成功経営者インタビュー

株式会社シルバーライフ 代表取締役 清水貴久氏 インタビュー

本コーナーで掲載する経営者インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集しています。今回、ご紹介する経営者は、清水貴久氏(株式会社シルバーライフ 代表取締役)です。(2017年11月29日 2017年12月 6日 配信)

今回の経営者インタビューは、日本一の高齢者向け配食サービスを運営する株式会社シルバーライフ代表取締役の清水貴久氏にお越しいただきました。親の言うとおりに勉強をしていたという小学校時代から、大学卒業後には警視庁に入庁。その後民間企業で修業を経たのち、起業・独立し創業経営者となられます。「事業戦略として上場が必要」と感じてから上場を目指し、2017年に東証マザーズに上場を果たされています。上場までの苦労、今後の展望などもリアルにお話いただいています。ぜひ、インタビューをお聞きください!

新谷哲:本日の「社長に聞く!in WizBiz」は、私の前職の後輩にあたり、そして2017年10月に東証マザーズに上場され株式会社シルバーライフの清水貴久社長です。まずは、経歴をご紹介いたします。大学卒業後、なぜか警視庁に入庁されていらっしゃいます。その後、私が所属していました、株式会社ベンチャー・リンクに入社。平成14年には、マーケットインという会社の経営者を務められ、その後、平成21年にシルバーライフに移られ、2代目経営者として2017年10月に東証マザーズに上場。日本一の高齢者向け配食のチェーン、シルバーライフを経営されている清水貴久社長です。本日はよろしくお願いいたします。

清水貴久:よろしくお願いいたします。

新谷哲:ご出身は東京ということですが、小学校時代、清水貴久社長はどのように過ごしましたか?

清水貴久:親の言う通りに、ひたすら勉強をしていました(笑)。

新谷哲:真面目だったのですね(笑)。

清水貴久:そうですね(笑)。当時は「世の中にはそれしか無い、皆同じことをやっている」と思っていました。

新谷哲:勉強はお好きでいらっしゃったのですか?

清水貴久:いや、好きではないですよ(笑)。必要に迫られて、やっていただけです。

新谷哲:そうですか(笑)。中学・高校は私立の御三家の1つ、武蔵中学・高校に進まれています。相当成績が良かったのではないですか?

清水貴久:相当な落ちこぼれでした(笑)。

新谷哲:本当ですか?

清水貴久:何しろ、優秀な3割が東大、中間層が早稲田・慶応、落ちこぼれがそれ以外、という学校で、見事に落ちこぼれていました。

新谷哲:中学・高校時代はどのように過ごされたのですか?

清水貴久:「親の言う通りに勉強しなくても良いのだ」とタガが外れてしまって、遊んでいましたね。自由な校風の学校でしたので、毎日学校帰りにゲームセンターに行ったりして、幼く遊んでいました。

新谷哲:小学校の時に一生懸命勉強した反動で、中学・高校は遊びに走られたのですね(笑)。

清水貴久:失敗しました(笑)。

新谷哲:大学は明治大学に行かれますが、明治大学を選ばれた理由はございますか?

清水貴久:明治大学しか受からなかったからです。

新谷哲:でも明治大学に入られたのですから、落ちこぼれと言っても、成績はそれなりに良かったということですよね?

清水貴久:そうですね。でも旧友、あとは親戚一同がほとんど東大出身だったので、学校でも家庭でも落ちこぼれ扱いでした。

新谷哲:周りがほとんど東大という環境が、私達にはちょっと想像つきません(笑)。明治大学を卒業後、なぜか警視庁に入られていますが、何か理由はあったのですか?

清水貴久:困っている人を助けたかったからです。大学の頃に山登りをやっていて、辛い環境でくじける人もいれば、周りの人を助けられる人もいる。それを見ていると、「厳しい環境でも人を助けられる人になりたい」と思い警察官という仕事を選びました。

新谷哲:警視庁に入られてからは、どんなお仕事をされたのですか?

清水貴久:交番のお巡りさんから、刑事の見習いまでをやりました。

新谷哲:警視庁は 1年半ぐらいでお辞めになっていますが、辞められた理由は何でしょうか?

清水貴久:一言で言えば、結婚です。警察という組織は国を守るための組織なので、国にとって問題があると思われる人が三親等以内にいると警察官にはなれない。これは結婚する相手にも同じ調査があるのです。私が結婚する時に、妻の親戚にその可能性のある方がおり、「君、結婚できないよ」という話になりました。私はちょっと若かったので、「民間でもやっていけますから」とか言って、辞めてしまったのです。

新谷哲:奥様のことを愛しているというエピソードですね(笑)。

清水貴久:今となってはそういう形です(笑)。

新谷哲:警視庁を退職後、私も在籍した株式会社ベンチャー・リンクに、私の後輩として入社されます。ベンチャー・リンクを選ばれた理由は何かあったのですか?

清水貴久:世間のことを教えてもらえそうだったからです。辞めるといっても、当時の私は民間企業のことは何一つ知りませんでした。あとは妻が「私の為にあんなに好きだった警察の仕事を辞めさせてごめんね」と罪の意識を持っていたようなのですね。ですから、「少しでも民間企業や経営のことを教えてくれそうな会社に入り、修行しよう」と思いました。そこで「経営コンサルタントという会社が、いろいろな経営者に経営の技術を教えるところだ」と知り、修行しようと思いベンチャー・リンクに入社しました。

新谷哲:修行はいかがだったのでしょうか?

清水貴久:いや、厳しい修行でしたね。これは新谷社長もご存知の通り、すごくひどい…いや、ひどくはないですね(笑)。素晴らしい会社でした。

新谷哲:私がちょっと質問しにくくなりました(笑)。その後、ベンチャー・リンクをお辞めになって独立起業し創業経営者となります。起業して経営者となった経緯をお教えいただけますか?

清水貴久:当時できたばかりだった「高齢者向けの配食サービス」という業界を知り、どうしても自分で経営したくなったことが一番の理由です。

新谷哲:「高齢者向けの配食サービス」の経営は、順調でしたか?

清水貴久:順調でした。当時、この「高齢者向けの配食サービス」の業界を作った宅配クック123というチェーンに経営者として入ります。店舗数が300店舗あった中で、私は売上No.1とNo.2の店を作ることができました。

新谷哲:そういうエピソードを聞きますと清水貴久社長は経営者の才能がもともとあったのではないか感じます。この時に創業したマーケットインという会社は、もう畳んでいるのですよね?

清水貴久:残念ながら宅配クック123の本部さんと喧嘩をしてしまい、畳むことになります。ただマーケットインで私が雇っていた第一号の教え子となる、戸井武司という人間が株式会社シルバーライフを創っていました。マーケットインを畳んだ後は、私も身を寄せました。

新谷哲:では、株式会社シルバーライフには清水貴久社長の前に、初代経営者がいらしたのですね?

清水貴久:そうです。

新谷哲:清水貴久社長は、2代目経営者になられるのですか?

清水貴久:そうですね。私は2代目経営者であり、初代経営者の先生という、ちょっと不思議な立場です。

新谷哲:初代経営者の後に2代目経営者になられる訳ですが、どのような経緯でシルバーライフの2代目経営者になられたのですか?

清水貴久:予想以上にシルバーライフが、特にフランチャイズの事業が大きくなったからです。もともと初代経営者である戸井社長は、「自分の目の届く範囲で2店舗3店舗やっていきたい」という考えだったのです。しかしベンチャー・リンクでフランチャイズを色々と教わっていた私が入社し、事業をどんどん大きくしていきました。そうすると、初代経営者の戸井社長から「清水貴久さん、どこまで大きくなっていくのか分からず、正直怖い。経営者を代わってくれないか?」という話を受けて、私が2代目経営者になりました。

新谷哲:珍しいパターンで、2代目経営者になったのですね。2017年に上場を果たされる訳ですが、上場はいつぐらいから目指されて経営をしていたのですか?

清水貴久:5年ほど前からです。

新谷哲:それは「上場できる」と感じたのですか?

清水貴久:そうですね。あと、経営戦略上、上場が必要だとも感じました。

新谷哲:上場が必要というのは、どういう意味ですか?

清水貴久:これは経営戦略的な話ですが、配食サービスの業界は間違いなく、色々な大手企業が入り、厳しい競争の業界になると思っています。競争の厳しい業界になると、経営者個人のテクニック、例えば「配食サービスのお店が一番上手く経営できる」といった、経営者個人のテクニックではもうカバーできなくなります。もう純粋に「たくさん設備投資をし、良い機械を入れ、良いものを安く作れるだけの製造と物流の設備」を手に入れなければ勝ち残っていけないと考えました。設備投資のためにはそのキャッシュが必要。そのキャッシュを手に入れるために、上場による資金調達が必要という、後ろからの考えでなっています。

新谷哲:ベンチャー・リンク時代に教えていたことをちゃんと実践されて、清水貴久社長はベンチャー・リンク出身者の中でも、大変優秀な経営者だなと感じます。上場するまでのご苦労などはございますか?

清水貴久:やはり内部統制と労務管理です。上場は、イケイケドンドンで売上を上げていくだけでは出来ません。社会の一員として「お前の会社は皆様からのお金を預けられるちゃんとした会社か?ちゃんとした月次決算が毎月出せるの?」ということが必要です。そういった組織そのものを作っていくというところが大変でした。

新谷哲:確かにベンチャー・リンクは、内部統制とか労務管理とかは全く教えない会社でしたね(笑)。株式会社シルバーライフの事業内容をお教えいただきたいのですが、どんな事業を経営されているのですか?

清水貴久:毎日の食事の準備が難しくなってきた高齢者のご自宅に、毎日のお食事をお届けする「高齢者様向けの配食サービス」という事業を経営しています。

新谷哲:少子高齢化時代ですので、これからもどんどん伸びていく業界だと思いますが、何店舗を目指して経営されていますか?

清水貴久:今は全国560店舗少々ですが、10年~15年で1500店舗ぐらいは目指せると思って経営しております。

新谷哲: 1500店舗というと、本当にビックチェーンだと思うのですが、ライバル企業はいますか?

清水貴久:たくさんいます。

新谷哲:どんなところが挙げられますか?

清水貴久:私の出身である宅配クック123さん、上場企業のワタミさん、あとは業界とターゲットはちょっと異なりますが、ご病気の方に向けた冷凍のお食事を出しているFUNDELYさんなどです。やっぱりライバル企業はたくさんいると思います。

新谷哲:では、そのライバル企業に勝つために上場をし、そして店舗戦略をきちんと立てるというのが清水貴久社長の経営方針なのですね?

清水貴久:はい、そうです。

新谷哲:違う質問をさせていただきます。好きなもの・好きなことで「家族・仕事・自転車通勤」と答えいただきました。仕事好きでいらっしゃるのですね。

清水貴久:仕事も、そのために必要な勉強も好きです。

新谷哲:でも、仕事の前に「家族」とお答えいただきましたので、ご家族も本当に大切にされていらっしゃるのですね。

清水貴久:はい。

新谷哲:家族サービスとして行っていることは、何かございますか?

清水貴久:日曜日ごとに、公園に行ったり、遊園地に行ったりと、どこかに連れて行きます。

新谷哲:自転車通勤は何時間ぐらいかけているのですか?

清水貴久:往復で1時間ずつなので、1日2時間ですね。

新谷哲:株式会社シルバーライフの本社は今どちらでいらっしゃいますか?

清水貴久:新宿です。

新谷哲:ご自宅はどちらでいらっしゃるのですか?

清水貴久:小平です。

新谷哲:小平から新宿まで1時間かけて自転車で行き来をされるということですか?

清水貴久:そうですね。でもゆっくりですよ。往復で時速22~23kmぐらいで、ゆっくりと行ったり来たりしています。

新谷哲:経営者らしいエピソードですね。座右の銘をお聞きしたら、「特になし」「行動規範を決める、その場その場で最善を尽くしています」とお答えいただきました。座右の銘を設けない理由はなんでしょうか?

清水貴久:自分の中の価値観がガラリと変わるというのを何回も経験しています。例えば、「お金儲けは汚い、私は社会のために頑張るのだ」と思って入った警察官時代。「社会の一員として頑張って知識を身につけよう」思った会社員時代。「自分で稼いでいかなければ妻も子どもも餓死してしまう。どんな手を使っても私は稼いで生き残っていくのだ」という自営業の時代。それから「たくさんの社員の方にも入っていただいて一人前にする。それが私の仕事なのだ」という時代。そういった立場の違いによって自分の中の価値観がガラリと変わってくるというのを何回も経験していますので、「これが正義だとか、これが正しいとか決められない」という心境に至っております。

新谷哲:価値観がどんどん変わるほど、どんどん成長されているのですね。清水貴久社長は素晴らしい経営者なのだと感動しています。最後に、全国の経営者向け、もしくはこれから起業する方に向け、経営者として成功する秘訣をお教え下さい。

清水貴久:「伸びるマーケットを選ぶ」そして、「できれば競合他社が弱い業界を選ぶ」ことが経営者として成功する方法だと思います。新谷社長にお褒めいただいて嬉しいところではあるのですが、私は自分自身がいかに駄目だったかを知っています。例えば、進学校だった中学・高校時代で落ちこぼれたこと。ベンチャー・リンクでは営業マンとしてはほとんど通用しなかったなど、駄目だった時代がございますので、駄目な自分でも勝ち残っていける業界や、相手が弱い業界を選ぶべきだと思っています。

新谷哲:それはおそらくベンチャー・リンク時代に学ばれた理論の1つだと思います。すべての経営者様には是非、清水貴久社長のおっしゃる「伸びるマーケットを選ぶ」「ライバルが弱いところを選ぶ」ことを実践いただきたいです。清水貴久社長、本日はどうもありがとうございました。

清水貴久:ありがとうございました。

 

編集後記

清水貴久社長のお話をお聞きしまして、成功している理由は「挫折をちゃんと味わっていて、そして自分が駄目だったことも理解をしていること」、「自分はどうやっていけば勝てるのかを考えていること」だと思います。これからもおそらくNo.1チェーンを作り続けられると感じさせていただきました。「自分が分かっているかどうか?」が一番重要ですね。その次に重要な「自分達はどのマーケットで勝ちにいくか?」というマーケット戦略もきちんとされています。そして、「学んだことをきちんと実践し、コツコツちゃんとやっている」から、成功されたのでしょう。私自身も反省をしています。清水貴久社長を見習い、もうちょっと頑張っていきたいと思います。

清水貴久氏
株式会社シルバーライフ代表取締役

大学卒業後には警視庁に入庁。その後民間企業で修業を経て平成14年に有限会社マーケットインを創業。平成21年に株式会社シルバーライフに移動後、代表取締役社長に就任。2017年に東証マザーズに上場。

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本インタビューは、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の経営者インタビューを編集したものです。文中に登場する社名、肩書、数字情報などは、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。
今回は、清水貴久氏(株式会社シルバーライフ 代表取締役)の経営者インタビューを取り上げました。

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