャーキャピタル)から資金調達を行いました。そこで、エグジットさせるためにも「IPOを目指そう」と決めたのです。

新谷哲:上場に向けてのご苦労はございましたか?

中村岳:一番苦労したのは実務を担っていたCFOだと思いますが、フィリピンでの統制を取ることにはかなり苦労しました。当時のフィリピンでは、まだ法律が定まっていない部分があり、弁護士や会計士によって判断が異なりました。例えば、講師の源泉徴収です。「講師」は何にあたるのか見解がどんどん変わったことにより、上場の直前に3期分ほど決算を修正する必要が出ました。それにより、直前期が債務超過となってしまい、証券会社や監査法人の指示を仰ぎ引当金を当てて対応することになりました。フィリピンで上場している企業はほとんどないので、経験のある人材を集めることも、課題に対しどう折り合いをつけていくかも、難しい点が多かったです。

新谷哲:ありがとうございます。もしよろしければ、株式会社レアジョブの事業内容をお教えいただけますか?

中村岳:弊社のメイン事業は、オンライン英会話サービスです。特徴としては、約6,000名の講師陣とオンラインで繋がり、マンツーマンで英会話が学べるという点です。レッスンは、個人・企業・幼児・教育機関様向けに、それぞれ初級・上級・フリートークと豊富にカリキュラムをご用意しているので、効率よく英語力を伸ばしていただけます。また、学習の中では自分の能力を把握する必要があるので、これまで蓄積したノウハウとAI技術を活用し、自動でスピーキングテストができる「PROGOS(プロゴス)」というものを開発し、リリースしました。PROGOSでは 20分間ほど英語スピーキング力をテストするだけで、数分でCEFR(セファール)という言語能力を評価する国際指標をベースにした採点結果を確認することができます。これを3か月、半年と定期的に用いることで英語スピーキング力の伸びを可視化し、英会話力を向上させるための最適なトレーニング内容をご提案させて頂いております。その他にも、グループ会社の株式会社資格スクエアでは、弁護士や弁理士などの資格取得支援講座をオンラインでご提供するなど、グループ全体で様々なサービスを取り揃え、誰もが国内外でグローバルに活躍できるスキルを身に付けて頂けるよう取り組んでいます。

新谷哲:ありがとうございます。ここからは違う質問をさせていただきます。好きなもの、好きなことで「野球、スノーボード、温泉、お得なこと、海外出張、カフェでまったり」とお答えいただきました。今でも野球を続けていらっしゃるのですか?

中村岳:最近はなかなか行けていないのですが、社会人になってからも草野球に出かけたり、アメリカを訪れる機会があったら観戦に行ったりと楽しんでいます。野球は、小学校3年生に少年野球へ入った頃から続けているので、自分の人生を振り返ると、いろいろなことに手を出すというよりも、1つのことをずっとやっていく方が多いなと感じます。

新谷哲:座右の銘もお聞きして「やりたいことをやろう・ストーリーを語ろう・変化を生み出そう」とお答えいただきました。こちらを選ばれた理由はございますか?

中村岳:これは、弊社の行動指針「RareJob Way」です。1つ目の「やりたいことをやろう」では、自分自身、主体的にいろいろなことへ挑戦をしていきたいと考えています。2つ目の「ストーリーを語ろう」は、経営をする上で特に意識していることです。もちろん、人事やM&A情報など表に出せないものもございますが、ステークホルダーの皆様へ納得感に繋げていくためにも、透明性を持ち経営を行い、可能な限り社内外に説明をしてくことが大切だと感じています。実際、ストーリーなく物事を進めた場合うまくいかないことが多いので、ロジックのあるストーリーを組み立てていけるように取り組んでいます。3つ目の「変化を生み出そう」は、年齢が上がったり、会社が大きくなっていったりするにつれ、変化を起こすことは難しくなってくるので意識するようにしています。もちろん日々の改善も重要ですが、私はもっと大きなイノベーションを起こしていきたいと考えているからです。

新谷哲:ありがとうございます。次が最後のご質問です。全国の経営者、これから起業する方に向け、経営者として成功する秘訣をお教えください。

中村岳:私は、まだまだ成功しておりませんが、意識していることは「諦めずに最後までやり抜いていくこと」です。上手くいかないことが多くとも、諦めずにやり抜くことで、いずれ希望が訪れ道も開けていくと信じています。

新谷哲:大変参考になるお話でした!中村岳社長、本日はどうもありがとうございました。

中村岳:ありがとうございました。

編集後記

今回は、中村岳社長でした。東京大学大学院をご卒業されている非常に頭の良い方ですが、その裏ではとても地道な努力をされておりましたね。聡明で理路整然とされている、素晴らしい経営者様でした。ぜひ皆様も参考に、共に成功社長を目指していきましょう!

中村 岳氏
株式会社レアジョブ 代表取締役社長

1980年生まれ、東京都出身。開成中学校・高等学校を卒業後、東京大学・大学院へと進学し、情報理工学を専攻。その後、株式会社NTTドコモにご入社し、次世代通信の研究を行われます。エンジニアとして働くなか、個人と個人をつなぐ新しいビジネスの立ち上げを考案し、中学校・高校の同級生である加藤智久氏とともに、2007年にレアジョブを共同創業し、2015年に代表取締役社長へとご就任をされました。同社の提供する、オンラインでフィリピン人や日本人講師と英会話レッスンを受けられる「レアジョブ英会話」は、リリース以降高い評価を得て、急成長をされました。さらに、2014年 6月に東京証券取引所マザーズへ上場し、2020年 11月には東京証券取引所市場 第一部へ市場を変更(現・プライム市場上場)。現在は、オンライン英会話をはじめAIビジネス英語スピーキングテスト「PROGOS®」などアセスメントを軸とし、個人・法人・教育機関を対象に事業を展開されています。

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本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、中村 岳氏(株式会社レアジョブ 代表取締役社長)の経営者インタビューを取り上げました。

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