“ど・じ・こ・ひ・め・か・み”の法則

人はなぜ旧来の思考パターンや行動パターンから抜け出せず、なかなか変化できないのだろうか。その原因は“ど・じ・こ・ひ・め・か・み”に集約される。つまり“ど・じ・こ・ひ・め・か・み”を克服できれば、変化・革新・成長へとステップを進められるようになるだろう。変化への最初の一歩を踏み出すことはけっして難しくない!

変化できない7つの理由

いまの時代、改善や革新などたえずみずからに変化を起こさなければスピードについていけず、成長がかなわずに衰退へと追いやられてしまう。これは、わかりきった現実である。社員向け行動指針などに「革新」「変化」「成長」などのキーワードを盛り込んでいる企業は数多い。

しかし、わかりきっていても旧来の思考パターンや行動パターンから抜け出せないのが凡人だ。なぜ変化できないのだろうか。日本人は農耕民族だから、島国だから云々の分析もそれはそれで一理あるが、ビジネス活動の舞台でもっと身近に考えたい。あるとき、取材先の食品メーカー社長から「変化を避ける理由は“ど・じ・こ・ひ・め・か・み”の法則があるからだ」と聞かされた。

“ど・じ・こ・ひ・め・か・み”の法則とは、以下のとおり。
ど・・・どうにかいまやっているから、そのうちにやるよといって、やらない
じ・・・時間がかかるといって、やらない
こ・・・効果がないといって、やらない
ひ・・・人手がないといって、やらない
め・・・めんどうだといって、やらない
か・・・カネがないといって、やらない
み・・・三日坊主に終わってしまう

「ドジな子供のお姫様を神様が救ってくださった」と覚えればよいという。変化に迫られたときや、新たな方法を求められたときに、まず変化できない理由探しに入ってしまい、旧来のままであろうとする。その習性から容易に抜け出せないのだ。ここでモチベーションの高低を指摘して従業員を追及することは、あまり得策ではあるまい。

できない理由を潰して商品開発

どうすれば変化できるのか。変化の一歩を踏み出せる指針を示す必要がある。「だれがみても変わったとわかるようなことが実行されていなければ、変化したとはいいません。だれがみても変わったといわれるためには、いまと逆の方法を実行すればよいのです」と前出の社長は断言する。

たとえば、訪問営業を主体に売り上げをあげてきたのならば、訪問しないで売り上げをあげる方法を検討する。低価格の商品を販売してきたのならば高価格の商品を開発する。あるいは、社内で取り組んできた業務を他社にアウトソーシングする――等々。

「御社はどんな方法で変化をうながしてきたのですか?」と問うたところ、低単価の日配弁当用の食材を製造してきた路線を一部変更し、高単価弁当用のキットを開発したという。一般に日配弁当製造業者は高単価弁当の製造販売に対して、以下のような理由で消極的になっているという。(1)少量しか販売できない、(2)手間がかかる、(3)あまり効果がでない、(4)いつ、どのぐらいの注文がくるのかがわからない。

これら変化できない理由をどうくつがえすか。同社は11品目で構成した「松花堂弁当キットセット」を開発して、変化できない理由をくつがえした。在庫ロスや当日注文の問題の解決にくわえて、収益貢献の高い商品に仕上げた。売価を800円に想定し、1食で粗利益350円を確保できるように構成した。低価格弁当の平均的な粗利益の約2倍であり、かりに1日10食の注文が入れば、1カ月(24日と仮定)で8万円以上の粗利益が確保される。低価格弁当の注文が1日20食増える計算だ。

“ど・じ・こ・ひ・め・か・み”にとらわれていたら、たぶん「松花堂弁当キットセット」の開発は頓挫しただろう。“ど・じ・こ・ひ・め・か・み”をひとつひとつ潰すことが、変化から革新へと飛躍する第一歩なのである。

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