本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、壷井成仁氏(株式会社コンヴァノ代表取締役社長・CEO)です。(2021年5月 5日 2021年5月12日 配信)
今回は株式会社コンヴァノの壷井成仁社長にお越しいただきました。
高品質なジェルネイルをリーズナブルに提供するネイルサロンチェーン「ファストネイル」を展開するマザーズ上場企業の社長様です。
壷井氏は、同志社大学在学中マクドナルドにてアルバイトを経験し、人と働く楽しさに魅了されました。大学卒業後には正社員として入社し、直営コンサルティング部マネージャーとしてご活躍されます。その後、株式会社コンヴァノに創業社長の誘いを受け入社。マクドナルドで培ったノウハウを元に、生産性を向上するビジネスモデルを作り上げ、同社をネイル業界唯一の上場企業へと導かれたエピソードから経営のヒントが得られますので、ぜひインタビューをお聞きください。
新谷哲:今回の経営者インタビューは、株式会社コンヴァノの壷井成仁社長です。まずは経歴のご紹介です。1987年日本マクドナルド株式会社に入社され、2011年には直営コンサルティング部マネージャーとしてお勤めになります。その後、2012年に株式会社コンヴァノに入社し、財務経理本部本部長、情報システム本部長、取締役CFOを経て、2019年に代表取締役社長・CEOに就任されました。2018年には東証マザーズへと上場をされています。本日はよろしくお願いします。
壷井成仁:よろしくお願いいたします。
新谷哲:最初の質問です。ご出身はどちらですか?
壷井成仁:出身は大阪です。
新谷哲:小学校時代はどのようにお過ごしでしたか?
壷井成仁:昼間は表に出て走り回っている活動的な子供でした。そして、夕方になり家に帰ると、晩御飯ができるまで一心不乱にプラモデルを作るのが日課でした。
新谷哲:中学校時代はどのようにお過ごしでしたか?
壷井成仁:この頃から、電気・機械などに興味を抱くようになりました。おもちゃや電化製品が壊れると「どんな仕組みになっているのだろう?」と気になり、分解せずにはいられませんでした。
新谷哲:「モノづくり」がお好きだったのですね!
壷井成仁:そうです!そのため「理系に進み、将来はメーカーで研究開発をするのだ!」とおぼろげながら想像をしていました。
新谷哲:高校時代はどのようにお過ごしでしたか?
壷井成仁:高校時代はクラブ活動のブラスバンドに一番時間を費やしていました。担当はドラム(パーカッション)です。中学校時代にやんちゃな友人達と、遊びでバンド活動を始めました。しかし、私の通った高校には軽音楽部が無く、バンドをやりたいと思っていた人達がブラスバンドに集まったのです。普段は吹奏楽をやっているのですが、文化祭前になるとにわかバンドがいっぱい出てきて、本業より力を入れていました。非常に有意義で楽しかった3年間です。
新谷哲:壷井成仁社長はとても多才でいらっしゃいますね!
壷井成仁:「趣味が多すぎるよね!」とよくいわれます(笑)
新谷哲:大学はどちらへ進学されましたか?
壷井成仁:同志社大学の電気工学部です。高校は進学校だったこともあり、バンド活動や吹奏楽に熱を入れていた私は、どちらかというと「落ちこぼれ」でした。同級生は国公立大学に進学をする人が多く、未だに潜在的なコンプレックスは持っています。
新谷哲:同志社大学に受かるのは優秀だと思います!大学時代の思い出はございますか?
壷井成仁:大学一年生の時に、マクドナルドのアルバイトを始め、学校よりマクドナルドにいる時間のほうが長いほどのめり込みました。当時の経験が、今の経歴に大きく影響を与えています。
新谷哲:大学卒業後、そのまま日本マクドナルド株式会社に入社をされたのですか?
壷井成仁:はい。アルバイトから正社員になりました。
新谷哲:同志社大学の理系出身ということで、珍しがられたのでは?
壷井成仁:校内ではかなり異業種への就職でしたが、日本マクドナルド株式会社には、同志社大学の電気系・機械系出身の先輩が数名いらっしゃいました。私は、AI、人工知能を研究しているゼミに属していたので、普通であればシステムエンジニアやメーカー系の開発に入ってしかるべきでした。しかし、ある思いがあり、マクドナルドへ入社することを決めました。
新谷哲:どのような思いで日本マクドナルド株式会社を志望されたのですか?先生や親御さんからの反対はございませんでしたか?
壷井成仁:先生はなにも言いませんでしたが、両親からは「本当にそれでいいのか?」と何度も聞かれました。当初マクドナルドは、夏休みの短期アルバイトのつもりで「1か月で辞めよう」と考えていました。しかし、実際に働き始めると、アルバイトでありながら社員と同じ格好をし、スケジュール作成や資材の発注など、お店の根幹に関わるようなことまで権限委譲をして頂いたのです。今でこそ良くできたシステムだと感じますが、当時は初めて仕事を任されることの喜びと、人と仕事をする楽しさを肌で感じたのです。そのため、夏休みが終わってもアルバイトを続けることにしました。そして就職活動を迎え、マクドナルドと電気系メーカーのどちらに行くかの選択に迫られました。そんな時にニュースを見ていると「今、就職する人たちが定年を迎えるとき、役職に就いている確率は十数%」というシミュレーションをしていました。それを聞き、電気メーカー・コンピューター会社の大きなピラミッドの最下層からスタートし、年齢が行く頃についていけなくなり使い捨てにされるようであれば「マクドナルドで人とする仕事のほうが自分には向いているのではないか?」と思い始めたのです。そのためガラッと方向転換し、好きな電気や機械は趣味にし、マクドナルドに入社することを決めました。
新谷哲:最初からマネジメント思考をお持ちだったのですね!
壷井成仁:はい。偉そうにそう思っていました。
新谷哲:日本マクドナルド株式会社での思い出はございますか?
壷井成仁:100人いれば100通りの考え方や性格があります。すべてを満足させることはできない中「どのように皆を引っ張っていけばよいか?」と模索をし続けていました。入社し、最初は店舗に配属をされ店長を経た後、数店舗を受け持つスーパーバイザーの営業職を経験しました。最大公約数的に人をとりまとめていくことは、それぞれの価値観があり正解は無いため、簡単そうに見えて非常に難しかった記憶があります。
新谷哲:なるほど。その後、株式会社コンヴァノに入社されます。移られた理由はございますか?
壷井成仁:移った理由は、創業者の誘いです。実は、コンヴァノはマクドナルド時代の同僚が始めたビジネスです。私がマクドナルドを退職する際に彼から「ビジネスを手伝ってほしい」とお声がけ頂き、参画しました。
新谷哲:ヘッドハンティングに近いような感じですね。株式会社コンヴァノでは、どのようなお仕事を中心されましたか?
壷井成仁:入社時はそれこそ経理のおじさんです。創業者である友達の奥さんがやっていた経理を引き継ぎ、会計処理をやっていました。
新谷哲:マクドナルドでは経理も経験されていたのですか?
壷井成仁:経理の経験はありません。しかし、直営コンサルティング部マネージャーとしてPLなどを分析し、アドバイスや指導をする部署にいたので、貸借は分かるレベルでした。担当税理士もマクドナルド時代からの知人で、簿記の基礎から教えて頂き、日々学びながら経理作業をやっていました。
新谷哲:株式会社コンヴァノでは、当初より上場をお考えでしたか?
壷井成仁:創業者のシナリオではあったかもしれません。しかし、会社として「上場が次のステップだ」と明確な意思を持ち始めたのは、私が入社してしばらく経ってからです。
新谷哲:入社後、財務経理本部本部長兼、情報システム本部長を経て、取締役・CFOへとご就任をされました。上場準備では「CFOは寝ることができなくなるほど一番苦労をする」というイメージがあります。この頃はすでに上場を目指していましたか?
壷井成仁:上場を目指す前提で、取締役・CFOへと就きました。幸い優秀な部下に恵まれ、徹夜は数えるほどでしたが、おっしゃる通りです。CFOとして上場準備に係わる上で、一番苦労をしたのは「情報整理」です。証券会社からお話や資料は頂きますが、初体験なのでスケジュールが進むにつれ「今日は何と何が必要だっけ!?」と混乱していきました。最初は、監査法人や証券会社などの限られた方とのやり取りがメインですが、最終段階に入ると、証券代行・東証・財務省……など、突然20社以上に相手先が増えます。こちらの都合は関係なしに、どんどん情報がやってきて、質問に答えていかなければいけません。今思い出しても、何をしていたか分からないほどです。しかし、目標が明確なので「上場に向け頑張ろう!」と乗り越えてきました。
新谷哲:大変なご苦労ですね。
壷井成仁:私は、創業時を知らなかったので、入社以前のことを質問されたときが特に大変でした。弊社はベンチャー創業なので、当初は代表が言ったことが全てで、稟議などはありませんでした。想像や聞き伝えで、いい加減なことを言うわけにはいきません。根拠を示すため、過去のデータを一から掘り下げていきました。もし、上場を目指しておられる方が読んで頂けているのなら「エビデンスは残してください」とお伝えしたいです。少なくとも、人が入れ替わっても後任が資料をひっくり返せば見つかる状況が必要です。
新谷哲:なるほど。その後上場され、翌年の2019年に代表取締役社長・CEOにご就任されていますね!
壷井成仁:はい。本来は上場準備中に私がCEOになり、新しいCFOを立てようというシナリオもありました。しかし、スケジュールが迫っている段階での交代は無茶だという話になり、CEOとして上場にご尽力いただける方を外からお迎えしました。そうして上場を達成し、内部統制などが整っていくにつれ「プロパーに近い人たちだけでやっていくのが本来の姿だろう」ということで、バトンタッチして頂き代表取締役社長・CEOに就任したという経緯です。
新谷哲:ありがとうございます。もしよろしければ、株式会社コンヴァノの事業内容をお教えいただけますか?
壷井成仁:ネイルサロンのチェーン店を運営しています。大昔からマニュキュアを塗る文化はありますが、爪に塗るとしばらくお財布からお金を出すこともできないという欠点がありました。しかし、ジェルネイルという、合成樹脂を紫外線で硬化させることにより、すぐに固まるネイルが日本にも上陸をしました。それでも、完成までに2時間ほどの時間を要します。マンツーマンでお相手をするならば、2万円は頂戴しないとビジネスとして成り立たず、個人商店がほとんどで進歩をしてきませんでした。そのような背景から、ネイルは「時間がかかり高単価」お金に余裕がある一部の方々に向け培われてきました。そこを弊社では「どれくらいの時間、価格設定であれば一般化するだろう?」と、様々な方法論を考えました。そして「学生でも手を出せるよう、1時間で仕上げ、5000円で提供する」ことを実現し、大衆化させようと、現在展開している「ファストネイル」のシステムを作りました。また、チェーンビジネスとして利益を上げていくためには、時間が短い、値段が安いだけでなく、生産性を高めていかなければいけません。「ファストネイル」では、お客様の滞在時間は平均で1時間弱、客単価は5000円前後です。ネイリストがマンツーマンで1時間使ってしまうと生産性は5000円です。そのため他社にはない方法論で様々な工夫をし、ネイリストは1人のお客様に対し30分しか関与せず、1時間で2人のお客様をお相手しています。そうすることで、ネイリスト1人に対し一時間の生産性は10000円になり、短時間で高回転なビジネスを可能にし、チェーン展開をしています。
新谷哲:マクドナルドでの経験が活きていらっしゃるのでは?
壷井成仁:マクドナルドで培ったノウハウはかなり使わせていただいています。例えば、生産性という考え方、POSシステム、データ化した個人別成績、分析する帳票類などです。
新谷哲:マクドナルドのチェーンストア理論に裏付けされたノウハウが、生産性向上に繋がったのですね!
壷井成仁:はい。もちろん人ですから、ネイルを塗るのが早い・遅いや、器用・不器用があります。それでも、ネイリストの経験年数にかかわらず、どの店舗でも均一なサービス提供を可能にする方法論はマクドナルドを参考にさせて頂いています。
新谷哲:ありがとうございます。ここからは違う質問をさせていただきます。好きなもの、好きなことをお聞きして「子供の頃から物の仕組み・構造に興味がありました。プラモデル・工業製品・車・オーディオ・AV機器・機械式腕時計・パソコンや、ドライブ・映画鑑賞・音楽鑑賞とバンド活動・家族と過ごす何気ない時間・仕事」と多岐にお答えいただきました。パソコンや車までご自身でいじられるとは、とてもモノづくりがお好きなのですね!
壷井成仁:その通りです。私には変なこだわりがあり、表面的な部分ではなく隠された部分や、どのようになされているのかに興味を持ちます。車は単なる移動の道具ですが「機能を高くするためどのような工夫がされているか?」や「メーカー独自のこの特徴が良いのだ!」などよく考えています。また、趣味の中に映画鑑賞も入れさせていただきましたが、ただ「面白かった」では物足りないのです。好きなジャンルや俳優で作品を選ぶのではなく、監督や制作スタッフ側から調べ、芋づる式で鑑賞をしていくことが多いです。「この映画の監督にはこんな特徴がある!」や「こうやって進化をしていったのだな!」などの発見があり楽しんでいます。
新谷哲:ネイルサロンオーナーとしては意外なご趣味ですが、素晴らしいですね!座右の銘もお聞きして「好きこそ物の上手なれ」とお答えいただきました。こちらを選ばれた理由はございますか?
壷井成仁:これは父親から言われた言葉です。私は、好き嫌いが多い子供でした。授業では数学は好きですが、英語は嫌々やっており全く上達しませんでした。そんなとき父から「本当に上手くなりたいのなら、好きになる努力をしろ」と言い聞かされました。このころから、好きになるには上面だけではなく、深いところまで入っていくことを意識するようになりました。これは、今でも心がけています。
新谷哲:素晴らしいですね!次が最後のご質問です。全国の経営者、これから起業する方に向け、経営者として成功する秘訣をお教えください。
壷井成仁:これから愛されるブランドを作り発展していく途中であり、まだまだ成功しているとは思っていません。そのため、成功の秘訣をお話するのはおこがましいですが「裸の王様になってはいけない」と意識をしています。現在、弊社の社員数は400人弱となりました。すると隅々まで目が行き届くことは不可能です。私が経営者になる前も「これ、社長に言って大丈夫かな?」と考えることはもちろんありました。しかし、そのように皆に気を使わせれば、いい話だけ耳に入り、都合の悪い情報は入ってこなくなります。一部の偏った情報で決断をしても進歩はしません。「いいことも、悪いことも極力全て教えてくれ、私が判断すべきものではないものは権限委譲するし、私が判断すべきものはきっちりと最後決断し責任を取る」と社員へ伝え、意見を受け入れる姿勢を示していけるよう気を付けています。
新谷哲:私も裸の王様にならないように気を付けたいと思います!壷井成仁社長、本日はありがとうございました。
壷井成仁:ありがとうございました。
編集後記
今回は壷井成仁社長でした。お子様の時代から培われた論理的な思考が素晴らしいです。マクドナルドもチェーンストア理論を徹底されているトップ企業です。そこで学ばれたことをさらに奥深く考察し株式会社コンヴァノで活かし成功に導かれました。まさに、物事の本質を捉える能力は、深い所まで好きになろうという意識から生まれているのだと感じます。ぜひ皆様も参考に、共に成功社長を目指していきましょう!
壷井成仁氏
株式会社コンヴァノ 代表取締役社長・CEO
株式会社femedia 代表取締役社長
大阪府出身。同志社大学在学中、マクドナルドにて初めてのアルバイトを経験し、人と働く楽しさに魅了されました。大学卒業後には正社員として1987年4月日本マクドナルド株式会社に入社し、直営コンサルティング部マネージャーとしてご活躍されます。その後、2012年1月株式会社コンヴァノに創業社長の誘いを受け入社。財務経理本部本部長、情報システム本部長を経て取締役・CFOとして現場を牽引し、2018年04月には同社を東証マザーズ上場まで導かれました。そして、2019年6月株式会社コンヴァノ代表取締役社長・CEO、株式会社femedia 代表取締役社長へとご就任されます。高品質なジェルネイルをリーズナブルに提供するネイルサロンチェーン「ファストネイル」や、オリジナルブランドのCONST、レガリーなどを展開し「新しい価値の創造と機会の拡大」を追及されています。
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本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、壷井成仁氏(株式会社コンヴァノ代表取締役社長・CEO)の経営者インタビューを取り上げました。
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