本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、島津清彦氏(株式会社ZENTech 代表取締役CEO)です。(2019年8月21日 2019年8月28日 配信)
今回は株式会社ZENTech代表取締役CEOの島津清彦社長にお越しいただきました。スターツグループの取締役を歴任された後、株式会社シマーズや株式会社ZENTechを設立された経営者です。起業後に禅と出会い、自身の経営哲学と共通する部分があると気付き、座禅を経営に生かす活動をされています。スティーブ・ジョブズなどの著名な経営者が禅を取り入れるエピソードなどをお話しいただきました。ぜひ、経営者インタビューをお読みください。
新谷哲:今回の経営者インタビューは島津清彦社長です。まずはご経歴をご紹介します。スターツコーポレーション取締役人事部長、スターツコーポレーション専務取締役、スターツファシリティーサービス代表取締役社長、スターツピタットハウス代表取締役社長を歴任され、その後、株式会社シマーズ、株式会社ZENTechを設立され経営者となられます。島津清彦社長、よろしくお願いいたします。
島津清彦:よろしくお願いいたします。
新谷哲:最初のご質問です。ご出身はどちらになられますか?
島津清彦:出身は、東京都江東区の深川です。最寄り駅でいうと、門前仲町や木場になります。
新谷哲:では下町っ子という感じですね。
島津清彦:そうですね、下町ですね。
新谷哲:小学校・中学校時代はどのようにお過ごしになりましたか?
島津清彦:小学校・中学校時代は、学年で一番背が低く、自分の身を守るためではないですが、周囲を明るく笑わせていました。
新谷哲:では今の島津清彦社長と同じで、明るいご性格というか、そんな感じですね?
島津清彦:先生からの通知表にはよく「明るくて楽しくて朗らかですね」と書かれました。
新谷哲:高校は、東海大附属高輪台高校に進まれていますが、選ばれた理由はございますか?
島津清彦:本当は都立に行こうと思っていたのですが、先生から「内申的に駄目だ」と言われて反発をしました。ある程度チャレンジする高校を受験しようと調べ、高輪台が良さそうだと思い選びました。
新谷哲:高校時代はどのようにお過ごしになりましたか?
島津清彦:体が小さかったので卓球部に入りました。楽しかったのですが、マイナースポーツだったのであまり気合いを入れられませんでした。また友達と一緒にお笑いコンビを結成して、お笑い番組に出演してチャンピオンになったことがあります。
新谷哲:そうすると、吉本興業に入られていたかもしれない、という感じですか?
島津清彦:そうですね。多分若い人はご存知ないと思うんですが、テレビジョッキーという番組のお笑いコーナーに出て、そこでチャンピオンになりました。そのまま勝ち進んでいけば、本当にお笑いの世界にいたかもしれません。
新谷哲:ちょっと驚きなお話しでございます。大学はそのまま東海大学に入られたのですか?
島津清彦:そうです。東海大学の経済学部に進みました。
新谷哲:大学時代はどのようにお過ごしになりましたか?
島津清彦:完全にアルバイト一筋でした。自宅から大学が遠かったので、部活よりアルバイトをしようと思いました。浦安の駅前のマクドナルドのグランドオープンと同時に応募しました。アルバイトが100人以上いたのですが、早い段階で店長からスイングマネジャーになれと言われました。大学時代はとにかくマクドナルド一筋で、勉強はあまり熱心にしなかったです。
新谷哲:ではアルバイトだけど、社員みたいな扱いだったのですか?
島津清彦:そうですね、半分社員みたいな感じでした。売上の管理から商品、バンズの仕入れ、クルーのスケジュール管理まで。人、物、金の全てを任せられました。
新谷哲:マクドナルドでは、何か学ばれましたか?
島津清彦:アルバイト100人以上いると、仲が良い悪いで派閥ができます。そういう人達を上手くまとめたりしました。あと、パンが足りない時に他のお店から借りたりするなど、調整能力を学びました。
新谷哲:大学時代に、お笑いはされなかったのですか?
島津清彦:マクドナルドが本当に楽しかったので、お笑いはやらなかったです。
新谷哲:卒業後、マクドナルドに就職することは考えられなかったのですか?
島津清彦:社員から熱心に誘われましたが、現場を見すぎてしまったので違う道に行きたいと思いマクドナルドは断りました。
新谷哲:なるほど。その時にマクドナルドを選んでいたら、もしかするとマクドナルドの役員とか社長になっていたかもしれないですね。卒業後に新卒で入社されたのは、スターツグループですか?
島津清彦:そうです。社員数はまだ100人ぐらいのスターツグループでした。当時の就活環境はすごく良く、大手の都市銀行や流通百貨店の内定をいくつも取るような時代だったのですが、僕はベンチャー企業しか見ませんでした。将来伸びる会社、自分がそこで社長になれるような成長ができる場所を探し、その中で一番相性が良かったというか、ピンときたので選びました。
新谷哲:ご入社されたのは、上場前ですか?
島津清彦:上場する2年前に入社しました。
新谷哲:スターツグループでは色々な役職を経験されていますが、どのように出世をされたのですか?
島津清彦:在籍していたのは25年で、普通の営業マンから始まっています。ピタットハウスの店長や人事部長、ホールディングスの専務、あと2つ事業会社の経営者をやらせていただきました。出世できた理由の1つは単純に、会社の考え方や相性が良かったことです。やりたいことというか、会社に対しての不満や、もっとこうすべきという提案を積極的に発言するタイプを面白がっていただきました。組織の起爆剤という感じで見ていただいていたと思います。あと、就職活動で最終面接の時に「君はどこまで出世したいですか?」と質問されて「社長になります」と言いきっているので、起業志向が強かったことが結果に繋がったと思います。
新谷哲:最終面接で「社長になります」とおっしゃった方は、珍しいのではないですか?
島津清彦:面接で言うのは珍しいと思いますが、僕の年代では起業志望は多いです。当時の会社はベンチャーみたいなところなので、上昇志向の人間が集まってきていました。
新谷哲:でも同期の中でもこれだけの経歴だと、ほぼ勝ち組ではないでしょうか?
島津清彦:そうですね。同期の中では一番という感じでした。
新谷哲:一番出世された理由を、どのように分析されていますか?
島津清彦:実は、自分でも何が良かったのかがよく分からないです。何なのでしょうかね(笑)。
新谷哲: 2012年にスターツグループを退職されますが、その時は東証一部に上場されていましたか?
島津清彦:東証一部にはまだなっていませんでしたが、グループで社員が5000人ぐらいいました。
新谷哲:辞められることに躊躇はございましたか?
島津清彦:辞めることに対する躊躇はなかったです。25年の中で何度か辞めたいという話をしたことがあります。辞めるきっかけになったのは震災で自宅が被災したことです。自分の人生観を見直す体験をしたことが1つの引き金になって、覚悟を決めました。
新谷哲:株式会社シマーズを起業し経営者となられますが、恐怖心などはございましたか?
島津清彦:起業して経営者になることに対して恐怖心はなかったのですが、起業してからのことに関して恐怖心はありました。
新谷哲:事業内容は、いわゆるコンサルティング業、組織開発業、人材教育業ですが、起業の時点でこの分野の経営を行うことを計画していたのですか?
島津清彦:そうですね。会社を辞めてから「自分は何が得意なのだろう?何ができるのだろう?」と考えて、事業内容を決めました。
新谷哲:先ほどと同じようなご質問になりますが、起業してからのことに関して恐怖心があったとご発言されましたが、実際にはどのような恐怖心やご苦労がございましたか?
島津清彦:スターツグループで専務だった時、少し傲慢な、肩書に笠を着たマネジメントをしていました。今思うと最低なのですが、「専務の言うことが聞けないのか!」的なマネジメントです。そのため信頼が得られなくて随分悩みました。起業する時には、自分なりに経営の絵を描きます。「このサービスが何件売れていくらになる。過去に会ったあの方はそのサービスを使っていただけるだろう」という絵を描きました。しかしそれが上手くいかず、計画していたものが崩れていく絵を描いてしまいます。受注したとしても、入金までのことを考えると、「このままこのペースで経営をすると、自分で準備していた資本金とか何月何日までに無くなる日」ということが計算できてしまいます。口座からお金が無くなっていく音が夜中、寝ている時に聞こえることもあり、お金に対する恐怖というのが一番大きかったです。
新谷哲:なるほど。私の島津清彦社長に対するイメージは「禅のコンサルタント」なのですが、起業するときから禅の分野を経営しようと考えていたのですか?
島津清彦:禅との出会いは起業後です。私なりの経営哲学、経営スタイルをいろんな方にお話したら、「島津清彦社長の人を軸とした経営スタイルは禅的だ」と色々な方から言われた。またスティーブ・ジョブズのような著名な経営者が禅に傾倒している、と聞いた時に色々調べ、禅寺に通うになります。座禅を組んだ時に「これだ!」と感じました。そして「なぜ、禅の教えを多くの経営者が取り入れないのだろう?」と感じ、経営者に禅を広めるために取り込んでいくべきだと感じました。
新谷哲:今回、株式会社ZENTechを起業されていますが、どのようなことを狙って起業されたのですか?
島津清彦:もともと株式会社シマーズで、禅のコンサルティングやリーダーシップ研修をしていました。「座禅 研修」で検索をすると、シマーズが1位になったのですが「ちょっと待てよ。自分の体は1つで、禅のコンサルティングは誰にでもできる分野ではない」と気付きました。だから自分の弟子を育てていくというのと合わせて、VRやAIなどのテクノロジーを使って、生身の自分じゃない何か形を作りたいと思い、株式会社ZENTechを起業しました。現在は、VTuberという形で禅の教えを発信するなどの活動をしています。
新谷哲:島津清彦社長は「仕事に活きる禅の言葉」、「翌日の仕事に差がつく おやすみ前の5分禅」という本を2冊出していらっしゃいます。経営者の皆様も是非、本も読みながら株式会社ZENTechの動きも見ていっていただければと思います。ここからは違うご質問をいたします。「好きなもの・好きなこと」で「自然・家族・仲間・座禅・読書・自然に浸る・人に話すこと・説法」とお答えいただきました。もう完全に座禅がお好きと言う感じですね(笑)。しかし私は「自然」というお答えに興味を持たせていただきました。自然がお好きなのですか?
島津清彦:自然好きですね。
新谷哲:どんなところに行かれたりされるのですか?
島津清彦:具体的には、青森県十和田市の奥入瀬渓流です。私が出家したお寺があるところです。あとは沖縄・伊豆大島に行くことが非常に多いです。沖縄は、祈りの場所がある聖地や、久高島という神の島などがあり、伊豆大島は火山や裏砂漠などの大自然があります。どこも非常に自然の素晴らしいところで、定期的に行っています。
新谷哲:自然がお好きなのは、スターツ時代からでしょうか?
島津清彦:スターツ時代は体をハードに動かして、皆と楽しくゴルフやお酒という生活をしていました。自然については、あまり意識として行っていなかったです。
新谷哲:では、座禅に出会われてから自然がお好きになったのですね。座禅に出会われてから、人生が変わったのですか?
島津清彦:変わりました。禅は修行していくと、自然体とか、ありのままとか、あるがままとか、自然というものに繋がります。これは自然の中に身を置くことで自分の中に持っている感覚を研ぎ澄ましていくので、定期的に自然に身を置かないと消耗しますよ。だから自然からエネルギーをもらっています。
新谷哲:座右の銘もお聞きしまして、「一日一生」とお答えいただきました。こちらを選ばれた理由はございますか?
島津清彦:これは禅と出会う前、スターツ時代から座右の銘にしています。意味は一日を一生と思って生きる。朝生まれて夜死ぬ、ではないですが、後悔しないような人生をということです。禅や仏教にも同じような考え方があるので、禅を学ぶ前と後で変わっていないという感じです。
新谷哲:次が最後のご質問になります。全国の経営者、これから起業する方に向けて、経営者として成功する秘訣をお教え下さい。
島津清彦:振り返って考えると、経営者として成功する秘訣は「コツコツやり続けること」しかないです。「これを絶対成し遂げる」と強く思ったら、本当に一生懸命やり続けるしかありません。「自分が何のために起業するのか?」という経営ビジョンが定まったならば、あとはそれに向かってコツコツと動き続ける、太鼓を鳴らし続ける、ひたすらずっとそれを言い続ける。結局、経営者として成功する秘訣は、それしかないと思っています。
新谷哲:「一日一生」とも繋がる秘訣をお教えいただきありがとうございます。島津清彦社長、本日はどうもありがとうございました。
島津清彦:ありがとうございました。
編集後記
島津清彦社長にインタビューをして「さすが禅の先生だ」と感じました。私も島津清彦社長の座禅の講座に何回か行かせていただいています。スティーブジョブズや松下幸之助も座禅をしていますので、座禅・瞑想という分野を経営者が学ばれることは良いことだと思っております。特に「コツコツやり続けること」は、私のテーマでございます。インタビューをお読みの皆様も、コツコツ一日一生と思い、成功経営者を目指して下さい。
島津清彦氏
株式会社ZENTech 代表取締役CEO
1965年東京都生まれ。元スターツピタットハウス代表取締役。元ソニー不動産取締役。2012年に独立。その後、多くの世界一流のリーダーが禅にたどり着くことを知り、自らも出家得度して仏門入り。経営者と禅僧という二つの顔を持ちながら、官公庁や数多くの企業へ禅を活かしたコンサルティングや研修、講演、坐禅指導などを行う。
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本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、島津清彦氏(株式会社ZENTech 代表取締役CEO)の経営者インタビューを取り上げました。
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