成功経営者インタビュー

株式会社pluszero 代表取締役社長COO 森遼太氏 インタビュー

本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、森遼太氏(株式会社 pluszero代表取締役社長COO)です。(2023年1月4日 2023年1月11日 配信)

今回は、東大発ベンチャーである、株式会社 pluszeroの森遼太社長にお越し頂きました。人間のように柔軟な理解ができる「第4世代AI」の研究開発に取り組まれ、東証グロース市場に上場をされている企業の社長です。世界初の新技術を用いた『仮想人材派遣』など、ユニークな最先端サービスの社会実装に注力する背景に迫ります。経営のヒントが得られますので、ぜひ、インタビューをお聞きください。

新谷哲:本日の社長に聞く! in WizBizは、株式会社pluszero代表取締役社長COO森遼太様です。まずは経歴をご紹介します。東京大学大学院の在学中に産業技術総合研究所CBRCにて統計や人工知能などの研究をされていました。卒業後はベンチャー企業にご就職。その後、現在の株式会社 pluszeroを創業。そして2022年、東証グロース市場に上場されています。森遼太社長、本日はよろしくお願いいたします。

森遼太:よろしくお願いいたします。

新谷哲:最初のご質問です。ご出身はでしょうか?

森遼太:愛知県になります。

新谷哲:小学校時代は、どのようにお過ごしになりましたか?

森遼太:田舎と都市の中間みたいな住宅街に住んでいました。自由に野を駆け、山を駆け、という形でした。

新谷哲:ガキ大将的な感じだったのですか?

森遼太:いえいえ、そうでもないです(笑)。ガキ大将的なキャラクターの者はいなくて、割とフラットな組織だったと思います。

新谷哲:では、元気な少年だったのですね

森遼太:そうですね。今より元気な少年だったと思います。

新谷哲:中学校時代は、どのようにお過ごしになられましたか?

森遼太:愛知県の公立学校に進み、カヌー部の活動に力を入れました。私の出身地は町おこしで世界大会の誘致をするほど、カヌーに力を入れておりました。部活ではスピードを競うレーシングカヌーに取り組みました。

新谷哲:カヌー部があるのは珍しいですね。

森遼太:はい、珍しいので、県大会でも5校程度しか参加しません。簡単に全国大会まで行けるという特典があり、かなりコスパが良いお得な部活動でした。

新谷哲:高校も愛知県内の公立ですか?

森遼太:県内の公立高校で、毎日1時間ちょっとかけて電車で通っておりました。

新谷哲:高校時代はどのようにお過ごしになられました?

森遼太:当然ですがカヌー部がなかったので、吹奏楽部に入りました。元々楽器がすごい好きで、小さい頃からピアノを習って弾いていましたが「他の楽器もやってみよう」という気持ちで始めました。

新谷哲:吹奏楽部では、どのような楽器を演奏しましたか?

森遼太:コントラバスとサックスです。元々、コントラバスをやりたいと思い入部したのですが、サックスの先輩が失踪してしまい、その代わりとしてサックスをやりました。

新谷哲:演奏はお上手だったのですか?

森遼太:楽譜を読むのは得意なので、割と早くキャッチアップできました。しかし、小さい時からやってるようなメンバーには、技術的には追いつきませんでした。

新谷哲:その後、東京大学に進まれますが、目指そうとした理由はございますか?

森遼太:東京大学は入るときに、学部を大雑把にしか決めなくて済むので選びました。高校の頃から研究者としてやっていきたいと思い、どの領域を研究するのが自分に合っているかを見極めたいと思い、進路を先延ばしにできる東京大学に決めました。

新谷哲:なるほど。学部は理系ですか?

森遼太:はい、理科二類です。元々、物理が得意だったので理科一類を志望していました。しかし、願書を出す少し前に「生命科学の難問を情報科学で解くバイオインフォマティクス」みたいな記事を読み、非常に興味を覚えました。それで願書を出す直前に理科二類に変更しました。

新谷哲:大学時代どのようにお過ごしになりましたか?

森遼太:また楽器がやりたいと思い、尺八を始めました。ジャズのサークルにも入ろうと思いましたが、やはり大学では研究や学問を究めたいと思い、やめました。

新谷哲:大学では、当初よりAIの研究をされていたのですか?

森遼太:応用数学や統計、機械学習や数理モデルなどの、AIに使う数学を研究していました。ですが、当時はAIだと意識していません。我々の研究していたことが、のちにAIと呼ばれるようになった、というのが実感としては近いです。

新谷哲:たまたま興味を持った分野が、ビッグデータやAIに近かったのですね。

森遼太:そうです。バイオロジーで、ものすごい数の定量データが集まってくるという時代でした。その中で、どうやったらビッグデータから効率良くナレッジを得られるか、という学術的分野が関心の中心になりつつありました。

新谷哲:卒業後は、東京大学の大学院に進学されます。これは、研究者や大学教授になろうとしたからですか?

森遼太:大学教授という野望は抱いていませんでしたが、そうですね。私の研究はパソコンがあれば1人でも家でできるため、これが非常に自分に合っていると思い進学いたしました。

新谷哲:ここでは、産業技術総合研究所CBRCも兼務されていますが、この頃の思い出はございますか?

森遼太:研究の本筋とは関係のない部分の印象が非常に強いです。大学院は千葉の柏の葉にありましたが、私はお台場の臨界センターにあるCBRCで研究していました。お台場が近い分、オクトーバーフェストやボジョレーヌーボー試飲会など、お台場関連のイベントが非常にたくさんありまして、飲んでばっかりだった感じです。研究的な話をすると、色々な所属、バックグラウンドを持つ人材が集まる組織でした。コンピュテーショナルバイオロジーの専門家がたくさん集まり、学術的にも非常に好奇心をくすぐられる環境で飽きもせず研究を続けられました。

新谷哲:その後、ベンチャー企業にご就職されます。大学院に残らずにベンチャー企業にいかれたきっかけはございますか?

森遼太:きっかけは、在学時にそのベンチャー企業で、スマートフォンのアプリケーションを作るお手伝いをしたことです。このアプリは完成したのですが、いまいち流行りませんでした。そこで、私が当時研究をしていたAIに関する技術をアプリの中に組み込んだら、一気にそのアプリが使われるようになったという経験をしました。当時は「私が大学で研究している成果は、5年後や10年後に社会の役に立つのだろう」と思っていたのですが、それが直ちに社会の役に立つという経験は、強烈な思い出になりました。それで「自分が研究した内容が社会に還元されるスピードを速める仕事をしたい」と思うようになり、大学から飛び出したいという気持ちで就職しました。

新谷哲:ご就職された後の思い出はございますか?

森遼太:私が就職したのは、能力の定量化や価格の査定などに取り組む会社でした。その中で印象に残ったのは、プロ野球選手の年俸を推定するというプロジェクトです。ある野球選手から「自分の年俸に納得がいかないので、AIで適正な年俸を出してほしい」と依頼がありました。選手名鑑などのデータを打ち込んで計算したところ、球団が提示した金額とほぼ一緒の金額が出てきました。球団が提示する年俸はブラックボックスなやり方をしていて、どう決まるか見当もつかなかったのですが、統計データに基づいて計算できたことに非常に驚きました。

新谷哲:では森遼太社長に「あのプロ野球選手は適正か」と質問したら、分かるかもしれませんね。

森遼太:今は時間が経っているので事情が変わっているかもしれませんが、当時は出来ましたね。また、スター選手のように当たらない選手もいましたが、比較的誤差なく当たるものだと当時は思いました。

新谷哲:その後、今の株式会社pluszeroを立ち上げますが、これは誰かと一緒に立ち上げたのでしょうか?

森遼太:今も一緒にやってる永田という者と立ち上げました。永田は博士号を取っており、AI関連の研究をしていたので「2人でやってみよう」という形で立ち上げた会社です。

新谷哲: AIの会社を立ち上げようとした経緯はございますか?

森遼太:元々協力していたところが、価格の査定や能力といった、人やサービスなど、物事の価値を図ることにフォーカスしていました。そこから課題を少し広く捉えて、人間が手作業でしていることを自動化し、今後来る社会課題を先回りして解決したいと思い立ち上げました。

新谷哲:永田様とは昔から「こんな会社にしよう」などと話し合っていたのですか?

森遼太:割と突発的に作ってしまいました。私も永田も数学が大好きで、そういう研究に非常に興味があり、その研究を「社会に対して適応していくことを仕事にしたら面白いのではないか?」という話になり創業しました。

新谷哲:上場は創業当初より目指していたのですか?

森遼太:上場を意識し始めたのは、設立から1年後ぐらいのタイミングです。

新谷哲:どういった経緯で上場しようと思われたのですか?

森遼太:その当時から次世代AIの開発に取り組んでいたのですが、開発計画上資金がボトルネックになるのが3年後くらいという計算になりました。そして、上場は準備を始めてから上場するまで、3年ぐらいかかるので、今のうちから始めようという形で開始しました。

新谷哲:創業から上場までに苦労はございましたか?

森遼太:社歴が浅いので、良い面と悪い面がありました。まず良い面は、積み上げてきたものがない分、上場企業として必要な制度を整えやすかったことです。悪い面は、業績が安定しないといいますか、先が読みにくく事業計画が立てにくいところです。この不透明さをどうやって読むか、という点が一番苦労したところです。

新谷哲:ありがとうございます。次に、御社の事業内容をお聞きしたいと思います。どのようなことをなさっている企業でしょうか?

森遼太:AIを顧客企業に組み込む事業をメインにしています。今のAIは第三世代AIと呼ばれていて、ビッグデータをベースに統計的に物事を解決する、ディープラーニングが中心に使われています。弊社も第三世代AIがほとんどですが、第三世代AIでは解けない問題もございます。例えば、自然言語処理の分野です。言葉って、当たり前すぎることはデータにならないのです。例えば「リンゴを食べました」という文はあっても「食べたリンゴはお腹に行く」というデータはあまりありません。これは非常に単純な例ですが、言語処理の世界ではこのような課題が非常に多くあります。この第三世代AIの枠組みでは解けない課題を解決するために、弊社では第四世代AIの開発を行っています。第三世代AIで課題を解決しながら、言語処理で少し先鋭的な独自のアプローチで変わった課題も取り組めるという会社です。

新谷哲:ここからは違う質問をしてまいります。事前に「好きなもの、好きなこと」をお聞きして「数学、楽器の演奏」といただきました。数学の話が続いているのでちょっと置いておきまして、大学時代のお話で尺八が出ましたが、現在も演奏されているのですか?

森遼太:尺八やサックスは意外と大きい音が鳴るので、練習する環境が難しく、最近はやってません。現在は、ヘッドホンが使える電子ピアノを弾いています。

新谷哲:次に座右の銘もお聞きしまして「人間万事塞翁が馬」とお答えいただきました。こちらを選ばれた理由はございますか?

森遼太:万事というほどの人生経験はございませんが、人生は読めません。高校から大学院までは研究者を志望していたのに、今は株式会社 pluszeroの社長をしています。将来の予想をしても仕方ないので、当面は「その場その場での最善や、やりたいことに正直に生きていく」という方針でやっていこうと考えています。

新谷哲:ベテランの経営者みたいなお答えで、ちょっとビックリしました。素晴らしいお話をありがとうございます。次が最後のご質問です。全国の経営者、これから起業する方に向け、経営者として成功する秘訣をお教えください。

森遼太:「好奇心を素直に突き詰めること」です。私が大学院にいた10年前は、1ヶ月に100本くらいの論文が出て、私は根性でほぼ全部読んでいました。しかし、今は1日に100本出てきます。AIの研究はますます加速していくと考えており、この流れの中でも常に先端にキャッチアップしながら企業経営も続けなければなりません。そうした状況の中で「興味がないことを続けることはできない」と考えています。私は暇があれば論文を読むほどに興味を持っていますが、さすがに1人で全部の論文を読むことは諦め「会社の誰かしらが、最新の情報を知っている状況」にしたいと方針転換をしました。しかし、私自身が興味を持ち続けることも大事ですので、好奇心や興味のある領域を選ぶことが出来たのは、良かった点だと考えます。

新谷哲:森遼太社長、本日はどうもありがとうございました。

森遼太:ありがとうございました。

編集後記

新谷哲:今回は、株式会社pluszeroの森遼太社長でした。非常に頭がよく、きっと東大にも普通に受かったのだなと感じました。淡々と研究を続け、AI・AEIの分野を進んでいたらグロース市場に上場しちゃった、みたいな印象です。大学院時代には論文を全部読んだということで、本当にAIや数学がお好きなのでしょうね。株式会社pluszeroのような会社が世界を席巻するように、全国の経営者様もぜひ森遼太社長を応援していただけたらと思います!

森遼太氏
株式会社 pluszero代表取締役社長COO

愛知県出身。東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻博士課程修了。産業技術総合研究所CBRCにて統計や人工知能を活用した生物情報解析に従事。その後、ベンチャー企業を経て、2018年に株式会社 pluszeroを永田 基樹氏と共同創業し、代表取締役社長にご就任されます。数学・統計・AI技術を通じた、製品・サービスの価値の最大化を目的とした事業を展開する中で、EY Innovative Startup 2020選出などを初めとし、数々の受賞を重ねられます。そして、2022年10月28日には東証マザーズ(現・グロース)市場に上場を果たされました。

※本インタビューへの出演をご希望の方はこちらよりご応募ください。

本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、森遼太氏(株式会社 pluszero代表取締役社長COO)の経営者インタビューを取り上げました。

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