最近あなたは、泣いていますか?医学的に証明された涙の効用

連日の残業でたまる一方の疲労、難しい人間関係、会社にいるとストレスはつきものだ。思いっきり笑うことはストレス解消になるというが、じつは、思いっきり泣くことでもストレスは解消されるのだ。ただし“ある種の涙”に限られるのだが……。

泣いたらすっきりする!?

涙を流したら、泣いたあとで気分がすっきりした――。誰でも一度は経験があるだろう。これにはちゃんとわけがある。今回はこの「涙」にクローズアップしてみた。

「涙――人はなぜ泣くのか」(石井清子訳 日本教文社1990年刊)の著者である、アメリカのウィリアム・H・フレイ博士は、1985年に涙の研究で注目された。博士の研究によると涙の種類は3つある。
(1)基礎分泌による涙(2)刺激による涙(3)感情による涙
そして基礎分泌による涙や刺激による涙と、感情による涙の成分には違いがあることを発表した。博士は、タマネギを切ったときに出た涙と、映画に感動して出た涙を分析して、成分の違いを比較した。

すると、映画に感動して出た涙、つまり感情による涙からは、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が検出された。このACTHは、ストレス反応として分泌されたホルモンなので、泣くことで体の外へ涙と一緒にストレスが出て行っているということになる。

これを検証するため、東京女子医科大学では、涙を流す前と後での、血液中のストレスホルモンの測定した。すると、涙を流した後ではACTHが減少していたそうだ。感情の涙を流すと、ストレスが去り、すっきりするというわけだ。

涙を我慢すると体に悪い

赤ちゃんは泣くのが仕事だ。泣くことが意思の伝達方法なのだから。赤ちゃんはストレスを発散させるために泣いているという。ストレス発散のために泣いている赤ちゃんの対処方法は、成長に影響があるともいわれている。

たとえば、泣いている赤ちゃんを、うるさい! と放っておくと、親から離れている不安感から、人を信用できない臆病な子になるといわれている。また、無理やり泣きやませても、将来は人をいじめたりする子になる危険性もあるのだそうだ。赤ちゃんが泣いたら、やさしく抱きしめて、泣きたいだけ泣かせてやるのがいいらしい。

大人でも泣くのを我慢すると弊害がある。せっかく出て行こうとしているストレスホルモンを体に留めておくことになるので、ストレス性の病気になる可能性がある。うつ病患者や、深刻な育児放棄をうけた子どもは、健康な人より涙を流さないといわれている。涙を流さないからストレスが内側に貯まって精神に悪影響をもたらしている。

肉体的にも悪影響がある。泣くのを我慢していると、体の上半身をこわばらせている状態になるので、肩こりがひどくなったり、疲れやすくなったりする。

また、ストレスは脳にもよくない。長期的にみると、何十億もの脳細胞を破壊していくことにもなりかねないという。涙を流すことは、脳の老化予防にもなる。だから、うれしいときも悲しいときも、泣きたいときに泣くのは、若々しくいきいきと生きていく秘訣かもしれない。

ストレス社会の大人たちよ、泣こう

巷には“癒し”と謳われた多くのスポットがある。人の手で緊張をほぐすマッサージや、体を動かしてリラックスするエクササイズなどだ。精神分析医のローエンは、著書「ナルシシズムという病い」(1983年刊)のなかで次のようにいっている。

「泣くこと、すすり泣くことは、緊張を解放するいちばんの早道であり、もっとも深い方法である。体のなかに緊張状態を生み出すストレスは、泣くことによってことごとく発散させる必要がある。マッサージやエクササイズを通じて緊張の鎧を取り除くことができるが、もっとも深い効果を発揮するのはマッサージやエクササイズではなく、泣くという行為である」

疲れたなぁ、精神的にきついなぁと感じたら、感動する映画を観たり本を読んだりして、おおいに泣こう! ストレス発散のために、大人たちよ、涙を流そうではないか。

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