同業が上場!後発企業が上場に向けて取り組むこととは?

本コーナーでは、経営者、社長、後継経営者、起業予定者などから頂戴する会社経営に関するご相談に対して、WizBiz株式会社の代表であり、経営コンサルタントである新谷哲が独自の視点で経営上のアドバイスや解決方法をご提示いたします。なお、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の「3分コンサルティング」を編集して掲載しております。

相談内容:「同業者が上場しました。後発企業が上場するにはどのように取り組めばよいでしょうか?」

  • ご相談者:B社様
  • 業  種:小売店・飲食店向けのCRMサービス、マーケティング支援事業
  • 年  商:3億円

お世話になっております。弊社はIT系で、小売店や飲食店向けのCRMサービスやマーケティング支援を得意としている会社です。創業8年目で、直近の年商は3億円ほどです。つい先日、同業といいますか、似たようなサービスを提供している会社が東証マザーズに上場しました。私も株式上場を考えていなかったわけではないのですが、具体的には動いていませんでした。同業者が上場してしまうと、後からは上場が難しいと聞きますが、実際のところはどうなのでしょうか?また、上場に向けて取り組むとすれば、何から取り組めば良いのか?また、どれくらいの期間で上場を実現できるのか?を教えて下さい。何卒よろしくお願い申し上げます。

ご相談者へ回答(回答者:新谷 哲)

以前は「同業種の上場は2社まで」と言われていましたが、現在はそうでもないようです。同業他社が先に上場をしたからと言って、上場がしにくいと考える必要はありません。B社様も上場を狙えます。

例えば、ハウスウェディングの分野では、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ、株式会社ベストブライダルの2社が上場をしました。その後、この分野での上場は難しいとされていましたが、アイ・ケイ・ケイ株式会社と言う佐賀県の企業が上場をされました。こちらの企業様は、佐賀県初、と言う特異性を活かした経営をすることで成功をされました。また、M&Aの分野では、株式会社日本M&Aセンターの後、M&Aキャピタルパートナーズ株式会社が上場をされました。その後3社目となる、株式会社ストライクが上場をされました。こちらの企業様は業績が非常に良かったという特徴がございます。また、弊社の経営者インタビュー「社長に聞く in WizBiz」にご出演していただいている、ランサーズ株式会社様も、株式会社クラウドワークスの後に上場を果たされた後発の上場企業様です。

このように、業績・規模・差別化ができているなどの特徴があることで、同業者がいても上場をすることができます。規模が小さい、類似業者などは、株価などの比較をされてしまいますが、あまり気にしすぎなくても良いでしょう。

そして「上場に向けて何から取り組めば良いのか?」に関しては「まず、社長様が勉強をしていくこと」が重要です。監査法人・証券会社・証券取引所などで勉強会やセミナーが開催されているので、参加することをお勧めします。また、実際に上場をされている社長様のお話を聞くのもとても参考になります。経営ノートにある「成功経営者インタビュー」では、上場をされた社長様のご苦労や成功されるまでのエピソードを数多く掲載されていますのでぜひ、読んで頂きたいです。具体的な上場するまでの流れは、まず監査法人を置きます。上場をするためには監査法人の監査を2期間(24カ月)受け、証券会社から監査証明が出て初めて、証券取引所に申請ができるルールになっています。そして証券取引所の審査が通れば上場できるという順番です。

細かく解説していくと、監査法人の監査でよく言われるのは「エビデンス」です。契約書・発注書・注文書や、支払伝票・請求書などを紙で揃え、収入と支出の証明をする必要があります。またそこで不正が行われていないかチェックをしていきます。不正を見分けるためには、社内規程・就業規則・業務フローなどを整備していきます。そして、ルール通りに運用ができているかを見極めていくために、社外の監査役の他に、組織の人間が行う内部監査室を設置します。制約を受けず客観的に業務を遂行する独立性を担保するため、社長直轄の部署として、年間を通し各部署でルールが守られているかの確認をしていきます。これら、コンプライアンス・ガバンナンスは非常に厳しい監査の対象となります。ある銀行では、支払いをしようとしたところ「すみません。業務フロー通りにやれていなかったので、お支払いをしないでください」なんてことを言われたことがあります。それぐらいプロセスやルールを順守していくことができないと上場は難しいのです。また、J-SOX法(内部統制報告制度)という、上場している会社が事業年度ごとに、「内部統制報告書」を有価証券報告書とあわせて内閣総理大臣に提出することを義務付けた法律があります。上場準備中は、猶予期間ではありますが、内部統制を強化し、不正会計などのリスクを減らす側面から「やった方が良い」と言われることがあります。さらに、社員教育制度・持ち株会制度・ストックオプション・資本政策の作成など、上場をするまでに取り組むことは多岐に及びます。特に、資本政策は知識を要するので、サポート役などがいるとスムーズに進めていくことができます。会社が整備され上場を目指せそうであれば、次は主幹事証券会社の選定をしていきます。自社に合う証券会社をきめることができたら、契約を結び審査を受けながら上場へと向かいます。

「どのくらいの期間で上場を実現できるか?」に関しては、二期間の会計監査と上場審査の期間が必須のため、最短でも2年半程度の期間が必要です。弊社も上場準備中ですが、なかなか簡単ではありませんね。

また、費用の面もお話すると、つい7年前までの監査法人費は年間300万円ほどでしたが、現在では年間1,000万円~3,000万円となっています。その他、証券会社にコンサルティング料、証券取引所への支払いなど、お金は非常にかかります。上場費用は最低見積もっても年間3,000万円以上はかかるものだとお考え下さい。それらの費用を支払いながらも、営業利益率を15%以上出していく必要があります。とはいえ、赤字上場企業様や、年商2,600万円ほどで上場をされた企業もございます。

B社様の、CRMサービス・マーケティング支援ということであれば、いくつかの上場企業様がいらっしゃいますが、あまり気にしすぎず、共に上場企業を目指してまいりましょう!ご希望がございましたらご相談に乗らせていただきますので、ぜひお声がけください。

新谷 哲 WizBiz株式会社 代表取締役社長

新谷 哲

1971年 東京生まれ。大学卒業後、東証一部上場のコンサルティング会社に入社。銀行、信用金庫の融資開拓コンサルタントを皮切りに、仙台支店長、東日本事業部長、執行役員を歴任。その後、常務執行役に就任し、経営コンサルティング部門や営業部門、サービス提供部門を統括。
2010年に独立し、WizBiz株式会社を設立。現在、経営者向けネットメディア「WizBiz」を運営。日本国内では、経営者の会員登録数でNo.1のメディアとなっている。また、経営者向けサービス提供としては、ネットだけでなく、リアルの場も力をいれており、年間300回以上のセミナーを開催し、年間4000名を越す経営者が参加。その集客力は、各方面からも注目を集めている。

※新谷哲に経営相談をご希望の方はこちらよりお問い合わせください。初回のみ無料で承ります。

本コーナーで掲載する経営相談は、Podcast「社長に聞く!in WizBiz」で配信中の3分コンサルティング経営者の課題解決!「同業が上場!後発企業が上場に向けて取り組むこととは?」を編集したものです。文中に登場する社会環境や企業情報、数字情報、その他の各種事象は、原則、収録当時のものですので、予めご了承ください。

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